院外処方箋の薬代は、薬局により異なる


病院に近い薬局に行くと薬代が安い…
 ずいぶん前になるが、テレビの「池上彰のニュース そうだったのか」で病院に近い薬局に行くと薬代が安い、ということを説明していたのを見たことがある。

 薬局には病院の敷地内にある敷地内薬局、病院のすぐ近くにある門前薬局と街中にある一般薬局があり、薬代はどこが一番安いかという内容だったように記憶している。そこでは処方箋は病院に近い敷地内薬局、門前薬局、一般薬局という順になるというのである。池上氏の説明は単刀直入で非常に分かりやすかったが、実際は本当にそうなのだろうか。

説明にはいくつか誤解を招く内容が
 テレビを見ていた人からすると、説明にはいくつか誤解を招くことがある。一つは薬代という言葉であるが、ここでは患者が処方箋を薬局へ持参して支払った金額のことで、薬そのものの値段ではない。

 薬代は調剤報酬点数(1点10円)で決められていて、調剤技術料(調剤や設備・機器使用)、薬学管理料(薬の説明・指導)、薬剤料(薬の価格)や特定保険医療材料代の合計点数である。患者が支払う金額は一部負担金と言い、点数を金額にして本人の健康保険の定率を乗じて算定される。

調剤基本料のことを説明?
 もうひとつは、病院に近い薬局の薬代が安いということであるが、池上氏は調剤技術料の中の調剤基本料のことを説明していたように思う。調剤基本料は薬局の規模、処方箋の受付回数や集中率が高い薬局は調剤報酬点数が低く、同じく低い薬局は点数が高く設定されている。だから病院に近いところの薬代は安いと説明されていた。

 しかし必ずしもそうとも言えない。筆者は高脂血症と診断され治療薬の「クレストール」を長期間服用しており、処方箋は個人経営の一般薬局に持参している。ある時、処方箋を大学病院前の門前薬局に持参したことがあったが、同じ薬なのに門前薬局の支払金額の方が高かった。

地域支援体制加算とは何か?
 なぜこのようなことになったのか、家に帰り調剤明細書を見比べてみると、門前薬局の方には地域支援体制加算の点数が記載されていた。一方個人経営の一般薬局にはその記載がなかった。地域支援体制加算とは何か、ネットで調べてみると「地域医療に貢献する薬局の体制を評価するもので、届け出のうえ施設要件に適合すれば調剤基本料に加算できる」と書かれていた。

 門前薬局では、地域支援体制加算要件を満たしていることで加算されたことが分かった。この場合、門前薬局と個人経営の一般薬局で薬をもらうことに、どんな違いがあるのだろうか。単に支払金額の違いでしかなかったというのが実感である。

 厚生労働省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を公表している。冒頭には「患者本位のかかりつけ薬局・薬剤師を目指す」とある。「患者本位の」とは薬代の安い高いではなく、患者に寄り添い病気や健康について一緒に考える薬局・薬剤師のサポートをいうのではないだろうか。