防衛医科大学校病院 薬剤部


防衛医科大学校病院


 「防衛医科大学校は、自衛隊の医官(医師)や看護官(看護師)を育成しています。
 病院はその教育・研修の場であるとともに一般の方々への医療を提供しています。薬剤師も研修医、新人看護師など医療スタッフの研修を担当しています。
 当院は一般的な大学病院と同じ機能をもっていますが、より高度な医療を提供する特定機能病院でもあります。特に医療安全への取り組みは重要と考えていますので、病院の中でどう関わっていけるか業務を見直すことも大切と考えています」と小杉先生。

○着任して感じたことは?

 「薬剤部は、薬剤師22名と調剤補助2名、事務員1名、それに治験業務に携わる看護師1名で構成されています。許可病床数は800床ですが、現在、耐震工事を行っているため全てを稼働しておりません。でも同規模の病院と比較すると薬剤師数は少ないですね。防衛医科大学校病院は、防衛省が設置する施設ですから職員は国家公務員となります。定員も決まっており薬剤師の増員は容易ではありませんが、限られた人員で効率的な運用を行なっています」と小杉先生。
 「今後もっと推進したいものにチーム医療の充実があります。多職種が一人の患者さんの治療に対応するチーム医療。病院も推進する考えですから、薬剤部もチーム医療の中で薬剤師がどう関与していくか、どんなことができるかを模索しています。がん化学療法、緩和ケア、感染管理等、チーム医療の中で薬剤師が求められる機会は増えています。また病棟活動は現在、午後を中心に服薬指導などを行っていますが、さらに活動範囲を広げていきたいですね。当院は医師や看護師など現場スタッフとのコミュニケーションも良好です。ニーズはあると思うので、もっとベッドサイドの患者さんに近いところで活動し、治療に貢献できればと思います。入院から治療経過、退院までトータルに薬剤師が関わっていくことが重要だと思います。今後は病棟専従薬剤師の配置も含めて活動しやすい環境を整備していくことが私の役割です。そのためにはもっと内外に薬剤師業務の‘見える化’が必要です」という。

○医療安全は医薬品の適正使用から

 医療安全の観点では、全病棟への専従薬剤師の配置が理想だろう。医師の処方せんに従って調剤した薬だが、時には治療方針の変更で薬剤部に返却されることもある。変更前のお薬は病棟における投薬ミスや不必要な医薬品の廃棄につながる可能性がある。返却薬には高額なものもあり、薬剤部ではこの実態調査を行っている。
 今後、病棟で薬剤師が的確な処方提案などの薬物治療に積極的にかかわることで、軽減できる可能がある。
 小杉先生は「防衛医科大学校病院は、一般の患者さんに高度な医療を提供する特定機能病院です。地域の基幹病院として外に向けて様々な情報を発信する姿勢も大切です。薬剤部員は、限られた条件の中で頑張っていると思います。
 とくに医療安全には注力しなければいけません。治療全体の中で薬が関わる部分は多いので医療スタッフへの情報提供は大事と思います。
 現場スタッフのレベル向上も必要と考え、病棟で医薬品適性使用に関する勉強会やセミナーを行うように話しています。学会発表や薬薬連携などできるところから情報発信していきます」という。ここでも薬剤師業務の‘見える化が’重要だろう。

○情報の共有や薬剤師教育

 「薬剤師の採用については、欠員があれば行っています。経験者を採用することもありますが新卒者も採用します。
 新人教育については、業務を標準化した上で、むらのない教育が大切と思います。また薬剤師のレベルアップをめざす教育も重要です。
 現在は月3回、勉強会を実施しています。新薬に関する情報、各人の研究テーマに関する発表、そして治療ガイドラインなど興味を抱いた薬物治療のテーマについて担当者を決めて開催しています。新薬の疫学的な情報は臨床現場で多くの患者さんに処方されていく中で築かれます。
 治験の段階では患者数が限られており未知の副作用もあるかもしれません。また実際、臨床で使用する薬剤は1種類とは限りません。このため薬物間の相互作用や合併症をもつ患者さんに投与された薬を現場の薬剤師さんがきちんと評価しなければなりません。そのような情報は、ベッドサイドに行かなければわかりません。
 また医薬品に関する情報は、常にアップデートされますから朝礼や連絡会で薬剤師全員に周知する機会を設けています。さらに薬剤師は、外部の勉強会に参加する機会も多くなっています。加えて学会発表等も行いますので負担は大きくなっていますが、皆頑張っています」という。

○認定薬剤師や専門薬剤師への取組み

 「一般的に認定薬剤師や専門薬剤師の資格に挑戦するには、研修認定施設で研修を受けなければなりません。しかし当院は、日本医療薬学会が認定する研修施設でもありますので、日常業務を行いながら認定資格を取得できます。これは大きなメリットですから、ぜひ利用してもらいたいですね。
 薬剤師にとって資格を目指すことは励みになります。また資格を取得してもらうため計画的な教育が必要と考えています。認定薬剤師や専門薬剤師の資格に挑戦するには、学会発表や症例等が必要となります。病棟活動は調剤業務との兼務ですから苦労をかけていると思いますね。
 また薬学部生や自衛官薬剤師の実務実習にも対応しています。人に教えるということは、その内容をきちんと理解していなければなりません。現場の薬剤師の勉強にもなるだろうと考えています」という。小杉先生は、まだまだ足りないものがあると表現されていた。
 しかし、試験室にはTDM(薬物血中濃度)を行う分析機器があり、他の大学病院でも見られない分析機器まである。充実した設備を活用して薬に関する色々な現場の疑問に化学的な視点から対処する。そして患者さんの薬物治療に活用される。さらに薬剤師の研究にも活用されているのである。
 防衛医科大学校病院に対する他の医療施設の関係者や患者さんの評価は素晴らしいものがある。

防衛医科大学病院の概要

○所在地 〒359-8513
     埼玉県所沢市並木3-2
○病床数 800床(一般病床764床、精神病床36床)
○ホームページ http://www.ndmc.ac.jp/hospital/
○診療科 内科、精神科、神経内科、消化器科、循環器科、小児科、外科 、整形外科、形成外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、歯科口腔外科、血液内科、腎臓内科、内分泌科

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