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2020/03/16


医薬品業界 調剤薬局・ドラッグストア3

病院の入院期間が短くなり「病院から在宅へ」という動きが加速しています。厚生労働省は、平成28年度診療報酬改定で「退院調整加算」を廃止し、「退院支援加算(1~3)」を新設しました。在院日数短縮そして地域包括ケアの推進を目的としています。
14日以上の入院は報酬が下がる仕組みにしたため、病院は14日以内に退院できるように治療計画をたてます。

居宅療養になる場合、多職種が退院時共同指導で情報を共有します。
在宅医療に移行する場合、看護師が大きな力を発揮します。医師の患者と触れ合う時間はわずかですが、看護師は患者の生活面全てに関わるため患者の状況を最も把握しています。
担当看護師は、患者の様子を確認して訪問看護を担当する看護師と調整します。
薬剤師は、在院中の服薬状況を確認したり薬の副作用情報を伝えます。自宅では管理が難しい薬や一包化が難しい薬について処方変更の提案をするなど患者目線の情報提供をします。
薬剤師は、服薬指導で患者と触れあいますが看護師ほどの接触ではありません。看護師と連携して居宅での服薬が障害なく行えるようにします。
退院後は地域の調剤薬局・薬剤師が担当しますが、地域医療支援病院の薬局と調剤薬局の薬薬連携がはかられます。
調剤薬局の服薬指導の継続義務化は、在宅医療の推進を視野に入れたものでしょう。

地域包括ケアシステムと調剤薬局
 2025年には65歳以上の推定人口が増加、医療費に加えて介護(75歳以上)にかかる費用も2倍になると予想しています。行政は限られた予算の中で医療の質を向上させる政策を立てています。「地域包括ケアシステム」の構築や「セルフメディケーション税制」の設置も政策の一環です。
 2015年10月に「かかりつけ薬剤師・薬局」の基本機能を示す「患者のための薬局ビジョン」を公表。かかりつけ薬剤師・薬局の機能の上に健康サポート薬局の構想があります。
 薬機法改正など、一見バラバラに見えますが、政策の実現のため「薬剤師・薬局のあり方」や「薬機法改正」があり、これをまとめたものが「かかりつけ薬剤師・薬局の推進等」の文書です。

健康サポート薬局、かかりつけ薬剤師・薬局
 行政は長期にわたる計画の中で政策を進めています。健康サポート薬局とかかりつけ薬剤師・薬局の具体的な内容を把握してください。

●健康サポート薬局
 かかりつけ薬剤師・薬局の機能をベースに、地域住民の健康に貢献していこうというのが「健康サポート薬局」です。健康相談や情報発信を積極的に行っていくため健康サポート機能の充実を求めています。

●かかりつけ薬剤師・薬局
 医師と協力して患者宅の残薬や重複投薬、不適切な多剤投薬・長期投薬を減らす取組みをします。また24時間の電話対応も求め、服薬情報の一元的把握と薬学的管理・指導を行う業務を評価します。

地域包括ケアシステムは中学校区のエリアをカバー
 行政は、400床以上の医療施設に紹介状なしで受診した患者の初診料を上げるなど、診療所での受診を進めています。
 そして地域包括ケアシステムは、中学校区ほどのエリア内の患者と医療施設(病院・診療所・薬局)を対象としているようです。広域から患者が集まる大規模病院ではなく、自宅近くの診療所に通院する患者、在宅治療をする患者のケアが対象というわけです。
 地域の医療機関が患者の治療をきめ細かくサポートする姿が想像できます。これにより面分業が進展するかもしれません。

大型門前薬局と敷地内薬局
 厚生労働省は2014年度の診療報酬で、特定の大規模病院からの処方箋が70%、月4000枚(または90%、月2500枚)を超える大型門前薬局の調剤報酬(調剤基本料)を引き下げました。本来、調剤薬局が受取る「調剤基本料」は410円(41点)ですが、大型門前薬局は250円(25点)の算定です。また24時間営業や緊急時対応をしない大型門前薬局には「基準調剤加算」も認めていません。
 さらに2016年の改定で、同一法人グループの処方せんの合計が月40,000回超、かつ集中率95%超の場合は200円(20点)に引き下げられました。
 敷地内薬局は100円(10点)です。報酬は少なくなりましたが、病院の敷地内にある薬局に患者が集まる傾向があり、門前薬局には驚異の存在でしょう。

就活事典76-77Pより

敷地内薬局が示すもの
 病院からみれば、敷地内薬局は「処方せん料」と「賃貸料」の両方の収入が見込めますから魅力でしょう。
 敷地内薬局の報酬が認められているということは、積極的ではないにしろ病院内の外来調剤(院内調剤)を容認しているように感じます。実際に院内調剤を続ける病院があります。
 北里研究所病院の周辺には門前薬局がありません。病院が院内調剤を行っているためで会計はお薬分も含まれており患者の負担が軽くなっています。患者の体に財布に優しいシステムです。
 同様に慶應義塾大学病院や順天堂大学医学部附属順天堂医院、JR東京総合病院、日産玉川病院も院内調剤を維持しています。治療の観点から院内調剤を再評価すべきとの声があるといいます。患者の服薬状況の管理や病院薬剤師がもつ豊富な医療関連知識などの背景もあるのでしょう。
 医療機関の黒字化は医療活動を続ける上で大切なことです。病院の利益につながれば薬剤師定員の増加が認められ、病院薬剤師の採用が増えるかもしれません。
 病院が院内調剤に切り替えれば門前薬局の経営は厳しくなります。門前薬局を中心とする大手調剤薬局チェーンも例外ではありません。
 短期的には、大きな動きはないでしょう。長期的には病院の動きを注視していく必要がありそうです。

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