薬学の専門知識が生きる化粧品の仕事
コロナ禍ではマスクを着用していたためメイクをしない人が多く、また訪日外国人数が減少したため化粧品業界は厳しい状態でした。コロナが5類になって外出する機会も増えて、最近では高価格帯の商品の発売が相次いでいます。化粧品の研究所を取材すると、研究員の皆さんは「化粧品はあまり使わない」という人が多いようです。化粧品の成分を知ると自分の肌には使いたくないと思うのだそうです。
化粧品の分野では、メーカーに試作品やプロトタイプ、サンプルを提供する会社があります。代表的な会社が、株式会社日本色材工業研究所(http://www.shikizai.com/japanese/)でしょう。
処方箋をもとにプロトタイプを制作し、その後の製品化に向けてメーカーと共同研究をするなど化粧品に関する幅広くやり甲斐のある仕事を展開しています。OEM事業に加え独自の商品企画も行うなど、ものづくりの醍醐味が感じられる会社でしょう。
また、国内ではスキンケアに優れている化粧品として「オルビス」ブランドの評価が高まっています。
このオルビスという会社は、P0LA(ポーラ化成工業株式会社)グループの会社。POLAの研究費は47億円といわれ、その研究成果(ライブラリー)からスキンケアに優れたものを製品化しているといいます。
独自の研究費が生じないので優れた化粧品をリーズナブルな価格で提供できるというわけです。
化粧品やトイレタリーの研究者の取材でPOLAの研究所(横浜)を訪問したことがあり、製薬とは違った環境を感じました。医薬部外品とは異なり、化粧品は、「全成分」表示義務があることです。他社が真似をしようとすればできてしまうということでした。
薬学部生の進路や就職先に「化粧品」「化粧品メーカー名」が紹介されることがあります。薬学部出身者がどんな仕事をしているのか知りたいですね。
化粧品分野の仕事について、過去に取材したHさんを紹介します。
ある外資系化粧品メーカーの薬事管理を担当するHさんは、「私は、日本における責任技術者で、申請から商品広告までの担当をしています。この会社は、メイクアップよりもスキンケアを重視しており、成分に関するこだわりが強い会社です。活性成分は、海のもの、植物といった自然のものを使用しています。ナチュラル成分を主体に作ることが企業方針であり、最高の製品を提供することを目指しています」。
安全性や効能・効果に関するデータ収集を行い、いいと思われる成分を提案しているといいます。
「業務上、有機化学や分析化学といった専門知識は必須です。薬学や化学の知識がなければできない仕事ですね。自社製品の責任者として、外部の方との交渉に臨む以上、相手を納得させられる交渉力、そしてマネージメント能力も必要です。化粧品は肌に直接つけるものものですから薬機法の適用範囲に入ります。そのため行政との交渉も仕事の一つです。医薬品医療機器等法や公正取引法、PL法などの知識も必要で、相手を納得させるための交渉力が大切なのです」といいます。
Hさんは、製薬企業や医療機器、薬学関連企業などを経験して、大学の先輩の紹介でこの仕事についたという。「今の仕事は、本当にやり甲斐があり、すごく楽しい。だって化粧品が好きだから」というHさん。
化粧品製造や輸入販売の責任技術者は、薬学部出身者が専門性を活かして働ける分野です。