京都府立医科大学附属病院 薬剤部 上田 和正さん


日本臨床救急医学会
救急認定薬剤師


●資格を目指す動機となったものは?

 当初は、重症の患者さんに対する服薬指導を行なっていました。お薬の説明を中心とした服薬指導、副作用や薬効、有効性、安全性をご理解いただくことが本来の目的です。
 しかし、脳卒中で会話ができない患者さん、麻酔がかかっている患者さんには説明ができません。ご家族に対する服薬指導になります。
 コミュニケーションができない中で病態が悪化した時、それは病気のせいか、薬のせいか、お薬を変えれば状況が好転する可能性があるかもしれないという評価(あるいは判断)になることがあります。
 医師や看護師から「薬剤師さんはどう考える?」と質問を受けることがあります。切迫した中で討論を重ねながら仕事をしていくうちに重症の方への薬学的管理に興味をもつようになりました。

●仕事の内容を教えてください

 救急救命は、壮絶な状況が展開されることがあります。それなのに救急搬送される患者さんには情報がほとんどありません。年齢や体重、体格など基本的な情報すらなく、わかるのは性別や意識がないくらいのときもあります。
 そんな時お薬手帳があれば、医師に伝える情報が格段に増えます。医薬品名から病名を類推して、血圧の薬の記録があれば高血圧の可能性を伝えます。また糖尿病の薬には「この患者さんは糖尿病の可能性があります。腎臓にも注意してください」など的確な情報提供ができます。
 中には、農薬による自殺で搬送されるケースもあります。この場合、飲んだ農薬を薬剤師が分析します。農薬の中には遅発性の障害が出るものがあります。
 呼吸困難になって酸素投与する時、全開で投与すると肺に障害が出るものがあります。医師に理由を説明して、最低限の酸素投与で乗り越えてもらうようにお願いします。
 情報提供には、経験と専門性が求められますね。

●資格取得の勉強は?

 当院は、重症の患者さんがたくさん来られます。救急搬送される方の中には、ICU(集中治療室)に入られる重症の患者さんがおられます。病棟にも重症の患者さんがおられます。
 多くの症例がある病院ですから、豊富な経験を積むことができます。認定資格取得のための勉強をしていくには望ましい環境です。
 救急に関する業務を進める中で大切なことは、問題点を明確にすることだと思います。問題点を把握して優先順位をつけます。
 救急の現場では10分、1時間、3時間と稼げる時間を割り出して失われていく生命活動を維持しながら原因検索や治療にあたるのです。また様々な問題を職種間で共有することも大切です。
 医師や看護師と共に勉強する日々です。
 どんなに重症の患者さんでも、ある時点で「この患者の命を助けるぞ」という誓いをもって治療に取り組みます。薬剤師は、責任ある仕事を行なっています。

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