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九州大学

受容体と結合した麻疹ウイルスの構造を世界で初めて解明(2011/1/5)
-抗ウイルス薬の開発やウイルスの細胞侵入機構の解明につながる-

概 要
九州大学大学院医学研究院ウイルス学分野 柳 雄介 教授の研究グループは、北海道大学大学院薬学研究院 前仲 勝実 教授のグループとの共同研究で、麻疹ウイルスが細胞に侵入する際に重要な役割をするH タンパク質と細胞上に存在する受容体SLAM の複合体を結晶化し、X 線を用いて立体構造を明らかにしました。この成果は、膜融合によるウイルスの細胞侵入機構の解明に加え、抗麻疹ウイルス薬の開発につながる重要な情報を提供します。本研究は、平成23年1 月10 日(月)午前3時(日本時間)公開の米国科学誌Nature Structural & Molecular Biology (ネイチャー構造・分子生物学)オンライン版で発表されます。

背 景
麻疹(はしか)は、未だに世界中で年間数千万人の患者と数十万人の死者を出している重要なウイルス感染症です。また、頻度は少ない(感染者の数万人に1人)ですが、合併症として亜急性硬化性全脳炎(SSPE)とよばれる難病を起こすことが知られています。わが国は先進国の中でも例外的に麻疹患者が多いため、政府はワクチン接種の推進により、2012 年までに麻疹を排除することを目指しています。最近、麻疹ウイルスは病原体としてだけでなく、がん細胞に特異的に感染するよう改変することにより、がん治療への応用が試みられ、注目を集めています。柳教授の研究グループは、麻疹ウイルスが免疫細胞の表面に存在するSLAM と呼ばれる分子を受容体として細胞に感染することを、2000 年に明らかにしました。また、2007 年には受容体と結合する麻疹ウイルスH タンパク質の構造を明らかにしました。

内 容
麻疹ウイルスのH タンパク質は、受容体と結合することにより、ウイルスの細胞侵入に重要な働きをする一方、宿主の免疫応答で作られる抗体の主要な標的となる分子でもあります。今回、柳教授の研究グループは、受容体SLAM と結合した状態のH タンパク質を大量に精製した後、結晶化し、X 線を用いてその3次元構造を明らかにすることに成功しました。
H タンパク質は、6 つの羽根を持つプロペラ状の構造をしており、その特定の部分でSLAM と結合していました。また、H タンパク質上でSLAM と結合している領域、すなわちウイルスが細胞に感染するために重要な領域の周辺が、抗体の標的にもなっていることが分かりました。そのため、麻疹ウイルスは抗体から逃れるような変異を起こすことができない(そこに変異が起こると細胞に感染できなくなり、ウイルスは生存できない)ので、インフルエンザウイルスやヒト免疫不全ウイルス(HIV)と違って、ワクチンが非常に有効であると考えられます。
さらに、今回の研究で、H タンパク質は2 種類の四量体(4 個の同一分子が集合したもの)構造をとることが明らかになりました。麻疹ウイルスはパラミクソウイルスというグループに含まれますが、このグループのウイルスがどのようにして膜融合を起こして細胞に侵入するかは長い間不明でした。柳教授らの研究から、ウイルスが受容体に結合することにより、H タンパク質の四量体構造に変化が起こることが膜融合の引き金になることが強く示唆されました。

効果と今後の展開
麻疹には有効なワクチンは存在しますが、抗ウイルス薬はまだ開発されていません。また、難病であるSSPE には有効な治療法がありません。H タンパク質と受容体SLAM の複合体の構造が解明されたことにより、受容体との結合を標的とした抗ウイルス薬の設計が可能となりました。また、麻疹ウイルスを含むパラミクソウイルスの膜融合機構の解明は、ウイルスの細胞侵入の理解だけでなく、これらパラミクソウイルスに対する抗ウイルス薬開発への重要な情報を提供すると考えられます。柳教授のグループは、麻疹ウイルスによる膜融合と細胞侵入機構について、さらに詳細な研究を続ける予定です。
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2011/2011-01-05.pdf

脳内でのアミノ酸L-セリンの生合成はグルタミン酸神経情報伝達に必須であることを発見(2010/12/21)
概 要
九州大学大学院農学研究院及びバイオアーキテクチャーセンターの古屋茂樹教授と薬学研究院の濵瀬健司准教授らの研究グループは、理化学研究所脳科学総合研究センター、北海道大学、宇都宮大学、埼玉大学、Univ. Wisconsin(米国)と共同で、脳内でのL-セリン生合成が、主要興奮性伝達物質グルタミン酸のNMDA 型受容体の活性化因子であるD-セリンの維持と同受容体の機能に不可欠であることを初めて解明しました。この研究成果は2010 年12 月24 日公開の米国生化学・分子生物学会誌 (J. Biol. Chem) のオンライン版に掲載されました。
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-12-24-01.pdf

肝臓における脂肪代謝の新たな制御機構を解明(2010/11/29)
(メタボリック症候群における脂肪肝に対する治療への応用に期待)

JST 課題解決型基礎研究の一環として、九州大学 生体防御医学研究所の中山 敬一教授らは、肝臓における中性脂肪注1)の合成が、ユビキチン化酵素注2)であるFbxw7(エフ・ビー・エックス・ダブリュー・セブン)によって恒常的に制御されていることを明らかにしました。
Fbxw7は、これまで色々ながん遺伝子たんぱく質注3)を分解する「がん抑制遺伝子注4)」として知られていましたが、一方で、脂肪合成に重要な役割を担っているSREBPというたんぱく質の分解にも関わることが最近の報告で示唆されていました。しかし、実際にFbxw7が生体内でどのように脂肪代謝に関わっているかを調べた研究はこれまでありませんでした。
そこで本研究チームは、肝細胞におけるFbxw7の役割について研究を行いました。
マウスの肝臓から人工的にFbxw7を消失させると、わずか3週間で激しい脂肪肝が発症し、その後は脂肪肝炎や肝線維症につながることが分かりました。この異常は、人間のメタボリック症候群注5)の患者で起こる肝臓の病変である非アルコール性脂肪肝炎(NASH注6))とよく似ています。その原因は、Fbxw7が欠損しているために、中性脂肪の合成を司るSREBPたんぱく質がマウスの肝臓で異常に蓄積していることでした。つまり、正常状態ではFbxw7がSREBPたんぱく質を恒常的に分解することでこれを低いレベルに抑え、肝細胞での過剰な中性脂肪の合成を抑制していたのです。
また本研究では、Fbxw7はNotchというたんぱく質を分解することで、肝細胞の正常な分化を導く役割を担っていることも明らかにしました。
本研究はFbxw7が肝臓における中性脂肪の合成を生体内で恒常的に制御していることを示した初めての報告であり、今後、その機能を制御することで脂肪肝や脂肪肝炎に対する治療への応用が期待されます。
本研究成果は、2010年12月1日(米国東部時間)に米国科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」のオンライン速報版で公開されます。
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-11-29-02.pdf

脳の非対称性は正常な記憶機能に欠かせい(2010/11/19)
慶應義塾大学の渡辺茂教授のグループは、九州大学の伊藤功准教授のグループと共同で、脳の非対称性に異常のある(左右の脳がともに右脳の性質を示すように変化した)突然変異マウスでは、空間性の記憶機能が障害されることを明らかにしました。これらの結果は、脳の左右の非対称性が正常な記憶機能に欠かせないことを示唆しています。

九州大学の伊藤功准教授のグループは、マウスの記憶を司る海馬という脳の部位が、正常なマウスでは左右の脳で異なる性質を示すのに対して、この突然変異マウスでは左右どちらの脳も右型の性質を示す(右側異性)ことを発見しました。今回の研究では新たに、そのような脳機能の非対称性が、正常な記憶機能には欠かせないものであることが分かりました。

本研究成果は、online科学誌「PLoS ONE」に平成22年11月17日付けで掲載されました。
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-11-19.pdf

世界初 化学合成したペプチドからウイルスの殻構造を組み上げることに成功(2010/11/12)
~ 新規ナノテク材料や医療としての応用 に期待 ~

概要
九州大学、北九州市立大学の研究グループ(代表:九州大学大学院工学研究院応用化学部門松浦和則准教授)は、化学合成したペプチドから約40 nmのウイルスの殻(キャプシド)構造を組み上げることに世界で初めて成功しました。球状の植物ウイルスから遺伝子を除いた殻(キャプシド)構造は、決まった大きさのナノ空間であることから、ナノ物質の反応器や運び手として利用する研究が国内外で盛んに行われています。しかし、これまで、ウイルスのキャプシド構造を得るには、ウイルスの遺伝子をバクテリア内に導入して生産させる必要がありました。本研究では、遺伝子やバクテリアを用いない完全化学合成によって、ウイルスキャプシドを構築することに成功しました。今回、ウイルスの殻構造を簡単なペプチドから構築できたことで、様々な機能性ウイルスキャプシドを人工的に創成する道が拓けたと言えます。このペプチドからなるナノカプセルに適切な化学修飾を施すことにより、ナノ物質合成のための反応器や、医薬品の運び手、人工ワクチンを創成するための足場材料として応用できるものと期待されます。
本成果は、ドイツの国際的に著名な科学誌である「Angewandte Chemie International Edition(応用化学誌国際版)」のオンライン速報版で近日中に公開されます。なお、本研究は、科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業さきがけ「構造制御と機能」領域 (研究総括:岡本佳男)ならびに、九州大学グローバルCOE プログラム「未来分子システム科学」(拠点リーダー:君塚信夫)の研究の一環として行われました。
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-11-12-04.pdf

蛋白質の立体構造形成を促進する因子の構造解析に成功(2010/9/9)
—ヒト細胞における蛋白質品質管理機構の仕組みの理解に一助、神経変性疾患・免疫不全・糖尿病などの疾病の成因解明に期待—
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2010/2010-09-09-03.pdf

2009年度 大学・研究機関 特許資産規模ランキング、広島大学が7位に急浮上(2010/5/31)
株式会社パテント・リザルトはこのほど、「2009年度 大学・研究機関 特許資産の規模ランキング」を集計いたしました(※1)。このランキングの特徴は、特許の注目度を指数化する「パテントスコア」を用いることで、単純な件数比較では見られない、質的な観点を取り入れた評価を行っている点にあります。各大学・研究機関が保有する特許資産の強さを、質と量の両面から総合的に評価しました。

 これによると、上位3機関は1位 産業技術総合研究所(産総研)、2位 科学技術振興機構(JST)、3位物質・材料研究機構(物材機構)と前年と同じでした。これらの機関は保有特許件数が多く、「量」の面で4位以下との差を付けています。ただし、1件当たりで見るとこれら3機関の得点は高くなく、注目度の低い特許も多いことが伺えます。
 最も順位を上げたのは、7位の広島大学です。同大学の保有特許件数は、137件と必ずしも多くはありませんが、質の面で得点を上げ、上位にランクインしました。同大学の注目度の高い特許には、「データの保持特性が高い半導体メモリ」に関する技術や「高効率のデータ圧縮処理」に関する技術、「癌細胞の増殖を抑制する方法」に関する技術などがあります。 
 このほか、10位の九州大学、17位の東京大学などが、昨年度から大きく順位を上げました。
 上位20機関中で1件当たりの特許資産の規模が最も高いのは九州大学、次いで、岡山大学、東北テクノアーチとなっています。

【大学・研究機関 特許資産規模ランキング】
下記URL参照
【大学・TLO 特許資産規模ランキング】
下記URL参照

(※1)【ランキングの集計について】
 特許資産の規模とは、各大学・研究機関などが保有する有効特許を資産としてとらえ、その総合力を判断するための指標です。有効特許1件ごとに特許の注目度を評価する「パテントスコア」を算出した上で、スコアの高低が明確になるように重み付けを行い、それに特許失効までの残存期間を掛け合わせて、各機関ごとに合計得点を集計しています。パテントスコアの算出には、特許の出願後の審査プロセスなどを記録化した経過情報を用いています。経過情報には、出願人による権利化に向けた取り組みや、特許庁審査官による審査結果、競合出願人によるけん制行為などのアクションが記録されており、これらのデータを指数化することで、出願人、審査官、競合出願人の3者が、それぞれの特許について、どれくらい注目しているかを客観的に測ることができます。2010年3月末時点において有効特許を1 件以上保有している大学・研究機関を対象に集計しました。
http://www.patentresult.co.jp/news/2010/05/20097.html

植物細胞中での新規な大量物質輸送装置 分泌小胞塊 (Secretory Vesicle Cluster) の発見 植物性バイオマス増産への応用に期待(2009/4/24)
植物は生長する際に、ゴルジ装置注1)で合成されるペクチン注2)等の多量の細胞壁注3)成分を、細胞外へ分泌注4)します。我々は未解明であったこれら物質のゴルジ装置からの輸送機構を解析し、この輸送に関わる細胞内装置が、植物細胞に特徴的に見出される分泌小胞の連なった構造であることを世界で初めて発見し、それを分泌小胞塊(SVC)と命名しました。現在進行中のSVCの形成機構の解析を通じて、将来SVCの形成能力と細胞壁成分合成能力の増強を、遺伝子組換えにより植物に付与することにより、糖質バイオマスの高生産能を持った植物の創出が可能になると期待されます。

この研究成果は、米国科学雑誌 「The Plant Cell」のオンライン版 (preview) に、2009年4月17日に公開されました。なお、本成果は、文部科学省及び日本学術振興会からの、科学研究費補助金によって得られた成果です。
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2009/090424/index.html

白血球の一種「好中球」が感染源に向けて動く際の基本原理を解明 (炎症性疾患の治療応用に期待)(2009/3/27)
 JST基礎研究事業の一環として、九州大学生体防御医学研究所の福井 宣規 教授らは、白血球の一種・好中球注1)が細菌などの感染源に向かって動く際、2種類のリン脂質注2)を使ってDOCK2というたんぱく質の細胞内での位置を制御し、細胞の形態を変化させ、効率よく運動できるようにしていることを突き止めました。
 細胞が動く際には、進行方向に向かって仮足を伸ばすことが知られています。福井教授らは以前、DOCK2がRac注3)という細胞内シグナル伝達因子を活性化し、好中球の仮足形成に重要な役割を演じることを明らかにしました。しかし、DOCK2の細胞内局在を制御するメカニズムは不明でした。
 このメカニズムについて、本研究グループは今回、緑色蛍光たんぱく質(GFP)を融合することによってDOCK2の細胞内での動きを可視化できるようにした好中球を用いて解析し、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)というリン脂質が産生されるとDOCK2が細胞膜に引き寄せられ、続いてホスファチジン酸(PA)という別のリン脂質を介してDOCK2が局所に集積するという、2段階の制御機構が働いていることを世界で初めて明らかにしました。
 好中球は生体防御において重要な役割を演じていますが、一方で自己免疫疾患やアレルギー疾患の発症・増悪にも関わっています。今回の成果は、このような炎症性疾患の新しい治療法の開発に役立つことものと期待されます。
 本研究成果は、2009年3月26日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Science」のオンライン速報版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題と、文部科学省ターゲットタンパク研究プログラムおよびゲノムネットワークプロジェクトによって得られました。
 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST) 研究領域 : 「アレルギー疾患・自己免疫疾患などの発症機構と治療技術」
(研究総括:菅村 和夫 東北大学大学院医学系研究科 教授)
研究課題名 : 細胞骨格制御シグナルを標的とした免疫難病治療の新戦略
研究代表者 : 福井 宣規(九州大学生体防御医学研究所 教授)
研究期間 : 平成20年10月~平成26年3月
 JSTはこの領域で、アレルギー疾患や自己免疫疾患を中心とするヒトの免疫疾患を予防・診断・治療することを目的に、免疫システムを適正に機能させる基盤技術の構築を目指しています。上記研究課題では、細胞骨格制御に重要な役割を演じるDOCK2をはじめとするCDMファミリー分子群の機能・構造・シグナル伝達機構を包括的に解析し、免疫難病の新しい治療法を開発することを目的としています。

<研究の背景と経緯>
 好中球は感染局所に速やかに集積し、病原微生物を貪食し、活性酸素を産生することでその除去に働く、いわば生体防御の最前線で機能する白血球です。好中球は感染源を感知すると、その方向に向かって仮足を伸ばします。この仮足は、細胞骨格であるアクチン繊維注4)により構成されており、アクチン繊維が網目状の構造を形成していくことで、仮足の伸張と細胞の推進力を生み出していることが知られています(図1)。このようなアクチン繊維の再構成は、細胞内で「分子スイッチ」として働くRacというたんぱく質により制御されており、このRacと協調して機能するのが、感染源からの刺激を受けて産生されるホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)というリン脂質です。九州大学生体防御医学研究所の福井 宣規 教授らは以前、好中球においてRacのスイッチを“on”にする分子がDOCK2であることを突き止め、DOCK2が細胞の進行方向前端(先導端)に集積することで局所的にアクチン繊維の再構成を促すことを明らかにしました。しかし、DOCK2の細胞内局在を制御するメカニズムは不明でした。

<研究の内容>
 これまで多くの細胞において、Racのスイッチを“on”にする分子はPIP3によって先導端にリクルートされ、Racの活性化を局在化させることで仮足を形成すると考えられてきました。しかし、本研究グループの福井教授と同研究所の錦見 昭彦 助教らは今回、PIP3産生に必要なPI3キナーゼγと呼ばれる酵素が欠損した好中球を用いてDOCK2の局在を検討し、PIP3を産生できない好中球ではDOCK2の細胞膜への移行が部分的に障害されるものの、最終的にDOCK2が先導端に集積し、仮足が正常に形成されることを見いだしました(図2)。このことから、DOCK2の最初の細胞膜への移行はPIP3によって担われているものの、これに続く先導端への集積はPIP3以外の分子によって制御されていると考えました。
 そこで、この分子の同定を目的に研究を行った結果、ホスファチジン酸(PA)というリン脂質の産生を担うホスホリパーゼD(PLD)という酵素の活性を阻害すると、DOCK2の先導端への集積と仮足の形成が障害されることが分かりました(図3)。DOCK2を発現する好中球にPAを添加するとアクチンの重合が起こりますが、DOCK2を欠損した好中球ではこのような変化が起こりません(図4)。このことから、PAはDOCK2を介してアクチン繊維の再構成を制御していると考えられます。さらに、DOCK2のPAと結合する領域を特定し、この領域に変異を入れてPAとの結合能を失わせたDOCK2では、仮足を形成する能力が低下し、好中球の運動を引き起こせないことも実証しました。
 これらの結果から、PIP3とPAという2種類のリン脂質が、順序立てて産生され、DOCK2を適切な時期に適切な位置に導くことにより、好中球が仮足を伸張して運動する際に必要なアクチン繊維の再構成を時間的・空間的に制御していることが明らかになりました(図5)。

<今後の展開>
 好中球は生体防御において重要な役割を演じていますが、一方で自己免疫疾患やアレルギー疾患の発症・増悪にも関わっています。今回の成果は、このような炎症性疾患の新しい治療法の開発に役立つものと期待されます。また細胞運動は、免疫応答以外にも器官形成や創傷治癒、がんの転移と深く関わっていることから、このような生理的あるいは病的現象の理解にも貢献する可能性があります。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090327/index.html

イノベーション創出基礎的研究推進事業(発展型) 「抗疲労作用のある新規高アントシアニン茶品種育成と利用食品開発」 プロジェクトはじまる!(2009/1/19)
ポイント
 本研究によって、安心で科学的根拠の明らかな疲労やストレスの軽減に効果のある新品種茶が育成され、消費者に提供できるようになります。
農研機構 野菜茶業研究所(三重県津市、所長 望月龍也)、(株)日本製紙グループ本社(本社 東京、社長 芳賀義雄)、国立大学法人九州大学(総長 有川節夫)、国立大学法人京都大学(総長 松本 鉱)、アサヒビール(株)(本社 東京、社長 荻田 伍)は、農研機構 生物系特定産業技術研究支援センターの「イノベーション創出基礎的研究推進事業(発展型)」において、「抗疲労作用のある新規高アントシアニン茶品種育成と利用食品開発」プロジェクトに平成20年度から3年間取り組みます。

今後、新たな高アントシアニン茶の育成・栽培試験を行うとともに、茶葉に含まれる機能性成分の研究を行い、今までにない新しいお茶を提供できるよう産学官で連携しながら研究をすすめてまいります。

≪背景・経緯≫

高齢化が進む中、健全な食生活による健康寿命の延伸や生活習慣病リスクの高い人を対象とした高機能性食品に対する国民の期待が高まっており、食品成分の機能性解明や機能性食品開発が大きな課題となっています。平成14年度厚労省国民栄養調査では、日常生活でストレスを感じる者は80.5%であり、非常な勢いで増加しています。連続的な疲労・ストレス状態は、血圧上昇、不眠、関節痛、頭痛、肩こり、食欲不振、免疫機能低下、消化性潰瘍、心疾患、脳血管障害、高血圧、高脂血症、心身症などの生活習慣病を引き起こします。 これまで我々は、高アントシアニン茶である紅花や茶中間母本農6号がヒト試験にて、眼精疲労、ストレス軽減効果を持っていることを明らかにし、上記2品種の交雑後代から栽培形質の優れた高アントシアニン茶系統を選抜し、苗の光独立培養技術を確立してきました。 本研究では、それらの技術シーズを活かし、安心で科学的根拠の明らかな新規抗疲労・ストレス高アントシアニン茶品種、飲食品素材の開発・提供を行い、疲労・ストレス起因生活習慣病の予防、茶産地の活性化・新興、新食品産業の振興をはかることを目的としています。

≪内容・意義≫

野菜茶業研究所が育成中の新規高アントシアニン茶系統を用いて、機能性成分の単離・同定、疲労・ストレスのバイオマーカーの解明、機能性成分の共存効果解明、機能性成分と代謝成分の安全性評価や適正摂取量の設定、作用メカニズムの解明、動物及びヒトでの臨床評価を行うとともに、短期成園化技術を確立しつつ、新規抗疲労・ストレス性高アントシアニン茶系統の栽培特性・茶葉特性の解明と品種登録申請、飲食品への応用をはかる食品素材化技術の開発を行うことで、抗疲労・ストレス効果を有する食品素材の開発をめざします。

≪今後の予定≫

平成20年度~22年度の3年間に、野菜茶業研究所では「抗疲労・ストレス効果をもつ茶品種育成と有効成分利用技術の開発」、(株)日本製紙グループ本社では「抗疲労・ストレス茶品種の短期大量生産技術の開発」、九州大学では「抗疲労・ストレス茶成分の作用機作の解明とその分子的基盤の確立」、京都大学では「抗疲労・ストレス成分の代謝吸収の解析と安全性の評価」、アサヒビール本社では「抗疲労・ストレス成分高含有茶品種を活用した新食品素材の開発」の研究課題を実施します。

≪成果、効果≫

本研究により安心で科学的根拠の明らかな抗疲労・ストレス効果のある新品種茶が育成され、消費者に提供できるようになります。そのことにより、疲労・ストレス起因生活習慣病の予防が期待され、新食品産業の創出、茶産地の活性化及び新興に大きく貢献できます。

≪用語の解説≫

I. イノベーション創出基礎的研究推進事業
民間企業、大学、独立行政法人等による生物系特定産業技術に関する研究開発の支援を行うためのツールの1つとして、我が国の生物系特定産業における特定の課題の解決や新たなビジネス分野の創出等、研究成果の最終的・具体的な活用先を念頭に置きつつ、基礎及び応用段階の研究を行おうとする産学官の研究チーム又は単独の研究者に対し、提案の公募を通じて研究を委託する事業。
イノベーション【innovation】

新機軸。革新。
新製品の開発、新生産方式の導入、新市場の開拓、新原料・新資源の開発、新組織の形成などによって、経済発展や景気循環がもたらされるとする概念。シュンペーターの用語。また、狭義には技術革新の意に用いる。

II. アントシアニン
植物に含まれる紫色の色素のことでポリフェノールの一種のフラボノイド系。主にワインの原料であるブドウや、ブルーベリー、カシス、紫芋、あずきなどに含まれている。 アントシアニンには目の疲れを癒したり、目の健康を維持する働きが大きいとされている。また、他のポリフェノール同様、強い抗酸化作用により、老化防止等の作用があるとされている。 アントシアニンを摂取する際はビタミンCと一緒に摂ると抗酸化作用が5倍になるとの報告もあり、ビタミンCとの同時摂取が望ましいとされる。
III. 光独立培養技術
植物の光合成能力を助長することにより、栄養分の糖を与えずに二酸化炭素と水と光で植物を培養する方法
IV. バイオマーカー
尿や血清中に含まれる生体由来の物質で、生体内の生物学的変化を定量的に把握するための指標(マーカー)となるものを指す。特定の疾病や身体の状態などに相関して量的に変動するので、疾病の診断や効率的な治療法の確立等が可能となると言われている。
http://vegetea.naro.affrc.go.jp/press/20090119/20090119.html

組織的連携・協力に関する協定を締結(2006/5/23)
 産業技術総合研究所と九州大学は、研究開発及び人材育成などに係わる相互協力が可能なすべての分野において、相互の連携・協力に関する協定を締結した。互恵の精神に基づき具体的な連携・協力を効果的に実施することにより、我が国の学術及び産業技術の振興に寄与することをめざす。
 産総研と九州大との間では、これまで、主としてエネルギー、標準・計測、ナノテクノロジー・材料、ライフサイエンスなどの先端.・基礎分野における研究協力を実施してきた。また人材育成では、大学院総合理工学府と連携大学院の制度により、若手研究者や技術者の育成と学生に対する教育を推進してきた。