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東北大学薬学部

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がん転移の原因タンパク質の構造解明(2011/1/17)
発表概要

脂質メディエーターリゾホスファチジン酸(LPA)の産生酵素であるオートタキシン(ATX)がLPAを産生するメカニズムを分子レベルで解明しました。 LPAはGタンパク質共役型受容体に作用し、多岐にわたる細胞応答を引き起こすことで、正常な発生過程における血管形成に必須な酵素タンパク質です。 一方で、がん、動脈硬化、肺線維症、神経因性疼痛など様々なヒト疾患に関与していることが知られており、創薬ターゲットとしても注目されています。 したがって、本研究成果は新規創薬開発の基盤となることが期待されます。 本成果は、「ターゲットタンパク研究プログラム」の一環として濡木理(東京大学大学院理学系研究科 教授)、青木淳賢(東北大学大学院薬学研究科 教授)、高木淳一(大阪大学蛋白質研究所 教授)、西増弘志(東京大学大学院理学系研究科 生物化学専攻 特任助教)により行われたものです。

発表内容
オートタキシン(ATX)は、血中に存在するリゾホスファチジルコリン(LPC)を加水分解し、リゾホスファチジン酸(LPA)を産生する酵素タンパク質です(図1)。 LPAは脂質メディエーターとして注目されているシグナル伝達分子であり、Gタンパク質共役型受容体(注1)であるLPA受容体に作用し、細胞増殖や遊走、創傷治癒、脳神経系の発達・分化、血管形成など様々な生命現象に関わっています。 一方で、元々ATXは悪性腫瘍から分泌され、自身の細胞運動性を促進する因子として発見されたタンパク質であり、実際に乳がん、肺がん、脳腫瘍など様々ながん細胞においてATXの発現が上昇していること報告されています。 また、がん以外にも、動脈硬化、肺線維症、神経因性疼痛など様々なヒト疾患に関与していることも報告されています。 しかし、ATXがLPAを産生する分子メカニズムの詳細はわかっていませんでした。

本研究では、マウス由来のATXと脂肪酸種の異なる5種類のLPAの複合体の立体構造をX線結晶構造解析(注2)によって決定しました(図2)。 その結果、これまで機能がよくわかっていなかったソマトメジンB様ドメイン(注3)とヌクレアーゼ様ドメイン(注4)が触媒ドメインの両側から相互作用し、触媒ドメイン中の疎水性ポケットの構造を安定化していることが明らかになりました。 5種類のLPA複合体構造中で、LPA分子の脂肪酸はそれぞれ異なる形に折れ曲がって疎水性ポケットに結合していることが明らかになりました(図3)。 これらの構造から、ATXが複数種のLPCを基質として切断する分子メカニズムが解明されました。 予想外なことに、活性部位に通じる疎水性チャンネルが存在し、そこに脂質分子が結合していることを発見しました(図4)。 疎水性チャネルを塞ぐような変異体酵素を作製し、解析したところ、LPA産生活性は保持されている一方で、細胞運動性促進活性が著しく低下していることを見出しました。 この結果から、ATXによって産生されたLPAは溶液中に遊離した後にLPA受容体に作用するのではなく、ATXのもつ疎水性チャンネルを通って効率的にLPA受容体へと受け渡されることが示唆されました。 すなわち、ATXはLPA産生酵素としてだけなく、LPA輸送タンパク質としても機能しているというモデルが提唱されました。

ATXはがん、肝硬変、肺線維症などの病態と深く関係することから、世界中の研究グループがATXの阻害剤の開発に取り組んできましたが、ATXの立体構造が不明だったこともあり、治療薬として使用可能な阻害剤は得られていませんでした。 本研究で得られた立体構造情報は、抗がん剤として有望な選択性と親和性に優れた阻害剤開発の基盤となることが期待されます。
発表雑誌
タイトル:Crystal structure of autotaxin and insight into GPCR activation by lipid mediators
(オートタキシンの結晶構造と脂質メディエーターによるGPCR活性化への知見)
著者:西増弘志,奥平真一,濱弘太郎,三原恵美子,堂前直,井上飛鳥,石谷隆一郎,高木淳一,青木淳賢,濡木理
米国科学誌「Nature Structural & Molecular Biology」2011年1月17日(日本時間)付でオンライン版に公開。
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2011-02.html

研究室取材 生命機能解析学分野(2010/5/10)
薬系進学2011で取材。
再生医療の実現に極めて有効な研究と感じました。
http://yakkei.jp/contents/links/tohoku-s.pdf