草加市立病院


大学病院レベルの薬剤業務を行う中核病院があるという情報を得て取材した。

●SPDの活用が、薬剤師の充実した病棟活動をバックアップしている。

 草加市立病院は、常勤薬剤師18名で調剤、製剤、医薬品情報、医薬品管理、薬剤管理指導、抗がん剤調製などの業務を行い、医薬品搬送等はSPDのサポートを受けている。さらに各病棟に薬剤管理指導室があり、病棟に薬剤師が駐在し、病棟業務を実施している。
 調剤を担当しながら病棟業務を行う病院が多い中、この病院では病棟に薬剤師が張り付いて活動に当たっている。SPDとの連携が充実した病棟活動を可能しているのである。

●患者さんの治療に貢献するには高度な知識・技能が求められる。

 薬剤部長・源川先生は「当院はかつて医師50人程度の病院でした。現病院長が病院改革を進め、病院の内容を変えられました。今では研修医を含めて100人の医師が勤務する病院になっています。さらに医局は東京医科歯科大学出身の医師を中心に構成しています。医師は同大付属病院とタッグを組み、お茶の水(東京医科歯科大学病院)と同レベルの医療を実現しようとしています。そのため薬剤師の質も高いレベルが求められます。例えば、治療を進めるため患者さんを大学病院に紹介します。その患者さんは将来当院に戻って治療を継続されます。大学病院と同じ治療を提供するため、薬剤師にも大学病院と同等の知識が求められるわけです」という。
 例えば大学病院でアジュバントが行われていれば、この病院でも患者さんに同様の治療を提供しなければならない。大学病院と同レベルの医療を提供するため知識・技能に磨きをかける必要があるのだ。しかも薬剤師全員が高いレベルの知識をもつことが求められる。

●薬剤師が功績を上げることで評価を高めている。

 「薬物治療のガイドラインができ、患者さんの治療に力が発揮できる薬剤師で構成しています。さらに薬剤業務をバックアップする機器も最新のものを導入しました。薬剤部の活動は病院長や事務スタッフの理解を得ていると思います。業績をデータ化して薬剤師が存在するメリットをアピールしてきました。実績をみえる化することで、その業績や貢献度を評価していただいています。そのような実績が薬剤師採用の後押しになっています」という。
 薬剤部が患者さんの副作用を発見するなどの功績から、薬剤師に対する認識は変わってきた。また「がん」や「緩和」、「感染症」、「糖尿病」などの専門知識をもつ薬剤師の養成にも力を注いでいる。

各資格の取得者は以下の通り。

日本糖尿病療養指導士/3名
がん薬物療法認定薬剤師/3名
外来がん薬物治療認定薬剤師/1名
栄養サポートチーム専門療養士/2名
感染制御認定薬剤師1名
抗菌化学療法認定薬剤師/1名
緩和薬物療法認定薬剤師/2名
妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師/1名
小児薬物療法認定薬剤師/2名
漢方薬・生薬認定薬剤師/1名
埼玉県病院薬剤師会障害研修センター生涯研修認定薬剤師/1名
日本薬剤師研修センター認定薬剤師/11名
日本病院薬剤師会生涯研修履修認定薬剤師/6名
日本病院薬剤師会生涯研修認定薬剤師/5名
日本病院薬剤師会認定指導薬剤師/4名
日本薬剤師研修センター認定実務実習指導薬剤師/5名
公認スポーツファーマシスト/4名
介護支援専門員(ケアマネージャー)1名
労働衛生管理者/1名
メンタルヘルスマネジメントII種/1名
日本DMAT隊員/1名
医療情報技師1名
吸入指導薬剤師/5名
肺炎コーディネーター/3名

●指導的な立場になれば、勉強するようになる。

 源川先生は「実務実習が始まった時、薬剤師たちは、実習生の受け入を嫌がりました。嫌がるのは教える自信がなかったのでしょう。しかし学生教育を行うために一生懸命勉強しました。その結果、臨床教育の受け入れができるレベルまでになりました。薬剤部全体のレベル向上につながったのです。さらに専門性を高めるために認定薬剤師の取得を推奨しています。日常の業務では、薬剤師が専門医にハイレベルな処方提案をするなど医薬情報を提供していくことが大切と考えています。その先に薬剤部の課題として専門薬剤師の育成があります」という。
 教育に関する考え方を聞いた。
 「私は『歌って踊れる薬剤師になれ』といっています。歌う=易しく説明できること。踊れる=患者さんと医師の間を行き来して情報を伝えることを意味します。最初に私の指導を受けた薬剤師はもう40歳代になり、他の病院で頑張っています。その経験から、教育は教えることではなく、新人薬剤師や学生を指導することで自分が勉強すること。その中で自分に知識が足りなければ自己研鑽するようになります。薬剤部には認定薬剤師の資格をもった薬剤師が増えてきました。分からない時には、そんな有資格者に聞いてみなさい。聞いて分からなければ一緒に調べてみようと話しています。
 また情報の共有も重要です。医薬情報室(DI)に問合せがあった事例をExcelに記録し、閲覧できるようにしています。疑問を感じた時、キーワードでソートをかければ同様の質問があることが瞬時に確認できます。新人薬剤師が一人で当直しても、蓄積した先輩薬剤師の知識が助けてくれます。さらに新人薬剤師の指導にあたる先輩薬剤師は、いつでも携帯電話でアドバイスができる体制です」と源川先生。
 病院薬剤師を目的にしている人にアドバイスをお願いします。
 「就職活動の中で病院の情報は少ないですね。就職を希望する人には、ホームページを見てください。常に見学を歓迎していますので不安があれば見に来てくださいとお話しています」という。実際に薬剤師の職場を肌で感じることが重要ということだ。

草加市立病院 薬剤部情報 平成28年度実績

○処方箋枚数(外来院内) 平均344枚/月
○処方箋枚数(入院)   平均5,203枚/月
○注射処方箋枚数     平均7,514枚/月
○抗がん剤調製件数(外来)平均287件/月
○抗がん剤調製件数(入院)平均168件/月
○薬剤管理指導業務    平均864件/月
○薬物血中濃度測定(TDM)  平均10件/月

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