いま、なぜ「リフィル処方箋」なのか


医師会の反発を押しのけて施行したリフィル処方箋
 慢性疾患で長期間にわたり治療薬を服用しなければならない場合、症状が安定しているにもかかわらず、そのつど医療機関に処方箋をもらいに行かなければならない。そんな経験に疑問を感じる人も多いのではないだろうか。それを解消する「リフィル処方箋」制度が、医師会の反発を押しのけ、やっと2022年4月に施行された。

慢性疾患で「お薬通院」する患者

 この背景には高齢者の医療費の増大があげられる。2021年度の国民医療費は約45兆円で、その約6割を65歳以上が占める。とくに慢性疾患で「お薬通院」している患者の医療費は、以前からも課題となっていた。このタイミングでの導入は、医師の働き方改革を直前に控え、医師の残業時間を減らすためのタスクシフトにもなる。

 リフィル処方箋は、医師の処方により薬剤師のもとで、一定の期間内に反復利用できる処方箋のことを言う。処方の対象は高血圧症、糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患で、「症状が安定している場合」に限られる。
 医師が処方箋のリフィル可にチェックと回数を記入すると、患者は医師の再診を受けずに3回まで薬局で薬を受け取れる。つまり患者は通院する負担と再診のための医療費が軽減される。それが医療費全体の削減につながる。

どれくらいの「リフィル処方箋」が発行されているのだろう
 では実際にどれくらいの「リフィル処方箋」が発行されているのだろうか。レセプトデータ(2023年3月時点)によると、全処方箋の0.05%という結果が報告されている。
 導入後1年のデータではあるが、決して多い割合とは言えない。厚生労働省が病院・診療に行ったアンケート調査の「リフィル処方箋を発行しなかった理由」では、「患者からの要望がない」や「長期処方で対応ができる」への回答が多かった。しかし本音では、患者の受診回数が減ることや、薬局に任せる不安の方が大きいのではないだろうか。
 
医師と薬剤師の連携、かかりつけ薬剤師と患者の信頼関係が醸成される
 処方されたリフィル処方箋は、自宅周辺の薬局、かかりつけ薬剤師に持参するのが相応しい。なぜなら、薬剤師は患者の服薬状況等を確認し、調剤後も継続的な薬学管理指導を行う義務ある。また患者の服薬状況などを、処方医師に情報提供する必要がある。
 それにより医師と薬剤師の連携、かかりつけ薬剤師と患者の信頼関係が醸成されることになる。むしろ医療費削減より、それがリフィル処方箋導入の大きな目的でもある。

 「モノからヒトへ」という言葉が使われ始め、10年近くになる。2014年の医薬品医療機器等法(薬機法)の制定から始まり、患者のための薬局ビジョン、かかりつけ薬剤師・薬局、地域連携薬局・専門医療機関連携薬局そしてリフィル処方箋等々、薬局を取り巻く環境は目まぐるしく変化をとげている。
 今まで以上に、薬剤師の能力を超えたものが求められているが、変わっていないのは薬剤師の意識である。使命感をもって医師と患者との信頼関係を築いていけるか、リフィル処方箋が「カギ」になる。