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東京大学大学院 理学系研究科

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精子の機械受容反応の発見とカルシウム依存性鞭毛反応の制御機構の解明(2011/4/1)
東京大学の真行寺千佳子准教授らは、ウニ精子の機械受容反応を発見し、その反応を指標とするという新たな試みにより、精子遊泳方向が精子内部のカルシウム濃度の変化によりどのように制御されるのか、またそのカルシウム濃度の変化はどのような膜タンパク質により調節されているのかを解明した。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2011-07.html

細胞器官のマジックナンバー「9」の由来(2011/3/29)
発表概要
原生動物からヒトまで、繊毛の内部はきまって2本の管を9本の管が囲んだ不思議な形をしている。 「9+2」構造とよばれるこの形は、根元にある中心子という細胞小器官の形に由来する。 この形ができるしくみは長らく謎だったが、今回、中心子の中央部を構成するタンパク質の構造が決定され、その普遍的な形ができるしくみの一端が解明された。

発表内容
図1:鞭毛の「9+2」構造と中心子の構造。左はクラミドモナス細胞の模式図。2本の鞭毛とその基部に中心子をもつ。A. 鞭毛の断面図。2本の中心対微小管を9本の周辺微小管(ダブレット微小管)が取り囲んでいる。B. 中心子の構造。右は中心子の縦断面と底部の横断面を示す。中心子は9本のトトリプレット微小管が環状に並んだ円筒状の構造。底部にカートホイールがある。カートホイールは、中心のチューブ構造(ハブ)から9本の細い繊維(スポーク)が放射状に配置したもの。

中心子構造がどのように形成され、9という数がどのように決まるのかは、現代細胞生物学の大きな謎だった。 しかし最近、単細胞緑藻クラミドモナスの突然変異体を用いた我々の研究により、a) カートホイールという、傘の骨のような放射状の構造が中心子微小管の形成の足場として働くこと、b) カートホイールの中心部分を作っているのはSAS-6というタンパク質で、これがなくなると中心子微小管の数が9本に固定されなくなること、が明らかになった(図1)。 つまり、9放射相称形のカートホイールができることが中心子の特徴的構造構築の第1歩であり、その中央部分を作っているSAS-6が9という数を決めている可能性が考えられた。

2)この研究が新しく明らかにしようとした点
しかし、SAS-6がどのような構造で、どのようにカートホイールに組み込まれているかは不明であった。 そこで、X線結晶解析によってSAS-6の分子構造を明らかにし、カートホイール中央部におけるSAS-6分子の配置を調べた。

3)この研究で得られた結果、知見
遺伝子工学を利用して作製したSAS-6の分子構造をX線結晶解析で決定した。 その結果、a) SAS-6は二量体を形成して、2つの球状の頭部と繊維状の尾部からなる形をしていることと、b) この二量体どうしが頭部の先端で結合することにより、9放射相称形に会合できる形を持つことが明らかになった(図2)。 つまり、カートホイールの中央部はSAS-6が会合してできたものだと考えられる。 この推定が正しいことを検証するため、SAS-6を欠失したクラミドモナス突然変異体に、二量体どうしが会合できないようにアミノ酸配列を改変したSAS-6を発現させたところ、カートホイールは形成されなかった。 さらに、電子顕微鏡を用いた解析により、結晶内の分子構造が実際のカートホイール内での構造に一致することも確かめられた。 従って、分子構造から推定されたとおり、カートホイール中央部はSAS-6そのものでできていることが明らかになった。 この結果は、真核生物の普遍的な構造パターンが、SAS-6という1種類のタンパク質の構造によって規定されていることを示す画期的なものである。

4)研究の波及効果
繊毛は、細胞の運動や水流を起こす働きばかりでなく、細胞外の情報をキャッチするアンテナとしても機能することがわかってきた。 先述の嗅覚、視覚における機能に加えて、腎臓で尿の流量を感知することにも繊毛が働いている。 これらの重要な繊毛の機能を裏付けるように、バルデー・ビードル症候群、多発性嚢胞腎などの「繊毛病」と呼ばれる遺伝病が存在する。 今回の研究は、多様な繊毛機能の理解に欠かすことのできない知見を提供するものである。

また、中心子は繊毛形成だけでなく、中心体の中核構造として細胞分裂にも重要な機能をもつ。 実際、がん細胞の多くは、細胞内の中心子の数が異常になっている。 今回の中心子形成の原理の解明は、このような中心子形成の異常の理解にも重要である。

5)今後の課題
今回はカートホイールの中央部分がSAS-6によって構成されていることが明らかになった。 今後はその他のカートホイール構成タンパク質を同定して、構造全体がどのように構築されるかを完全に解明し、最終的には中心子の形成機構を解明することが重要である。 我々は、すでにカートホイールの周辺部にあるタンパク質Bld10pを同定しているので、これとSAS-6がどのように相互作用するかを調べることが次の具体的な課題である。

6)論文の参照情報
米国Science誌2011年3月4日号に掲載済み。
“Structures of SAS-6 Suggest Its Organization in Centrioles”
M. van Breugel, M. Hirono, et al., Science 331, 1196-1199 (2011).

※リリースに表やグラフが含まれています。詳細は下記URLを閲覧してください。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2011-06.html

細菌の遺伝子発現を阻害する新たな仕組みを発見 —とがった転写因子がRNAポリメラーゼに突き刺さって停止させる—(2010/12/2)
発表概要
細胞における遺伝子発現では,まずDNAの塩基配列を写し取ってRNAが合成され,次にそのRNAの配列をもとにタンパク質が作られます. この一連の流れはセントラルドグマと呼ばれ,すべての生命活動を支える中心的な仕組みです. RNAポリメラーゼは,セントラルドグマの最初の段階であるRNAの合成をつかさどる巨大なタンパク質で,すべての生物に必須です. 今回我々は,細菌のRNAポリメラーゼの立体構造を,その働きを阻害するタンパク質が結合した状態で解明することに世界で初めて成功し,RNAポリメラーゼの働きを阻害するユニークな機構を明らかにしました. この成果は,新しい作用機構に基づく新規抗菌剤の開発等の基礎となることが期待されます.

発表内容
図1:RNAポリメラーゼによるDNAの転写
NTPはRNA合成の材料(基質)を示す.RNAポリメラーゼは,NTPを1つずつRNAに付加していくことで,DNAと同じ配列のRNAを合成する.

図2:RNAポリメラーゼとGfh1の複合体の立体構造

図3:Gfh1がRNAポリメラーゼを阻害するメカニズム

1. 背景
DNA(注1)は生命の設計図であり,細胞を形作ったり,その活動を支えたりするための遺伝子を含んでいます. 細胞は,DNAに含まれる遺伝子のすべてを常に利用しているわけではなく,その時々の状況に合わせて必要な遺伝子をDNAから読み出して使用しています. RNAポリメラーゼは,DNA上で必要な遺伝子を見つけ出し,その部分のDNAの塩基配列をコピーしてRNA(注2)という分子を合成します(図1). これを転写(注3)と呼び,すべての生物において遺伝子が働くために必須な過程です. したがって,RNAポリメラーゼは生物にとって不可欠であり,現在利用されている抗生物質の中には細菌のRNAポリメラーゼを標的とすることで細菌の繁殖を抑えるものがよく知られています. 一方,細胞内では,転写因子(注4)と呼ばれるタンパク質群がRNAポリメラーゼの働きを制御し,正確な遺伝子の発現を実現しています. 細胞での遺伝子発現を制御する仕組みを理解するためには,RNAポリメラーゼと転写因子の作用メカニズムを明らかにすることが重要です. これまで,遺伝子発現の調節の仕組みに関しては,「オペロン説」(注5)のように,DNAに結合してRNAポリメラーゼの働きを間接的に調節する転写因子について,詳しく調べられてきました. これに対して,RNAポリメラーゼに直接に結合して働きを制御する転写因子については,その仕組みがほとんど調べられていませんでした.

RNAポリメラーゼは,複数のタンパク質からなる巨大な複合体です. 我々は,RNAポリメラーゼに直接に結合する転写因子による遺伝子発現(転写)制御の仕組みを理解するため,この巨大なRNAポリメラーゼにさらに転写因子が結合した瞬間の形をとらえ,転写因子の作用メカニズムを解明することを目指しました. このように複雑なタンパク質の立体構造解析は非常に困難で,今日までにその成功例はごく僅かしかありません. 特に,抗生物質の標的となりうる細菌のRNAポリメラーゼに転写因子が作用する状態の構造については現在まで全く報告がありませんでした.

2. 研究目的
RNAポリメラーゼに直接に結合して働きを阻害する転写因子について,その仕組みを明らかにすることを目的としました. 今回,我々は,細菌のRNAポリメラーゼを阻害することが知られているGfh1という転写因子に着目し,立体構造に基づく阻害の仕組みの解明を試みました.
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2010-47.html

tRNAにわざと誤ったアミノ酸を付加して修正する巧妙な仕組みを解明 -tRNAに直接に付加できないアミノ酸を利用するためのリスク管理機構を発見-(2010/9/30)
微生物から動植物をはじめとする地球上の生物は、遺伝情報をもとにアラニン、グリシン、グルタミン酸など20種類のアミノ酸を材料にタンパク質を合成しています。生命の根幹となるこの重要な反応は、DNAに書き込まれている遺伝情報が、まず伝令RNA(mRNA)へと転写され、タンパク質合成工場の役目を果たすリボソームで、mRNA上の3つの文字の並び(コドン)の情報が1つのアミノ酸に変換されて、アミノ酸を連ねたタンパク質ができあがります。

mRNA上のコドンを1つのアミノ酸に対応させるのが転写RNA(tRNA)で、20種のアミノ酸ごとに存在しています。ヒトを含む真核生物などでは、20種のアミノアシルtRNA合成酵素(aaRS)の働きで、アミノ酸とtRNAが正しいペア(アミノアシルtRNA)を生成します。アミノ酸の一種であるグルタミンをtRNAに付加するaaRSが存在しない真正細菌、古細菌では、間違ったペアをつくり修正するという異質なメカニズムがあることが分かっていましたが、正しいペアのリスク管理の仕組みは謎のままでした。

生命分子システム基盤研究領域と東京大学大学院理学系研究科の研究グループは、 アミノ酸のグルタミンを運ぶ役割のあるtRNAとそれに働く2種類の酵素が巨大複合体の「グルタミン・トランシアミドソーム」をつくり、第1酵素がtRNAにグルタミン以外のアミノ酸を付加し、第2の酵素がこの誤りを素早く修正してグルタミンに変換するという巧妙なメカニズムを持つことを解明しました。

生命の重要な役割を担うタンパク質の品質管理や比較的新しい機能を持つアミノ酸をタンパク質に組み込む基盤技術を提供すると期待されます。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2010/100930_2/detail.html
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2010/100930_2/index.html

細胞内シグナル伝達経路の信号処理特性を解明(2010/7/28)
-薬剤が意図したものと逆の応答を引き起こし得るメカニズムを解明-

発表概要
細胞の成長を制御するAkt経路におけるシグナル(信号)の伝わり方を計測したところ、強い一過性のシグナルよりも弱い持続性のシグナルの方が下流に効率的に伝わる現象を発見した。 コンピュータシミュレーションと実験を組み合わせて解析した結果、この直感に反する現象はAkt経路のローパスフィルタ(低周波通過フィルタ)(注1)特性によって生じていることが明らかになった。 またこの特性によって、ある種の薬剤を投与した場合に、意図した作用とは逆に下流の応答が増加することが分かった。

発表内容

図1:

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図2:

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図3:

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これまでの研究でわかっていた点
細胞外のホルモンや成長因子、栄養などの環境変化の情報は受容体などを介して細胞内に伝わっていき、最終的に細胞の応答を導く。 細胞内に情報を伝える経路はシグナル伝達(注2)経路と呼ばれ、一般に多数の分子からなる連鎖的な生化学反応によって構成されている。 本研究の対象であるAkt経路はシグナル伝達経路の一つで、細胞の成長を制御することが知られており、この経路の異常がガンの原因になることは分かっていた。

近年の分子生物学の進展により、Akt経路を構成する分子やそれらの相互作用についての知見は蓄積されてきた。 しかし、経路に伝わるシグナルのダイナミクスやその特性、具体的には分子活性の時間パターンの伝搬とその制御機構についてのシステム生物学(注3)的な解析は進んでいない。 そのため、一般に分子や遺伝子のシグナルの最大強度が下流に情報を伝えていると直感的に理解されてきた。

この研究が新しく明らかにしようとした点
従来の生命科学の分野では、刺激が強い時は強い応答が、弱ければ弱い応答が引き起こされると直感的に理解されている。 今回我々は弱い刺激であっても持続する場合に、強い刺激であっても一過性である場合より、強い応答を引き起こす逆転現象をAkt経路の分子活性の計測時に発見した。 そこでこの直感的には理解出来ない現象の背後にあるメカニズムを解明するために、実験結果を再現するシミュレーションモデルを作成し、Akt経路の信号処理特性を解析した。

ラジオ回路とシグナル伝達経路におけるシグナル(信号)の入出力関係を対比することで、シグナル伝達経路の信号処理特性を理解する枠組みを説明したい(図1)。 原始的なラジオ回路は、電波の中からラジオ局の周波数の信号を取り出す回路(コンデンサーとコイル)とラジオ局の周波数の信号から音声シグナルを取り出す素子(ダイオード検波器)、音声を出力するイヤフォンからなる。 ラジオの信号処理を理解するために回路を構成する個々の素子の特性を知ることは非常に重要であるが、回路に流れる信号の伝わり方を知らなければ、特定の周波数に載った信号だけを抽出して音を出力するというラジオの動作原理は理解できない。 生物学においては、経路を構成する分子の特徴や分子間相互作用は個別に調べられてきたが、経路に流れるシグナルの伝わり方はあまり調べられていないのが現状である。 そのため、シグナル伝達経路が、細胞の外部環境の変化に由来するシグナルをどのように処理して細胞の応答を導くのかは不明である。 本研究はこの動作原理を明らかにするために、実験結果を再現するシミュレーションモデルを作成し、Akt経路の信号処理特性を解析した。

そのために新しく開発した方法、機材等
Akt経路の信号処理特性を解析するために、通信工学などの分野で使われている周波数応答解析を応用して、Akt経路の特性を解析した。 具体的にはまず、実験によってダイナミクスを計測し、実験結果を再現するシミュレーションモデルを作成した。 その後シミュレーションで得られる分子活性の時間パターンをフーリエ変換によってサイン波に分解し、周波数ごとの振幅の強度を得た(振幅スペクトル)。 下流の振幅スペクトルを上流の振幅スペクトルで割ることで、周波数ごとのシグナルの伝達効率を求めたのである。(図2)

この研究で得られた結果、知見
シグナル強度の逆転
我々はPC12細胞に上皮成長因子(EGF)を様々な時間パターンで投与し、上皮成長因子受容体(EGFR)からAkt を介して下流のS6まで伝わるシグナル伝達経路のダイナミクスとその特性を調べた。 そしてEGFRの強い一過的な活性化よりも弱い持続的な活性化の方がS6の強い応答を引き起こし、上流と下流でシグナルの強度が逆転していることを発見した。

ローパスフィルタ特性
この直感に反する挙動を理解するため、我々は実験で観察されたダイナミクスを再現するシミュレーションモデルを作成し、工学でよく使われる周波数応答解析を応用して、Akt経路の特性を解析した。 その結果、Akt経路がローパスフィルタ(低周波成分をよく通す) という信号処理特性を示すことを発見した。 上流の強い一過的なシグナルは主に高周波成分、弱い持続的なシグナルは主に低周波成分で構成されているため、ローパスフィルタ特性によって弱い持続的なシグナルが選択的に下流へ伝えられてS6の強い応答を引き起こし、シグナルの強度の逆転が起きていた(図3)。

抗がん剤投与時にもシグナル強度が逆転
また我々はAkt経路のローパスフィルタ特性によって、ある種の抗癌剤(EGFR阻害薬) を投与した場合に投与しない場合よりもS6の応答が増加することを予測した。 この予測を実験により確認し、EGFR阻害薬の作用を組み入れたモデルによって特徴を再現した。

研究の波及効果
•従来の生命科学におけるシグナルの伝わり方の直感的理解を覆すものである。
•今回発見したローパスフィルタ特性は一般的な生化学反応において観察されうる特徴なので、薬剤の効果や遺伝子の働きの解釈に一石を投じる。具体的にはシグナルの時間パターンを観察せずに、ピークの値の大小関係だけで下流の応答を解釈してしまうことの危険性をこの研究は示唆している。
今後の課題
•今回開発した解析手法を様々な生命現象に適応し、生命現象の仕組みの理解とその制御に役立てたい。
•より精緻なシミュレーションモデルを作れば、薬剤の効果や副作用についても正確に予測できるようになるかもしれない。
論文の参照情報
この研究成果のもととなった研究経費
JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)研究領域「生命システムの動作原理と基盤技術」
研究課題「シグナル伝達機構の情報コーディング」
発表雑誌
出版社:アメリカ科学振興協会(AAAS)、雑誌名:Science Signaling(サイエンス・シグナリング)、2010年7月27日号

論文タイトル
“Decoupling of receptor and downstream signals in Akt pathway by its low-pass filter characteristics”
(Akt経路のローパスフィルタ特性による受容体と下流の信号強度の逆転)
著者名・所属
藤田一広1、豊島有2、宇田新介2、尾崎裕一2、久保田浩行2、黒田真也2
1:東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻
2:東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻
用語解説
注1 ローパスフィルタ(低周波通過フィルタ、Low-pass filter)
高周波成分はあまり通さず、低周波成分を効率よく通すフィルタのこと。低周波通過フィルタとも呼ぶ。 ↑
注2 シグナル伝達(Signal transduction)
細胞外のホルモンや成長因子、栄養などの環境変化の情報は受容体などを介して細胞内に伝わっていき、最終的に細胞の応答を導く。細胞内に情報を伝える経路はシグナル伝達経路と呼ばれ、一般に多数の分子からなる連鎖的な生化学反応によって構成されている。 ↑
注3 システム生物学(Systems Biology)
生命現象をシステムとして理解することを目的とした生物学の一分野。 
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2010-29.html

木のミクロ構造を制御するメカニズム解明(2010/6/18)
発表概要
東京大学大学院理学系研究科の福田裕穂教授のグループは、木のミクロ構造が作り出されるメカニズムを世界で始めて解明しました。この解明により、木材の改良や新たな木質素材の生産などへの道が拓かれました。

発表内容

図1:
(A)癌細胞のように増殖を続けるシロイヌナズナの培養細胞(左)が特殊な転写因子の働きによって木質細胞に分化する(右)。
(B)木質細胞では、微小管がレールとなり複雑な構造の細胞壁が作られる。MIDD1が局所的に微小管を破壊することによって複雑な細胞壁パターンが生まれる。

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木材は陸上バイオマスの大きな部分を占め、石油や石炭などの化石資源に代わるエネルギーまた素材用のバイオマス資源として、人類に欠かせないものです。この木材は柔軟で丈夫な素材であり、木質細胞が作り出す細胞壁が何層にも積み重なって作られています。木質細胞の細胞壁には無数の微小な孔が空いており、このような細胞壁の複雑な構造が、木材に柔軟で丈夫な性質をもたらしています。しかしながら、このような細胞壁の構造がどのようにして作られているのか、これまで明らかにされていませんでした。今回、東京大学大学院理学系研究科の福田裕穂教授・小田祥久特任研究員らのグループは、このような木のミクロ構造が作り出されるメカニズムを世界で始めて解明しました。

同グループは癌細胞のように限りなく増殖するシロイヌナズナ(注1)の培養細胞に、木質細胞の分化を制御する特殊な転写因子(注2)を導入し、その発現レベルを巧妙に操作することによって、木質細胞をいつでも好きなときに、また好きなだけ作り出すことに成功しました(図1A)。この技術では、入れる遺伝子を変えることにより違った細胞壁パターンの木質細胞を作ることができます。

この木質細胞の生産技術を利用して、木質細胞で働く遺伝子群の働きをマイクロアレイ法(注3)によって網羅的に調査しました。その結果、木質細胞の細胞壁パターンを作り出す上で必須となる遺伝子を発見し、MIDD1(注4)と名付けました。MIDD1タンパク質は、局所的に細胞壁の合成を抑制する因子であることが分かりました。その結果として、このタンパク質の分布の違いが、細胞壁のパターンを変えることになります(図1B)。高感度の蛍光顕微鏡下で連続観察をすることにより、MIDD1タンパク質は特定の細胞膜領域と結合しながら、一方で、細胞壁合成のレールとなる微小管(注5)に結合し、その近傍の微小管だけを破壊することが分かりました(図1B)。そのため、局所的に細胞壁の合成が抑制され、細胞壁に無数の微小な孔が作られることが明らかとなりました。微小管が細胞壁の構造を制御していることは、古くから知られていましたが、局所的に微小管を破壊することによって細胞壁の構造を制御するというメカニズムは今回初めて明らかになったものです。これにより、細胞壁のパターンを人為的に制御するための新しい道具を手に入れたと言うことができます。本研究の成果は、革新的な木質細胞の生産技術と共に、今後の植物科学の発展に大きな影響を与えると期待されます。また、このメカニズムを応用し、MIDD1の働きを人為的に操作することで、木材のミクロ構造を変化させ、新たな木質素材を開発する道が拓けます。この成果は、米科学雑誌、Current Biology誌に掲載される予定です。

本研究は、文部科学省「科学研究費補助金19060009」「日本学術振興会基盤研究A 20247003」「日本学術振興会特別研究員奨励費02718」などの支援を受けて行われました。

発表雑誌
Cell Press カレントバイオロジー(Current Biology) オンライン版(米国東部時間6月17日(木)午後12時(正午))に掲載予定。

用語解説
注1 シロイヌナズナ
双子葉植物のモデル植物。高等植物の中で最初に全ゲノムが解読され、世界中の植物科学研究に利用されている。 ↑
注2 転写因子
DNAに結合し、遺伝子の発現を制御するタンパク質の総称。 ↑
注3 マイクロアレイ法
2万個以上もの遺伝子について、それらが働いているかどうかを一度に解析する技術。 ↑
注4 MIDD1
Microtubule depletion domainの略。この研究の初期において、MIDD1が微小管(microtubule)の消失した領域(depletion domain)に蓄積していたことからこのように名付けられた。 ↑
注5 微小管
チューブリンと呼ばれるタンパク質が重合することによってつくられる直径24 nmの繊維状の構造。植物細胞では細胞膜直下に多数の微小管が発達している。細胞壁の主成分であるセルロース微繊維はこれらの微小管に沿って合成されてゆく。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2010-21.html

「ファイ中間子」の質量が高密度下での減少を確認(2006/12/7)
 理化学研究所、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構、京都大学、東京大学大学院理学系研究科附属原子核科学研究センターで構成される研究チームは、「ファイ中間子」の質量が原子核内部という高密度下で減少することを世界で初めて測定した。
 今回の研究により、高密度状態下での素粒子の質量減少が実験的に確立された。これは素粒子の質量獲得機構の理解に大きく貢献する実験結果。
http://www.riken.go.jp/
http://www.kyoto-u.ac.jp/