勇気の後にはサプライズがある


この夏、キャリアに関する面白い本と出合った。その本は、石井てる美著「キャリアを手放す勇気」東大卒・マッキンゼー経由・お笑い芸人というタイトルである。もともとは、「私がマッキンゼーを辞めた理由―自分の人生を切り開く決断力」として発刊されたものを、加筆改編した本である。一流大学を卒業して、一流企業に就職してなぜお笑い芸人なのか。興味をもって手に取ったのであるが、その内容は奥深く共感するものが数多くあった。なかでも超一流といわれるコンサルタント会社マッキンゼーでの筆者の1年4カ月の貴重な経験で感じた言葉や気づきは、これからの働き方を考えるうえで役立つ内容であり、その文章の一部を紹介する。

・マッキンゼーという会社は背伸びをして成長しつづけることを要求する会社である。
仕事は「できない」ことをやっとの思いで「できる」に変えていくというチャレンジの
連続である。
・学生時代は、「頑張ればなんとかなる」と思っていたが、頭を使わずにただがむしゃらに時間だけかけて「頑張ったつもり」になっていた。1日は24時間しかなく、自分が働ける時間は限られていることから、小さな力で大きなものを動かし、アウトプットへの最短距離を考える「レバレッジ」が求められる。
・カンフタブル(居心地がよい)ゾーンにいてはいけない。居心地がよいということはストレッチ(成長)を放棄していることでもある。
・マッキンゼーには「PMA」という言葉がある。ポジティブ・メンタル(マインド)・エチチュードの略で、どんな時もポジティブに考えることが習慣になっている。ポジティブでないと大きな力は発揮できないし、人の心は動かすことはできない。
・何かを変えたいと思ったら、多少のリスクを負ってでも行動しなければならない。リスクは人により様々であるが、理想がある人にとっては何もしない方がリスクである。

 では、芸人として夢を追いかけている筆者が、多くの試練のなかで筆者が伝えたかったことは何か。それは本の最後に書かれていた。「あなたが飛び込みたいと思っている世界は、まだ実際に見ていないからというだけの理由で、怖い世界のように思うかも知れない。でもその怖さは何の根拠もない。悩んで苦しんで挑戦したあとには、想像もしていなかった景色が広がっている。勇気を振り絞った分だけ、サプライズが待っている」。
 ひと言でいうと、挑戦する勇気である。それは、就職活動をするうえで最も必要な能力とも言える。



斎藤由紀夫(さいとう ゆきお)
薬系キャリアコンサルタント
外資系製薬企業でMR、宣伝企画、教育・研修、プロダクトマネージャー、ヘルスケア、人事採用部門を歴任する。
その後大学院心理学研究科入学、修了後薬科大学に入職、キャリアセンター長としてキャリア・就職支援に携わる。
2015年に合同会社キャリアパフォーマンスを設立、イベント企画や研究会開催、講演、執筆などの活動を行っている。

戻る

トップページへ戻る