東北医科薬科大学病院


医学部を持ちIPE教育が行える薬学部は、国立大学14校中11大学。私立大学は57大学中5大学です。あくまでもキャンパスを同じくすることを前提にした場合です。
キャンパスが離れていても、臨床実習の環境を持つ薬学部は28大学あります。この場合は、医学部の散財や同一法人に病院がある薬学部も含みます。
その一つが東北医科薬科大学です。薬科大学に医学部を設置。従来の医療系総合大学とは異なるものがあるのではと取材してみました。

東北医科薬科大学病院


 東北薬科大学が2016年4月1日に医学部を設置して、東北医科薬科大学として再スタートした。元東北厚生年金病院が東北医科薬科大学病院になり、医学部発足時に渡邊先生が薬剤部長に着任。さらに新病棟が完成し、病床数が拡大しているため注射剤のオーダリングシステムを導入するなど機械化・業務の効率化を進めているとのこと。
 渡邊先生は、「病院の院是は患者に寄り添う医療です。薬剤部でも院是の実現のため病棟業務に力を入れています。全病棟に薬剤師を配置し、薬剤師の専門性を活かした仕事ができる体制をつくりました。またスタッフには、医療に精通し役立つ実力をつけるように意識づけをしています。とくに各学会の認定・専門薬剤師などの資格や博士学位の取得を奨励しています。病棟に上がると医師から何を聞かれるかわかりません。そのためやスタッフは以前にも増して勉強するようになったようです」という。その成果はどうだろう。
 「全国規模の学会への参加が増え、学会発表、論文発表を積極的に行うようになりました。医学部の先生方との共同研究が動いていますし、医師から薬剤師に関わってもらいたいという要請も増えています。薬剤部の提案で、病院全体で医薬品の適正使用を推進したり、さらにはフォーミュラリへの取り組みを進めています。薬剤部が副作用の一元管理を行っており、その情報をPMDAなどに情報発信するなど社会貢献も進めています。現在のところ医学部発足時に定めた計画で薬剤部が求められた項目はほぼ実現できているのではないかと考えています。医学部設置を機会に研究棟ができ、医師と薬剤師が連携した研究が実現できるようになり、さらに新目標に向かいたいです」という。

薬学部がペースにある大学だから病棟の作りも他所とは違う


 大学病院には、教育・研究という使命もある。「医学部学生の1年生にチーム医療体験学習や薬物適正使用の授業を薬剤師の教員が担当します。3年次の医療薬学概論も薬学部教員の担当です。さらに宮城大学看護学部の学生も当院で実習を行うため、医・薬・看護のチーム医療教育が実現できています。実臨床で学生が一緒に学ぶ他職種連携教育(IPE)をトライアルで実施しており、将来はカリキュラム化につなぎたいと考えています。また薬学部の実務実習生には、IPEで理解したこと、患者さんのそばで経験したことが大きな力になると伝えています。貴重な経験を前向きに吸収すれば、薬剤師国家試験の準備でも大きく役立ちます。また製薬メーカーから画期的な薬とアピールされても、臨床では使いにくい薬があります。臨床を経験して、現場のニーズを理解すれば、製薬メーカーの研究者になっても知識を活かすことができるでしょう」と渡邊先生はいう。
 新大学病院棟が完成し、2019年4月1日から使用を開始している。ここにはハイブリッド手術室、バイオクリーンルームを含め手術室が9室があるほか、放射線治療室や画像診断室も設置された。新たに148床が加わり、全体の病床数は554床に拡大した。
 「新病棟が加わって病床数が増加しました。さらに増床予定ですが、現有勢力でなんとか対応しています。新病棟の5階から7階までが病棟で、病棟中央部にスタッフステーションを設置しました。ガラス張りの薬剤ステーションでは薬剤師と看護師が薬の準備や管理を行うほか、薬学部の実務実習生の臨床研修にも使用します。最近は、患者サービスを目的にカフェやコンビニの設置を進める病院が増えています。当院でも多目的棟を設置してカフェなどを入れ、ここの2階に病院薬剤学研究室と薬学部実習生室を設置しました。日常は薬学部生の居室として使用し、勉強会でも活用します。勉強会は、門前の保険薬局の薬剤師にも声がけして月1回程度行なっています。この勉強会は医師のレクチャーを聞くことができるチャンスです。また各薬局の責任者と定期的に情報交換会を行い、情報を共有しています」と渡邊先生。
 医学・薬学教育に理想的な教育環境がハード・ソフトの両面で実現できたようだ。

東北医科薬科大学病院


○所在地 〒983-8512 仙台市宮城野区福室1-12-1
     http://www.hosp.tohoku-mpu.ac.jp
○病床数 554床(一般病棟 508床 精神病棟46床 2019年4月現在)
○院外処方箋発行率 95.0%(2018年度)
○診療科 内科(総合診療科)、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腫瘍内科、糖尿病代謝内科、腎臓内分泌内科、脳神経内科、感染症内科、緩和ケア内科[がん治療支援(緩和)科]、 呼吸器外科、心臓血管外科、消化器外科、乳腺・内分泌外科、整形外科、脳神経外科、形成外科、肝臓・胆のう・膵臓外科(肝胆膵外科)、ペインクリニック外科、 精神科、血液・リウマチ科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、病理診断科、救急科、歯科口腔外科、麻酔科

東北医科薬科大学病院 薬剤部

●薬剤部のスタッフ
○薬剤師数 42名(2019年4月)
●施設認定
日本臨床薬理学会 認定薬剤師制度研修施設
日本医療薬学会 がん専門薬剤師研修施設
日本医療薬学会 薬物療法専門薬剤師制度研修施設
日本医療薬学会 認定薬剤師制度研修施設
薬学教育協議会 薬学生実務実習受入施設
●実務実習生の受入れ
 2-4期、各20名の実習生を受け入れる。
●大学院生に対する教育
 東北医科薬科大学大学院薬学研究科博士課程(4年制)学生を対象に半年又は1年間の臨床薬学研修を行なっている。症例研究やリサーチベースにつなぐ指導を行う。
●アクセス
 JR仙石線「陸前高砂駅」より約600m、徒歩約7分。

●専門・認定薬剤師等の取得状況 (2019年4月1日)
日本臨床薬理学会 指導薬剤師 1名
日本臨床薬理学会 認定薬剤師 1名
日本医療薬学会 指導薬剤師 2名
日本医療薬学会 認定薬剤師 4名
日本医療薬学会 がん専門薬剤師 1名
日本医療薬学会 がん指導薬剤師 1名
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師 1名 
日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師 1名
日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師 1名
日本病院薬剤師会 生涯研修認定薬剤師 2名
日本病院薬剤師会 認定指導薬剤師 2名
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師 8名
日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師 11名
日本薬剤師研修センター 小児薬物療法認定薬剤師 1名
日本静脈経腸栄養学会 栄養サポートチーム(NST)専門療法士 3名
糖尿病療養指導士認定機構 糖尿病療養指導士 1名
日本アンチドーピング機構 スポーツファーマシスト 2名
宮城県薬剤師会 認定禁煙支援・指導薬剤師 1名

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