患者本位の「かかりつけ薬剤師・薬局」


薬系キャリアコンサルタント 斎藤由紀夫

2016年に制度として導入


 最近「かかりつけ」という言葉をよく耳にする。ネットで調べると、「いつも診察してもらっていること」とある。医師や病医院のことを指しているが、今では医療の担い手や医療提供施設にも幅広く使われている。2016年には「かかりつけ薬剤師・薬局」が制度として導入されている。

通常の薬局と違うのは?


 「かかりつけ薬剤師・薬局」が通常の薬局と大きく違うのは、「かかりつけ薬局」で書面の同意により、患者が「かかりつけ薬剤師」を指名できることである。その対価として「かかりつけ薬局」は診療報酬を算定できる。

 導入の背景には、団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年問題、それに伴う医療費や介護需要の増大がある。そのため地域全体で高齢者を支えていく地域包括ケアシステムが構築されてきた。「かかりつけ薬剤師・薬局」もその一つである。薬局は地域の核としての役割が求められており、薬のプロフェッショナルとしての「かかりつけ薬剤師」の存在と、その役割を発揮するための「かかりつけ薬局」としての機能が必要である。「かかりつけ薬剤師・薬局」にはそのような意味がある。

「かかりつけ薬剤師」になるには


 「かかりつけ薬剤師」の役割は、一言でいうと、患者が服用している薬の一元管理と、継続的な服薬フォロー、処方医への情報提供である。主に次の4つに集約される。①薬の相互作用や副作用の確認 ➁薬の効果や病状の観察 ③残薬の整理 ④24時間の相談対応などである。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントなども管理する。残薬整理することにより、医療費削減効果にもつながる。

 「かかりつけ薬剤師」になるには、いくつかの要件がある。3年以上の薬局勤務経験。週32時間以上の勤務。現薬局に1年以上在籍。地域活動に参加。認定団体研修の一定単位を取得、などである。「かかりつけ薬局」が、該当する薬剤師を都道府県に届け出ることにより認定される。薬局勤務が3年以上であっても、転職すれば1年以上勤務しないと「かかりつけ薬剤師」にはなれない。資質としては豊富な知識と経験、患者に寄り添い的確な対応ができなければならない。まさしく患者本位の「かかりつけ薬剤師」の姿であるが、まだ道半ばといえる。

未来の薬剤師に向かって「テイク オフ‼」


 ある新聞広告のキャッチコピーに、「飛行機は追い風ではなく、向かい風によって離陸する」という一節があった。「モノ(調剤)からヒト(患者)へ」という向かい風は、さらに薬剤師の価値を上昇させる。未来の薬剤師に向かって「テイク オフ‼」

*地域包括ケアシステム…高齢者に日常生活圏内で医療・介護・介護予防・住まい、生活支援サービスを提供できる体制

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