感染制御認定薬剤師
抗菌化学療法認定薬剤師
●病院全体で感染防止に取り組む。
感染制御には2つの仕事があります。消毒関係における感染制御と治療部分の抗菌に分かれます。しかし日本病院薬剤師会が実施する感染制御は両方やりなさいという設定ですので、私は感染制御認定薬剤師と抗菌化学療法認定薬剤師をとりました。薬剤部は医薬品として消毒薬を抱えています。その濃度で適切か、開封後の期限、器具に対して適切な消毒剤を使っているかをみていくのがメインの仕事です。感染対策チームは週1回ラウンドを行い、ラウンドした時に濃度などを確認しています。医療器具にはどのような使い方をするか分からないものが多く、感染の資格をもつ看護師と一緒にラウンドすると的確な意見が得られます。看護師と消毒液について相談して進めることができ、連携すれば適切な消毒薬か提案できます。
感染を減らすには感染させないことが大切。そのため消毒剤の適性使用や手指衛生は重要です。
患者さんが手術を受けて、感染症で入院が伸びれば費用が嵩みます。消毒はそれを防ぐのが大きな目的です。ある報告では、MRSAにかかるだけで医療費が400万円必要になるとのことです。さらに入院期間が延びれば患者さんに苦痛を与えますから、院内感染はデメリットが大きいですね。
●手指衛生ができていれば感染症は生じない。
中でも難しいのが手指衛生です。手指衛生ができていれば、どこの病院でも感染症は生じません。しかし医療関係者でも慣れてくると適切に消毒しなくなり、使っていても塗りもれも生じます。私たちは、手指衛生の消毒液に泡のタイプを採用しました。泡は液だれが少なく、アスコルビン酸を入れておくとブラックライトで消毒状況が確認できます。
さらに院内・全職員を対象に手指衛生キャンペーンを行い、消毒液を使ってもらいました。その中でどこに塗り残しが多いかを調査しました。結果をポスターにし増した。さらに院内の勉強会でも感染対策の一環として注意喚起しています。課題はやり続けることです。700人〜800人という多くの職員に毎日やってくださいとお願いするには根気が必要です。
また消毒薬は医薬部外品が多く、薬剤部を通さず各部署が購入する可能性があります。
それらの消毒液には成分や濃度が記載されていない製品もあり、濃度が安定しているか分かりません。中には医療施設で使用する消毒薬として不適なものがあるかもしれず、濃度表示がある消毒液を使う必要があります。ICTと連携して、各部署の確認を進めています。
●細菌や微生物の知識も必要になってきました。
もうひとつの仕事は、治療に関するものです。抗菌薬の選択では、医師とTDMをみてディスカッションしながら適切な量を決定します。効果がある領域と副作用がでるところの幅が狭い抗菌薬は、その範囲に入れなければ効果が期待できません。副作用を抑えるために薬剤師が関与します。患者さんごとに腎機能や筋肉量、寝たきりになっていないかなど1症例ごとに考え、個人にあった治療を考えます。検査値をみながら悪くなるようであれば薬を変更しなければなりません。
また薬剤師も細菌や微生物の知識が求められるようになりました。薬剤師に求められる技術・技能を身につけ、そのうえで専門的なことができる人が求められていると思います。病院薬剤師として働いてみると「感染制御だけ」、「がんだけ」ではなく薬剤師に求められる知識・技能を身につけ、そのうえで専門性が発揮できる人が求められていると思います。