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(独)放射線医学総合研究所

(独)放射線医学総合研究所のホームページへ
ヨウ素を含む消毒液などを飲んではいけません(2011/3/14)
放射線被曝の予防や治療のために、ヨウ素を含む消毒剤を飲んではいけません。インターネット等に流れている根拠のない情報に注意してください。詳しくは放射線医学研究所HPをご覧ください。
http://www.nirs.go.jp/index.shtml

放医研、トラキア大学(ブルガリア)との研究協力覚書を締結 がんのスピン標識プローブを中心とした 分子イメージング研究で協力を強化(2008/4/11)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴 以下、放医研)とブルガリアのトラキア大学(学長:Ivan Stankov)は、この程、分子イメージング研究、特にMRI(核磁気共鳴画像法、Magnetic Resonance Imaging)/ EPR(電子スピン共鳴法、Electoron Paramagnetic Resonance)を用いたがん診断におけるスピン標識プローブの技術開発において互いの得意分野における技術を提供し、新たな診断技術の開発を推進するための研究協力覚書を締結しました。

この覚書は、放射線と人の健康にかかわる研究を総合的に推進してきた放医研が、第2期中期計画における重点課題のひとつである分子イメージング研究を拡充するため、同分野において特徴ある技術を保有し国際交流にも熱心なトラキア大学との間に密接な連携・協力体制を強化することを目的としています。

【覚書締結の背景】
放医研は、平成18年4月より開始した第2期中期計画の中で、従来より取り組んでいる重粒子線がん治療研究、放射線生体影響研究に加えて、研究所が保持する最先端の画像診断技術を駆使した分子イメージング研究を次世代の医療の進展に寄与する新たな重点研究分野として取り組んでいます。一方、こうした分野の研究では、国内外に存在する研究機関の設備や人的資源を有効に活用するための研究連携が不可欠であり、大学をはじめとする諸研究機関と積極的に包括的な連携協力協定を締結しています。本年1月には、先端医療に対する国際的な研究活動を連携して推進するため、光イメージング技術などのグローバルな研究活動を展開しているフランスのジョセフ・フーリエ大学との間で研究協力覚え書きを締結しました。

今回研究協力覚書を締結したトラキア大学は、MRI/EPRを用いたがん診断において、スピン標識プローブをはじめとする造影剤開発に優れた技術を所有しています。一方、放医研は、7T高磁場MRI装置をはじめとする総合的な分子イメージング研究体制を保有し、MRIによる分子イメージング研究分野においても、先端的な研究を展開しています。今回の協定締結により、両機関の優れた特徴を合わせた新たな分子イメージング技術開発への取り組みが可能になります。

【(参考)【トラキア大学】
トラキア大学は、東欧ブルガリアで最も歴史有る街のひとつであるスタラ・ザゴラにあり、医学部、獣医学部、農学部などの学部組織の他、専門学校や附属病院を擁するブルガリア屈指の総合的教育・研究機関です。特に附属病院は全診療科に366床と584人の職員を備えた総合病院で、ブルガリア南東部(トラキア地方)では最高レベルの診断と治療が行われています。分子イメージング研究分野においても、分子プローブ、ESR法などに特徴ある優れた技術を保有しており、世界的に高く評価されています。

【覚書に記載される協力内容は、以下の通りとなっています。】
(協力分野)

がんの診断及び治療用のためのスピン標識プローブの、合成に関する研究
がんの分子イメージングへのスピン標識プローブの、応用に関する研究
がん治療の放射線誘発光学的治療へのスピン標識プローブの、応用に関する研究
スピン標識プローブを用いての、がん細胞の選択的致死機構解明に関する研究
(協力形態)

学術情報の交換
研究者ならびに専門家の交流
その他相互に合意される研究協力
【有効期間】
覚書の有効期間は、締結日より2年間としています。

PETを用いニコチン依存のメカニズムを追求 喫煙者では、ニコチン負荷による 脳内のドーパミン放出が促進される(2008/4/11)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下、放医研)分子イメージング*1研究センター 分子神経イメージング研究グループの高橋英彦主任研究員らは、PET*2を用いてニコチン負荷による脳内神経伝達物質ドーパミン*3の放出を喫煙者・非喫煙者で比較検討し、喫煙者ではニコチン依存度が高い人ほどドーパミン放出が多いことを確認するなど、ニコチン依存度との関係を確認しました。

喫煙が発がんの主たる原因の一つであることは、既に多くの研究者によって明らかにされており、禁煙は健康保持のための世界的な潮流となっています。一方、喫煙によってもたらされるニコチンの依存形成のメカニズムについては明らかになっていない部分が多く、禁煙治療に結びつく研究が求められています。

こうした中、高橋らは、高比放射能のドーパミンD2受容体リガンド*4である[11C]ラクロプライド*5を用いたPET画像の解析により、ニコチン負荷によるドーパミン放出を喫煙者・非喫煙者で比較検討しました。この結果、喫煙者ではニコチン依存度が高い人ほど神経伝達物質ドーパミンの放出が有意に促進され、結果として、受容体結合能力が低下することが確認されるなど、ニコチン依存度とドーパミン放出との関係が明らかになりました。

今回の成果は、喫煙者のニコチン依存性のメカニズムを明らかにするもので、喫煙者の禁煙行動に結び付く新たな治療法の開発に繋がることが期待されます。

この成果は、このほど、国際精神神経医学誌 International Journal of Neuropsychopharmacology に掲載されました。
http://www.nirs.go.jp/news/press/2008/04_11_1.shtml

癌研有明病院に放医研の重粒子線治療外来窓口を設置 研究・医療協力に関する協定を締結(2008/3/27)
【概要】
財団法人 癌研究会(有明病院病院長:武藤徹一郎、以下、癌研)と独立行政法人 放射線医学総合研究所(理事長:米倉義晴、以下、放医研)は、3月27日、重粒子線治療をはじめとする放射線の医学利用研究に関して、包括的な研究・医療協力体制を構築するための協定、及びこれを具体化するための覚書を締結しました。

本協定は、中核的ながん臨床研究機関である癌研と放射線の医学利用を推進する放医研とが、双方の自主性を尊重しつつ、重粒子線治療外来の設置、共同研究の推進、職員研修などの具体的な協力体制を構築し、重粒子線がん治療に関する成果の普及を促進することによって、我が国の放射線医学利用分野の発展・継承に寄与することを目的としています。

なお、同協定の締結式が、3月27日11時、癌研有明病院において執り行われました。

【協定締結の背景】
がんの撲滅は、国民共通の課題であることは言うまでもありません。政府は、昨年6月15日、「75歳未満のがん死亡率を10年以内に20%減らす」「患者・家族の苦痛を軽減して生活の質を上げる」を2本柱とするがん対策推進基本計画を閣議決定しました。同計画では、特に放射線療法、化学療法の拡充に向けた施策が掲げられ、全国どこでも一定水準の治療を受けられることを目指しています。こうした中、癌研は我が国のがん治療研究を主導する中核的な医療機関として重要な責務を担っています。特に、近年進展の著しい放射線療法については、積極的な取り組みがなされています。

一方、放医研が平成6年から重粒子線がん治療装置(HIMAC)を用いて実施してきたがん治療は、平成20年2月末時点で3,819名(うち先進医療1,553名)の登録患者数を数えています。平成15年10月には、優れた臨床試験の成績をもとに厚生労働省により先進医療の承認を受け、治療の全国的な普及が待ち望まれています。

今回の協定締結によって両機関が協力体制を構築することにより、重粒子線がん治療を加えたがん治療研究が、組織的に拡充されるものと期待されます。

【協力事項】
今回締結された協力事項は

医師、研究者及び関連する職員の交流
医療に関する交流
研究資料、刊行物及び研究情報の交換
研究施設・設備の相互利用
研究資源の相互利用
共同研究活動
研究成果物の管理活用
その他両者が合意した事項
の8項目としています。

特に、医療に関する交流では、癌研有明病院において、放医研の重粒子線治療の基準を満たす症例の収集を行い、適合する患者さんに対して情報を提供のうえ、希望に応じて放医研への紹介を行う「重粒子線外来」を設置します。

これにともない、癌研医師を一定期間放医研へ派遣し、重粒子線治療に係る技術の研修が行われます。

共同研究では、重粒子線治療と化学療法の併用、外科手術と重粒子線治療の併用など新たな治療法の開発について、多くの可能性が考えられます。

なお本協定の有効期間は締結日より平成23年3月31日までとなっています。

診断と治療が同時に可能な世界初の開放型PET装置を開発 PETの可能性を広げ、分子イメージング研究を推進(2008/2/7)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所 (理事長 : 米倉 義晴、以下、放医研)分子イメージング研究*1センター、先端生体計測研究グループの山谷 泰賀研究員らは、がんの早期診断などに有効なPET (陽電子放射断層撮像法) *2において、診断と治療を同時に行うことを可能にする世界初の開放型PET装置を開発しました。従来のPET装置は、検出感度を高めるために被験者を囲むように放射線検出器を配置していますが、一部でも検出器が欠損すると画像の劣化は避けられませんでした。その結果、患者ポートは長いトンネル状になり、これが患者の心理的ストレスを高めると共に診断中の患者のケアの障害にもなっていました。

今回、山谷らは最も画質の優れるPET装置中央部分が検出器で覆われていない世界初の開放型PET装置を開発しました。開放型PET装置では、体軸方向に検出器リングを2分割して離して配置しますが、検出器同士を結ぶ直線上の放射線を計測するというPETの原理によって、分割した検出器同士から開放空間の放射線を計測できます。PETの画像化理論に基づいて画像劣化が最小になるように検出器を除去している点がポイントで、シミュレーション及び基礎実験の結果、検出器を分割しても装置感度は低下せず、また放医研がこれまでに開発した「3次元放射線位置 (DOI) 検出器*3」と組み合わせると、分解能の劣化も抑えられることが明らかとなりました。

新開発の装置は、開放空間から照射治療が行えるため、これまでは不可能であった治療中のPET診断を可能にします。特に、粒子線がん治療装置と組み合わせると、ビームが照射された患者体内のがん標的近傍をPETで画像化して確認できることから、治療精度の向上に役立つものと考えられます。将来的には、画像化計算を高速化することで、診断・治療・確認をリアルタイムに行う未来型のがん治療も可能になると期待されます。また、本装置は、限られた数の検出器でも視野範囲を拡大できることから、全身を一度に診断できる高感度・低被ばくなPET装置を比較的低コストで実現できる可能性があり、医薬品の開発効率を高める方法として注目されているマイクロドージング試験*4の推進に役立つものと期待されます。さらに、近年普及が進んでいるPET/CT装置に今回の開発技術を応用すると、開放空間にX線CT装置など別の診断装置を設置できることから、従来のPET/CT装置では不可能であった同一部位からリアルタイムで高精度の情報を得ることが可能になります。

本成果は国際特許及び商標登録「OpenPET」を出願し、2月7日に英国物理学会発行のPhysics in Medicine and Biology誌に掲載されました。

【研究の背景】
がんや脳血管障害、認知症などの早期診断に有効と注目されているPET (陽電子放射断層撮像法) は、極微量の放射性元素で標識した特殊な薬剤を投与し、体内から放出される放射線を検出することで、糖代謝など代謝機能を画像化し、病気の有無や程度を調べる検査法です。PETは、がんなど病気の早期発見だけではなく、治療方針の選択や治療効果の確認にも有効ですが、その一方で、感度や解像度に課題が残され、各国で研究が続けられてきました。装置感度を高めるためには、図1 (a) に示すように検出器をトンネル状に配置して、立体角を高める必要があり、長いトンネル状の患者ポートは検査中の患者の心理的ストレスを高めると共に患者へのケアの障害にもなっています。

【開発技術の概要】
山谷らは、図1 (b) に示すように、体軸方向に2分割した検出器リングを離して配置し、物理的に開放された視野領域を有する世界初の開放型PET装置「OpenPET」を開発しました。従来は一部でも検出器が欠損していると画像が劣化しましたが、本装置では、最も画質の優れるPET装置の中央部分を覆う検出器を除去しても、画質への影響が最小になるように検出器を配置しました。即ち、PETでは同一検出器リング内および異なる検出器リング間で放射線を計測しますが、異なる検出器リング間での計測データは冗長であることに着眼し、残存する検出器リング間の計測データで欠損情報を補って画像化することにより、性能が低下しないようにしました (図2)。

従来のPET検出器では、検出素子の厚みの影響によって斜め入射の放射線に対する分解能が劣化してしまうことが知られています。OpenPETでは、放医研が独自に開発した、薄い検出素子を多層に配置する3次元放射線位置 (DOI) 検出器を用いることにより高分解能が維持されます (図3)。

【実験結果】
(図4) に示すように、2台の商用のPET装置 (検出器幅15cm) を離して配置し、相互の検出器リング間で放射線を計測できると仮定した計算機シミュレーションを行い、15cmの開放空間が生じても画像化できることを確認しました。開放空間は検出器幅に応じて拡大でき、さらに放医研を中心にして開発した次世代PET試作機「jPET-D4」*5に適用し、OpenPETによって開放空間の画像化が可能であることを実証しました (図5) 。具体的には、jPET-D4装置は5つの検出器リングから構成されますが、健常ボランティア実験の計測データから中央の1リング分に相当する部分を欠損させ、開放空間においても良好な画像を得ることに成功しました。

【研究の効果と今後の見込み】
検出器を分離した開放空間は、治療スペースやX線CT装置など別の診断装置の設置場所として活用でき、粒子線がん治療中の効果のモニタリングや病巣の大きさや位置などを検出できる新しいマルチモダリティ装置への応用が期待できます。

重粒子線や陽子線による粒子線治療は線量集中性が高いため、正常組織への線量を極力抑えて、がん病巣に絞り照射できる放射線治療方法です。照射は、患者のCT画像をもとに綿密に計算された治療計画に基づいて行われますが、実際の患者体内において、毎回の照射が計画通りの線量分布になっているかを、外部から経時的に確認するのはきわめて難しく、この手法は確立されていません。もし照射中に体内の標的が動いたり変形したりして、治療計画からずれてしまった場合には線量分布のズレは検出できません。この課題を解決するため、粒子線ビームの照射に応じて体内から発生する放射線をPET装置で計測し画像化することにより、体内の線量分布を外部からモニタリングする方法が研究されてきました。PET装置の要件としては、検出器がビーム経路と干渉しないこと、および発生する放射線が微量であるため高感度であることの2つがありますが、感度を高めるためには検出器を密に広く配置して立体角を増やす必要があるため、両者を両立することは困難でした。しかし、OpenPETでは、図6 (a) に示すように、装置感度を低下させることなく、開放空間を利用してビーム経路を確保することができます。

一方、マルチモダリティ装置としてはPET/CT装置が普及しつつありますが、従来装置は、単にPET装置とX線CT装置を体軸方向に並べた構造であるため、PETの視野とX線CTの視野は数十cm離れており、同一部位を同時に撮影することができませんでした。これに対して、OpenPETを用いれば、図6 (b) に示すように、開放空間にX線CT装置を組み合わせることによって、同一部位をリアルタイムに撮影する新しいPET/CT装置が実現できます。今後は、実用化に向けて開放型PET装置に適した検出器などの要素技術の開発を行うと共に、放医研の重粒子線がん治療装置「HIMAC」への適用を目指していきます。

(用語解説)
* 1 分子イメージング研究
生体内で起こるさまざまな生命現象を外部から分子レベルで捉えて画像化することであり、生命の統合的理解を深める新しいライフサイエンス研究分野。PETによるがん診断もその一分野として行っている。

* 2 PET
陽電子放射断層撮像法 (Positron Emission Tomography ; PET) のこと。画像診断装置の一種。陽電子放出核種で標識した薬剤を体内に投与しPET装置で様々な病態や生体内物質の挙動を画像化する方法である。PET装置は投与した陽電子放出核種から発生する放射線を計測し、コンピューター処理によって計測データから元の薬剤の分布を計算する。

* 3 3次元放射線位置 (DOI) 検出器
次世代のPETの技術開発において、放医研が世界に先駆けて開発した新規検出器であり、従来のPETでは両立出来なかった感度と解像度が飛躍的に向上する。例えば、本検出器を頭部用PET装置に実用化した場合は解像度が従来の5mmから3mmへと向上し、感度は従来の3倍に改善することが可能となり、検査時間も3分の1に短縮出来る見込みである。

* 4 マイクロドージング試験
効率的な新医薬品開発を促進するために、開発の早期段階において、超微量の化合物を投与して、ヒトにおいて最適な薬物動態を示す開発候補の化合物を選択する方法。

* 5 次世代PET試作機「jPET-D4」
国際的な次世代PET開発競争下において、放医研が他機関・大学等と共同で世界に先駆けて開発した。高感度・高解像度を両立する「3次元放射線検出器」を実装したPET装置の試作を行い、高解像度PET撮像に成功したものである。
http://www.nirs.go.jp/news/press/2007/02_07.shtml

放医研、独自の超高比放射能合成技術により 脳内ドーパミンD2受容体に新たな超高親和性結合部位を発見(2008/1/22)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所 (理事長 : 米倉 義晴、以下、放医研) 分子イメージング研究*1センター分子認識研究グループの張 明栄チームリーダーらは、この程、PET診断を飛躍的に高感度化する高比放射能合成技術によって得られた超高比放射能のドーパミンD2受容体リガンド*2である [11C] ラクロプライド*3を用いた動物実験を行い、ラット脳の大脳皮質*4と線条体*5において、これまで見出されていた神経伝達を行う結合部位の他に、新たな超高親和性結合部位が存在することを発見しました。

PET (陽電子断層撮像法) を用いた研究では、通常用いられる標識薬剤の比放射能より桁違いに高い超高比放射能のリガンドを用いることにより、薬剤の生理活性による生体への影響を極限まで抑えることが可能となります。張らの研究は、従来に比べ1,000倍低いリガンド濃度による測定が可能になったことにより、極低濃度領域に神経伝達を行う新たな結合部位を見出したもので、生体内で起きる生命現象を解明する研究において、測定データを飛躍的に精緻化する世界で初めて明らかにされた成果です。

今回の成果は、国際核医学誌NUCLEAR MEDICINE AND BIOLOGY 35電子版2008 (19-27) に掲載されました。

【背景】
放医研の分子イメージング研究センターは、卓越した分子プローブ合成技術を有し、中でも特に世界水準を大きく凌駕する超高比放射能のリガンドを合成する技術は、幅広いPET診断や研究を高感度で遂行することを可能にするもので、国内外の注目を浴びています。

比放射能とは、ある標識化合物の一定量 (μmolまたはμg等) 当たりどれだけの放射能 (CiまたはGBq等) が含まれているかを示す指標です。半減期20分の11C標識薬剤の場合、理論的には1pmol (分子量100として1mgの千万分の一) で一人分のPET検査が可能な量となりますが、実際には環境中に含まれる大量の炭素により希釈され、通常得られるのは理論値の一万分の一程度となり、その分、測定に役立たない不要な化合物が投与されることになります。このような高い比放射能を有する標識化合物を合成するには、極めて高度な技術が必要ですが、放医研では鈴木和年分子認識研究グループリーダーを中心に長年研究開発を行い、現在では、世界水準の10~100倍高い比放射能を達成しています。

このような高比放射能リガンドを用いることにより、生体内にきわめて低濃度にしか存在していない分子などのイメージングが可能になります。また、結果的に投与する化合物(PET薬剤)を減らすことができることから、強い生理活性や毒性を有する薬剤でも生体に影響を与えることなくイメージングが可能となります。今回、超高比放射能リガンドの優位性を検証するため、ドーパミンD2受容体リガンドである [11C] ラクロプライドを用いたラット脳のイメージングを行いました。

【研究手法と結果】
○ 張らは、広濃度範囲の [11C] ラクロプライド (0.3pM-18nM) を用い、ラット脳の線条体及び大脳皮質のホモジネート*6に対する結合実験を行いました。その結果、超高比放射能リガンドを使用することにより、通常のリガンド濃度より1000倍低い濃度での結合実験を実施することができ、線条体と大脳皮質において [11C] ラクロプライドが、異なる親和性を示す二つの部位に結合することを確認しました (図1)。


(図1) ラット脳の線条体及び大脳皮質のホモジネートに対する結合実験
超高比放射能薬剤 [11C] ラクロプライドを使用し、通常のリガンド濃度より1000倍低い濃度で測定。ラットの線条体と大脳皮質において、それぞれに異なる親和性を示す二つの結合部位 (赤、青で示す2つの点線) を確認した。

○ 一方、あらかじめ非放射性D2リガンド*7をホモジネートに加えた結合実験では、線条体及び大脳皮質とも、それぞれ一つの結合部位しか確認できませんでした (図2)。


(図2) 非放射性D2リガンドを加えたラット脳の線条体及び大脳皮質のホモジネートに対する結合実験
あらかじめ高い親和性をもつ非放射性D2受容体リガンドを加え高親和性部位を占有させた場合では、線条体及び大脳皮質にそれぞれ一つの結合部位のみを確認した。

○ 100-200Ci/μmolの高比放射能を持つ [11C] ラクロプライドを使用し、ラット脳切片のARG測定を行いました。その結果、脳画像は比放射能が高い方がより鮮明で、通常の比放射能 (1Ci/μmol) に比べ、高比放射能では線条体で3倍、大脳皮質で2倍の放射能集積を確認しました(図3)。


(図3) 高比放射能薬剤 (左) と通常比放射能薬剤 (中) との集積比較
高比放射能 [11C] ラクロプライドでは線条体で3倍、大脳皮質で2倍の放射能集積が増加し比放射能が高い方がより鮮明であることを確認した。一方、低比放射能 (右) では、脳組織における放射能集積が消失した。

以上の結果、今回見いだされた結合部位は、通常のPETで用いられる標識薬剤の比放射能では見出すことのできなかった新たな結合部位である可能性が極めて高いことが示唆されました。また、高比放射能薬剤を用いることによって、より精度の高い画像が取得できることも明らかになりました。

【期待される成果と今後の展望】
放医研では、11C (炭素11) 標識薬剤のほか、13N (窒素13) 、18F (フッ素18) 等の標識薬剤についても100Ci/μmol以上の超高比放射能を達成しており、PETを用いた研究や診断において、多種多様な超高比放射能を有するPETリガンドを利用することが可能となっています。これによって、神経受容体のような存在量が極めて少ない生体内分子のイメージングにおいても、高い特異結合/非特異結合比で感度よく測定することが可能となります。また、生理活性や毒性が強く生体への影響が大きいことから現在まで使用できなかった薬剤でも、超高比放射能リガンド化により、超微量での測定が可能となり、また、生体内に極低濃度でしか存在しない結合部位のイメージングなどの分子イメージング研究に新たな展開をもたらすものと期待されます。

(用語解説)
* 1 分子イメージング研究
生体内で起こるさまざまな生命現象を外部から分子レベルで捉えて画像化することであり、生命の統合的理解を深める新しいライフサイエンス研究分野。PETによる腫瘍の診断もその一分野である。

* 2 ドーパミンD2受容体リガンド
中枢神経系に存在する神経伝達物質であるドーパミンD2受容体と特異的に結合する化学物質の総称。

*3 [11C]ラクロプライド
ベンザマイド系の抗精神薬ラクロプライドの11C標識体でドーパミンD2受容体測定用の、標準的なPET用標識薬剤。選択性が高くD2受容体との結合はPET測定時間内に平衡に達し、次第に結合を解いていくことから、薬剤分布の時間変化を解析することにより、結合と解離の速度定数を求めることができる。

*4 大脳皮質
大脳 の表面に広がる 神経細胞の灰白質の層である。大脳基底核 と呼ばれる白質の周りを覆っている。知覚、随意運動、思考、推理、記憶など、 脳の高次機能を司る。

*5 線条体
線条体は、終脳の皮質下構造であり、大脳基底核 の主要な構成要素のひとつ。運動機能への関与が最もよく知られているが、意思決定などその他の認知過程にも関わると考えられている。

*6 ホモジネート
生物の組織や細胞をホモジナイザーですりつぶして細胞の構造を破壊して得られる懸濁液。

*7 非放射性D2リガンド
放射性核種で標識した放射性D2受容体リガンドと区別して、放射能を持たないD2受容体リガンドを指す。
http://www.nirs.go.jp/news/press/2007/01_22.shtml

PETでタミフルの体内動態を画像化する標識薬剤の合成に成功 イメージング技術によるヒト生体での挙動解明に期待(2007/12/11)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所 (理事長 : 米倉 義晴、以下、放医研)分子イメージング研究センター 分子認識研究グループの張 明栄チームリーダーらは、この程、インフルエンザ薬タミフル(オセルタミビル) の生体内動態をPET (陽電子断層撮像法) で画像化するための標識薬剤 [11C] オセルタミビル*1、及び、その代謝産物*2標識薬剤 [11C] Ro64-0802*3の合成に成功しました。

タミフルの脳への作用解明については、国内外の多くの研究者が取り組んでいます。最近では、生後3~42日までのラットにタミフルを投与したところ、生後6日までの幼いラットは、21日目以降の成体に比べ、脳内濃度が高まることなどが東京大学の杉山雄一教授、柴崎正勝教授によって報告されています。

こうした中、放医研は、タミフルの脳内での挙動を探索するためには、生体における動態を確認することが不可欠であるとの見地から、PETを用いて体内動態を観察するため、ポジトロン核種C-11*4でタミフルを標識する薬剤の合成及び活用方法の開発に取り組んできました。

張らは、開発された標識薬剤とマイクロPET*5を用い、生きたままの動物に対する実験により、タミフル及びタミフルの代謝産物の生体内動態の画像化に成功しました。今回の成果により、タミフルに関わるヒト脳のイメージング研究が大きく進展することが期待されます。

今後のタミフルに関するPET分子イメージング研究は、放医研分子イメージング研究センターと理化学研究所分子イメージング研究プログラムと東京大学大学院薬学研究科との3者間での共同研究として、発達過程の動物や病態モデル動物を用いて展開し、ヒトによる臨床試験の可能性を検討していく計画が進行中です。

【背景】
タミフルは、ウイルスの増殖を抑えるインフルエンザ治療薬として広く用いられています。一方、服用した若者や子供に異常行動や突然死が報告されたことから社会問題となっています。このため、タミフルの服用と異常行動との因果関係を解明するため、国内外の研究機関が研究に取り組んでいますが、未だ結論は得られておりません。薬物の中枢神経系への影響を明らかにするために、生体を用いた脳内の薬物動態把握のための分子イメージング*6分野での研究推進が望まれています。こうした中、放医研は、分子イメージング研究の一環として保有している卓越した分子標識薬剤の開発技術を駆使し、タミフルの服用と異常行動との因果関係を解明するためのタミフルの標識薬剤の合成に取り組んできました。

【研究手法と結果】
張らは、独自にタミフルの標識合成に必要な前駆体*7の新規合成に成功しました。次に、放医研で開発された汎用放射薬剤自動合成装置*8を利用し、標識合成中間体*9である [11C] 塩化アセチルと、PETプローブである[11C]オセルタミビル (図1左) の完全自動合成に成功しました。また、合成された [11C] オセルタミビルを使い、その代謝産物の [11C] Ro64-0802 (図1右) の合成にも成功しました。


(図1) オセルタミビル標識薬剤 :
左とオセルタミビル代謝産物標識薬剤 : 右の構造式

さらに、これらの標識薬剤とマイクロPETを用い、幼若ラット脳への取り込みの測定を行いました。その結果、2つのPETプローブは脳内への取り込みが低いものの、[11C] オセルタミビルの脳内における放射能集積は [11C] Ro64-0802に比べ、約5倍高いことを見出しました (図2)。


(図2) [11C] オセルタミビルと [11C] Ro64-0802 (B) の
ラット脳内における放射能集積と時間変化


【本研究の成果と今後の展望】
今回の成果により、タミフルの生体での挙動解明にPETを利用した研究分析が極めて有用であることが判明しました。今後、放医研のPET薬剤合成技術を他機関に移植するなどでさらなる研究の発展が期待されます。

現在、この結果を基に詳細な小動物を用いた実験により、体内動態解析や脳への作用解明に取り組むべく研究を進めており、さらに、ヒトによる臨床試験に発展させる可能性を探っていきます。

(用語解説)
*1. [11C] オセルタミビル
タミフル (オセルタミビル) の生体での働きを画像化するために、同薬剤を放射性同位元素の一つである11C (炭素11) で標識化し、人工的に合成した新たなPET用薬剤。

*2. 代謝産物
生体に投与された化学物質が、身体の働き (代謝機能) によって性質の異なる別の物質に変化したもの。Ro64-0802は、タミフル (オセルタミビル) の代謝産物である。

*3. [11C] Ro64-0802
タミフル (オセルタミビル) の代謝産物であるRo64-0802の生体での働きを画像化するために、同物質をポジトロン核種11C (炭素11) で標識化し、人工的に合成した新たなPET用薬剤。

*4. C-11
薬剤などの化学物質を標識化して放射性薬剤を合成するために用いる放射性同位元素の一つ。半減期は、20分ときわめて短いことから、サイクロトロンなどの放射性同位元素生成装置や放射性薬剤自動合成装置を備えた研究機関で用いられる。

*5. マイクロPET
マウスなどの小動物を用いたPET (陽電子断層撮像法) 診断では、人体と比較して微細で精密な画像を分析する必要があることから、主として研究用に開発された小型PET装置。

*6. 分子イメージング研究
生体内で起こるさまざまな生命現象を外部から分子レベルで捉えて画像化することであり、生命の統合的理解を深める新しいライフサイエンス研究分野。PETによる腫瘍の診断もその一分野である。

*7. 前駆体
ある有用物質を得るための前段階の物質。今回の研究過程で新規の前駆体合成技術が見いだされた。

*8. 汎用放射薬剤自動合成装置
PET薬剤を迅速かつ安全に合成するために必要不可欠な装置。現在世界で利用されている主なPET薬剤のほとんどを1台で製造することのできる放医研で独自に開発したもの。機械的駆動部分、センサー類、加熱冷却部分など、共通で使用される部分を格納した合成装置本体と、PET薬剤合成反応毎に異なる反応容器、電磁弁などから構成される合成ユニットを組み合わせることにより、高品質で安全性の高い多種多様な分子プローブの合成が可能となった。

*9. 標識合成中間体
PET用核種の放射薬剤合成には2つの方法があり、目的とする化合物の基本骨格に直接導入する方法と反応性に富む標識合成中間体を介し、中間体との反応で目的物を得る方法があり、後者には安定的に効率よく合成される標識合成中間体が不可欠である。

アスベスト暴露による中皮腫発がん経路の一部を解明 フェリチンH鎖タンパク質が関与(2007/10/30)
【概要】
独立行政法人 放射線医学総合研究所 (理事長 : 米倉 義晴、以下、放医研) 分子イメージング研究センター 分子病態イメージング研究グループの長谷川 純崇研究員、Winn Aung研究員らは、アスベスト暴露の量と時間に依存してフェリチンH鎖タンパク質*1が発現誘導され、がんの発生に関与していることを解明しました。

中皮腫発がんの主な原因であるアスベストについては、大きな社会問題となっています。こうした中、放医研では分子イメージング研究の一環として悪性中皮腫*2の早期診断法の開発に繋がる研究に取組んでいます。

今回、長谷川、Aungらはアスベスト暴露によって発現誘導されるフェリチンH鎖タンパク質に着目し、同タンパク質がヒトの中皮腫細胞形成にどのような機能を果たしているかについて、さまざまな実験によって検証しました。この結果、フェリチンH鎖タンパク質が、生体の正常機能であるアポトーシス*3 (細胞死) を阻害し、細胞のがん化を促進する可能性があること、またがん化した中皮腫細胞で過剰発現していることを見出しました。今後、フェリチンH鎖タンパク質や、このタンパク質が鉄代謝に深く関与していることから、鉄 (Fe) の代謝経路を分子標的とした分子イメージング研究*4を進捗させることにより、悪性中皮腫の早期診断法に繋がることが期待されます。

この成果は、雑誌「Carcinogenesis」vol.28 no.9に掲載され、本年10月、横浜市で開催された日本癌学会で発表されました。

【背景】
平成17年6月以来、我が国ではアスベストによる悪性中皮腫の発症が大きな社会問題となっています。悪性中皮腫は極めて稀ながんですが、予後が不良で、3年生存率が約12.7%と報告されています。治療が困難である原因のひとつは、この腫瘍を早期に発見する方法がほとんど見出されていないことにあります。多くの患者は、自覚症状が出た後に医師の診察を受け、その時点では既に治療が困難あるいは不可能になっている場合が少なくありません。ただし、早期に発見できれば比較的簡便な外科手術や化学療法、放射線治療によっても根治は可能であると思われ、現段階での現実的な対策としては早期発見方法を開発し、膨大な数にのぼるアスベスト暴露群から効率的に早期の中皮腫患者を発見していくシステムの構築が重要であると思われます。こうした中、放医研の長谷川らは、中皮腫イメージングに応用可能な特異的分子の探索を分子腫瘍学の立場から進めてきました。

【研究手法と結果】
長谷川らの研究実験は、次のような方法で行われました。

〇 ヒト中皮細胞にクリソタイル*5 (Chrysotile) とクロシドライト*6 (Crocidolite) の2種のアスベスト (0~10マイクログラム/cm2) を段階的に暴露させ、フェリチンH鎖タンパク質が発現誘導されることを見出しました。特に発がん性の最も高いとされるクロシドライトの方が、顕著に発現誘導することが確認されました。


(図1) 2種類のアスベストによるフェリチンH鎖タンパク質 (FHC) の発現誘導
アスベスト暴露24時間後にタンパク質量を調べた。暴露した量が多くなるにつれバンドが濃くなっており、フェリチンH鎖タンパク質が増加しているのがわかる。特にクロシドライト暴露群の方がその増加が顕著であった。

〇 同様に、ヒト中皮細胞にフェリチンH鎖タンパク質発現誘導効果が顕著であったクロシドライト (5マイクログラム/cm2) を暴露させ、0から48時間にわたって観察した結果、時間の経過に伴ってフェリチンH鎖タンパク質が発現してくることを確認しました。


(図2) クロシドライトアスベストによる時間依存的なフェリチンH鎖タンパク質 (FHC) の増加
暴露9時間後までは時間が経るにしたがってバンドが濃くなりタンパク量が増えているのがわかる。9時間以降は増加したままであった。

〇 さらに、クロシドライト (5および10マイクログラム/cm2) を鉄のキレート剤であるDFO*7で処理し鉄含有量を減少させた後、暴露させた結果、キレート処理を行わない群と比較して明らかにフェチリンH鎖タンパク質の誘発が抑制されることが判明しました。こうした結果から、フェリチンH鎖タンパク質の発現誘導にはクロシドライトに含まれる鉄が関与していることが確認されました。


(図3) フェリチンH鎖 (FHC) タンパク質の増加における鉄の影響
鉄キレート剤(DFO)で処理するとタンパク質の増加が抑制されている。

次いで、フェリチンH鎖タンパク質が生体の正常機能であるアポトーシス (細胞死) を阻害し、細胞のがん化を導く機序について検証するため、次のような実験を行いました。

〇 ヒトの中皮細胞とフェリチンH鎖タンパク質が過剰に発現している細胞にクロシドライトを6~24マイクログラム/cm2暴露させ、過酸化水素の発生量を比較しました。過酸化水素はアポトーシスを誘発することが知られています。フェリチンH鎖タンパク質が過剰に発現している細胞では、コントロール群と比べ、過酸化水素発生量が減少しており、アポトーシスに対して抵抗性になっていることが確認されました。


(図4) フェリチンH鎖タンパク質過剰発現細胞(MeT-FHC)とヒト中皮細胞コントロール群 (MeT-Hyg) でのアスベスト暴露時の過酸化水素 (H2O2) の生成量 (左図) とアポトーシスの変化 (右図)
フェリチンH鎖タンパク質が過剰に発現している細胞 (左図、白柱) では、コントロール群 (左図、黒柱) に比べてアスベスト暴露時の過酸化水素生成量が抑制されている。また、アポトーシスを起こしている細胞 (右図で赤く染まっている細胞、上がコントロール群で下がフェリチンH鎖タンパク質過剰発現細胞)が少なくなっている。

〇 更に、がん化したヒト中皮腫細胞の一部でもフェリチンH鎖タンパク質が過剰に発現していることを見出しました。この細胞でも、アスベスト暴露により産出される過酸化水素の量が抑制され、アポトーシスに対して抵抗性になっていることが確認されました。


(図5) フェリチンH鎖過剰発現ヒト中皮腫細胞の過酸化水素生成量とアポトーシス抵抗性
フェリチンH鎖タンパク質が過剰に発現しているヒト中皮腫細胞 (NCI-H2052、左上) は中皮細胞 (MeT-5A) に比べてアスベスト暴露時の過酸化水素生成量が抑制され (左下)、アポトーシスが起こっている細胞数も少なくなっているのがわかる (右図)。

【本研究の成果と今後の展望】
今回の成果は、これまで確認されていなかったアスベスト暴露に起因する中皮腫発がん経路の一部を明らかにするものとして注目されます。フェリチンH鎖タンパク質を標的とした分子イメージング研究や、同タンパク質が鉄代謝に深く関与していることから、鉄 (Fe) の代謝経路を標的とした分子イメージング研究を進捗させることにより、PET診断施設を活用した悪性中皮腫の早期診断法に繋がることが期待されます。

(用語解説)
*1) フェリチンH鎖タンパク質
フェリチンは生体内で鉄を貯蔵するタンパク質で、H鎖とL鎖の2種類のタイプがある。H鎖の方が重要とされている。

*2) 悪性中皮腫
肺を包む「胸膜」肝臓や胃などの臓器を覆う「腹膜」、心臓を包む「心膜」の表面に存在する中皮細胞に発生するがんを悪性中皮腫という。稀ながんと言われてきたが、近年アスベストの暴露が発症に大きく関係していることが明らかにされ、労災に指定されている。

*3) アポトーシス
細胞死の一つの形で、役割を終えた細胞を排除する時に生じる。生体の正常機能であり、形態的には核の凝縮・DNAの断片化・細胞の縮小などが見られる。

*4) 分子イメージング研究
生体内で起こるさまざまな生命現象を外部から分子レベルで捉えて画像化することであり、生命の統合的理解を深める新しいライフサイエンス研究分野。PETによる腫瘍の診断もその一分野である。

*5) クリソタイル
アスベストの一種で白石綿とも呼ばれる。産業的に多く使われている。

*6) クロシドライト
アスベストの一種で青石綿とも呼ばれる。鉄の含有量が多く発がん性が高いと言われている。

*7) DFO
鉄のキレート剤でDeferoxamineが正式名称。
http://www.nirs.go.jp/news/press/2007/10_30.shtml

放医研病院の静脈認証装置搭載電子カルテシステムを構築(2007/2/27)
 当社は、このほど(独)放射線医学総合研究所 重粒子医科学センター病院様より、非接触型手のひら静脈認証装置「PalmSecure」(パームセキュア)を搭載した電子カルテシステムを受注し、構築した。
 電子カルテシステムの認証に手のひら静脈認証技術を採用したのは、今回が初めて。本システムは昨年の10月より稼働している。
 今回稼働した電子カルテシステムでは、利用者がログオンする際に、あらかじめ自分の手のひら静脈パターン情報を登録したICカードを差し込み、装置に手のひらをかざす。ICカードに登録した静脈パターンと装置で読みとった静脈パターンを照合し、双方が一致した場合のみ電子カルテシステムにログオンすることができる。これにより、従来のID・パスワード入力に比べなりすましが困難となり、簡単なログオン操作で、院内情報のさらなるセキュリティ強化に貢献する。
 また、IHE ITIのEUAに準拠した機能も実装し、シングルサインオンで、電子カルテシステム以外にも、医用画像管理システムやレポートシステムといった、他のシステムへも同時にログオンすることができる。
http://www.nirs.go.jp/ 
http://jp.fujitsu.com/solutions/palmsecure/

独社と診断薬関連特許の供与で契約(2007/1/19)
 日本農薬は、大正製薬及び放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターと共同所有するアルツハイマー病等の神経疾患を診断するための画像診断薬に関連する特許を、バイエルグループの一員である製薬会社、バイエル・シェーリング・ファーマ社に供与するライセンス契約及びオプション契約を締結したので、お知らせする。  
 今回の画像診断薬に関連する特許は、日本農薬の高い化学合成技術を生かし大正製薬との共同研究から見出された化合物を起源として、大正製薬と日本農薬及び放射線医学総合研究所の研究成果に基づくもの。今後アルツハイマー病等の神経疾患の革新的な画像診断薬の開発が期待される。
http://www.nichino.co.jp/
http://www.taisho.co.jp

遺伝子の発現情報をデータベース化(2007/1/16)
 放射線医学総合研究所(放医研)重粒子医科学センター先端遺伝子発現研究グループは、マウスのES(胚性幹)細胞を解析、遺伝子の発現情報をデータベース(DB)化して公開した。未知の遺伝子が発現する転写産物の発現情報が得られ、再生医療の基礎研究材料であるマウスES細胞を使った発現遺伝子解析に威力を発揮する。
 独自開発の高精度遺伝子発現プロフィーリング解析(HiCEP)法により作成、付加情報(アノテーション)を加えるなど約3万4000種の転写物情報を整えた。
http://www.nirs.go.jp/

分子イメージング研究のための連携基本協定を締結(2006/2/21)
 放射線医学総合研究所と東北大学は、分子イメージングの研究教育拠点として、研究・教育を連携して推進するための基本協定を締結。
 本協定は、放医研が文部科学省の分子イメージング研究プログラムのPET疾患診断研究拠点に採択され、分子イメージング研究センターを発足させたことを機に、東北大学との間で研究・教育のための連携・協力体制の構築を目的にしている。
 従来の分子生物学的手法は生命を静的・定性的にしか研究できなかったが、分子イメージング研究の手法を用いれば、これら分子の変化を可視化し、動的・定量的にとらえることを可能にした。従来の方法に比べ生命をより正しく理解できる。生体(細胞、臓器、個体など)を生きたまま、丸ごと計測可能であることが特徴で、基礎的な医学・生物学への寄与はもちろんのこと、各種疾患の機構解明や診断法の確立、医薬品開発など広い分野への応用が期待されている。
 しかし、世界的に分子イメージング関連技術者・研究者の不足が深刻で、近年、ドイツやイギリスの大学で分子イメージングコースが開設されており、我が国においても、プロジェクト推進のための人材育成が急務となっている。
 今回の協定は、分子イメージング研究に関する研究・教育について、両機関間で包括的に連携、協力するためのものである。具体的には下記の8項目の連携協力を実施する。
 (1) 共同研究の推進
 (2) 人材育成の推進
 (3) 研究者の相互交流
 (4) 施設設備の相互利用
 (5) 研究資源の相互利用
 (6) 知的財産の管理活用
 (7) 関連する研究成果等の情報交換
 (8) 上記のほか両者間で合意した事項
 特に人材育成については、東北大学において、複数の研究科が連携し「分子イメージング教育コース」を発足させ、東北大学の教員と放医研の研究員による教育・研究指導などを行い、
 (1) PETを活用できる研究者育成
 (2) RIを利用した薬剤の活用ができる人材育成
 (3) PET薬剤合成ができる人材育成
などを目標としている。
 なお、基本協定の有効期間は、締結日より文部科学省の分子イメージング研究プログラムの実施期間が満了する平成22年3月31日までである。