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2020/03/05


医薬品業界 病院薬剤師1

今回は、病院薬剤師に関する内容です。
病院で働く薬剤師のうち調剤や病棟業務に携わる人は、毎年増加してきました。
とくに平成22年4月の医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」から薬剤師の活用が進み、薬剤師の病棟活動に報酬がつくと薬剤師の採用を進める病院も増えました。
医師の負担軽減のため医療スタッフに任すことができる業務を示したのです。現在、働き方改革が進められていますが、この時すでに働き方改革を先取りする動きがあったわけです。
2年に一度行われる「医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)」をみると、その動きが分かります。病院・診療所の調剤・病棟で働く薬剤師は以下のようになります。
2008年 47,754人
2010年 49,211人(対前年1,457人増)
2012年 50,415人(対前年1,204人増)
2014年 47,708人(対前年2,707人減)
2016年 50,785人(対前年3,077人増)
2018年 52,596人(対前年1,811人増)
調査では2012年に1,204人増加していますが、次の2014年は2,707人減と大幅に減少しています。医政局長通知の影響でしょうか。2016年は3,077人増加することで2012年のレベルまで戻しています。
2018年は、1,811人の単純な増加と見ることができ、1年で約905人増えたことになります。
医政局長通知が出る前の2010年の数値が729人/年ですから、欠員募集だった頃に近づきつつあるようです。

日本薬学教育協議会のデータを参考にしますと新卒者の病院への就職状況は以下になります。
2016年 2,573人(27.4%/卒業生9,403人)
2017年 2,323人(24.1%/卒業生9,633人)
2018年 2,119人(22.2%/卒業生9,579人)
2019年 2,148人(20.5%/卒業生10,400人)
2019年は、卒業生が約800人増加しましたが、病院就職者は29人増加したにすぎません。卒業生に対する割合も20%を切ろうとしているのです。病院就職を希望する人は、早めの準備と情報収集に心がけてください。

○病院で働く薬剤師はわずかに増加
厚生労働省が2年に1度調査する「医師・歯科医師・薬剤師数調査」のデータを基に薬剤師数の増減を調べてみました。
グラフ(省略)が示すように総薬剤師数は増加しており、女性の比率が拡大しています。
病院薬剤師数の伸びはわずかですが、調剤や病棟活動を行う薬剤師数が増えています。次ページに6年制学科出身者の「病院就職者数の推移」を紹介しています。病院の採用数を左右するのが「私立大学病院・一般病院」です。2年連続で同じレベルの就職者数を確保していますが、2020年度は求人票の状況から少し減少することも考えられます。また医療施設は求人票が届いてから選考までの日程が短いので早めの行動が大切です。

○病院就職者数の推移
病院就職者数の推移は、一般社団法人・日本薬学教育協議会がまとめた「就職動向調査の集計報告」をグラフ化しました。各大学の報告をもとにまとめられたデータです。(グラフ省略)
病院薬剤師の採用は、「私立大学病院・一般病院」の採用状況が採用環境に影響を与える傾向があります。2019年3月の採用は前年並みでした。そのため全体の就職者数も横ばいの結果になっています。
「国立大学病院・独立行政法人病院」や「公立大学病院・自治体病院」は安定的な薬剤師採用を行っていることが分かります。

○医師の働き方改革と薬剤師 
働き方改革は、2017年3月の「働き方改革推進会議」で処遇改善・労働生産性向上・長時間労働の是正などが提案されたものです。
2018年6月29日に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が成立し、一部が2019年4月から施行されました。
働き方改革は医療機関の勤務医も対象となりますが、こちらは2024年からの施行です。医師の超過勤務についてはマスコミでも取り上げられてよく知られています。医師の働き方改革を進めるため、超過勤務医師の多い医療機関では時間短縮を図る必要があります。そこで注目されているのが「タスク・シフト/シェア」です。
これまで病院薬剤師の業務が政局通知によって薬剤師の病棟活動を行うようになったという実績があります。厚生労働省は、看護師や薬剤師の活用(タスク・シフト/シェア)」を提案しています。日本薬剤師会・日本病院薬剤師会も「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフティングに関するヒアリング」という文書を出しました。
2024年に向けた取り組みが進められ、薬剤師の業務にも変化が生じるかも知れません。
下のQRコードには京都大学病院の取り組み例が紹介されています。薬剤師が関与した時の効果だけでなく、外来診察室で医師とデスクを並べている姿は印象的です。(QRコード省略)

就活事典61P-63Pより

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