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自然科学研究機構 生理学研究所

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小児慢性疲労症候群患児の脳活動状態を明らかに -注意配分時に広範囲の前頭葉を過剰活性させてしまう-(2015/10/15)
理化学研究所
大阪市立大学
熊本大学
兵庫教育大学
生理学研究所

要旨
理化学研究所(理研)ライフサイエンス技術基盤研究センター健康・病態科学研究チームの渡辺恭良チームリーダー、水野敬上級研究員らと、大阪市立大学、熊本大学、兵庫教育大学、および生理学研究所との共同研究グループは、小児慢性疲労症候群(CCFS:Childhood Chronic Fatigue Syndrome) [1]の患児の脳では、注意配分(2つ以上のことを同時に遂行すること)を行う際に前頭葉が過剰に活性化し、非効率な脳活動状態となっていることを機能的磁気共鳴画像法(fMRI)[2]を使って明らかにしました。
CCFSは3ヶ月以上持続する疲労・倦怠感および睡眠・覚醒リズム障害を伴う病気であり、不登校の児童・生徒の多くが発症しています。CCFSによる記憶や注意力の低下は学校生活への適応を妨げている可能性があることから、子どもの疲労と脳機能の関係の解明が期待されています。共同研究グループはこれまで小・中学生を対象に、平仮名で書かれた物語を読ませ、母音の拾い上げと物語の内容理解の同時処理を要求する仮名拾いテスト[3]と呼ばれる注意配分課題(二重課題)を実施し、同時に行った疲労度調査との関連について検討を行ってきました。その結果、CCFS患児の成績は健常児より低く、また健常児でも疲労を強く感じている状態では成績が低くなることを明らかにしました。しかし、注意配分機能が低下している脳内で何がおきているのかは分かっていませんでした。
共同研究グループは、CCFS患児15名と健常児13名を対象に、二重課題および一重課題(母音拾い上げ、または内容理解のどちらか一方)遂行中の脳活動状態をfMRIで測定しました。その結果、CCFS患児と健常児、いずれも、二重課題遂行中は一重課題遂行中に比べて前頭葉の一部である脳の左側の下前頭回背側部と頭頂葉の一部である左側の上頭頂小葉が活性化していました。つまり、これら2つの脳部位が、二重課題の遂行に必要な脳領域であることが示されました。次に疲労と脳の活性化の関係を調べたところ、疲労している健常児は、二重課題遂行中に左下前頭回背側部をより強く活性化させていることが分かりました。一方、CCFS患児と健常児を比較すると、CCFS患児では一重課題と二重課題いずれの時も右中前頭回が特異的に活性化し、活性度は物語の内容理解度と正の相関関係にあることが分かりました。さらに二重課題においては右中前頭回に加え、前帯状回背側部と左中前頭回も特異的に活性化することも分かりました。このことから、CCFS患児は過剰に神経を活動させて脳の情報処理を行っているために、さらに疲労が増強していることが懸念されます。前頭葉の過活動の抑制がCCFSの症状の緩和につながる可能性など、CCFSの病態の解明や治療法の開発への貢献が期待できます。
本研究成果はオランダのオンライン科学雑誌『Neuroimage: Clinical』(9月10日付け)に掲載されました。
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20151015_1/

革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト 生きた霊長類の脳内で神経細胞の「スパイン」を観察 -学習や記憶を司る脳内神経ネットワークの解明へ-(2015/9/15)
要旨
理化学研究所脳科学総合研究センター高次脳機能分子解析チームの山森哲雄チームリーダー、定金理研究員、生理学研究所の伊佐正教授らの共同研究グループ※は、新世界ザル[1]であるマーモセットの大脳皮質において、2光子顕微鏡を用いてスパインと呼ばれる神経細胞の微細形態を生体内で可視化する手法を開発しました。
大脳皮質の神経細胞は、他の神経細胞群との情報伝達を行うために複雑な形態を持っています。その構成要素の一つである樹状突起には「スパイン」と呼ばれる微細な突起構造があります。神経細胞間のスパイン結合の度合いの変化は、個体の学習や記憶の基盤であると考えられています。したがって、生体内のスパインを直接観察する手法は、学習や記憶に伴って生じる神経細胞ネットワークの変化や、その基盤となる分子メカニズムを調べるためにあたって極めて重要です。しかし、スパインを生体内で可視化する手法は主にマウスでの研究に限られており、ヒトに近い霊長類での研究には適用されてきませんでした。本研究では、新世界ザルであるマーモセットにおいて、スパインを生体内で可視化する手法を開発することに取り組みました。
共同研究グループは、遺伝子発現を増幅させるTet-Offシステム[2]を用いることで強い発現を促し、Thy1Sプロモーター[3]が乗ったウイルスベクター[4]の濃度を適正なレベルまで調節したことで、マーモセットの脳内の神経細胞に緑色蛍光タンパク質(GFP)を「強く」「まばらに」発現させ、生体内のスパインを経時的に観察することに成功しました。これは霊長類の脳においては世界で初めての報告です。今後、霊長類の大脳皮質が関与する、学習過程における神経細胞ネットワークの変化や分子メカニズムを解明が期待できます。
本研究は、文部科学省『革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト』(平成27年度から日本医療研究開発機構へ移管)の一環として行われました。成果は、米国の科学雑誌『eNeuro』に掲載されるのに先立ち、オンライン版(8月27日付け:日本時間8月28日)に公開されました。
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150915_2/

見ていると意識できなくても"覚えている"脳 ―視覚野の障害でも無意識に脳の別の部位(中脳・上丘)が記憶の機能を代償―(2011/3/16)
脳梗塞などで脳の後頭葉にある視覚野が損傷を受けた時に、視野狭(きょう)窄(さく)や視野障害といった症状が現れます。しかし、そうした患者でも「見えていると意識できないのに(脳は)見えている」という盲視(ブラインドサイト)という現象が知られています(図1)。これまで自然科学研究機構・生理学研究所の伊佐 正 教授らの研究によって、この盲視現象は、脳の中の視覚野を経由しない中脳(上丘)を通る別の神経回路によって、脳の中に眼で見た情報が無意識にバイパスして送りこまれるからであることが分かってきました(図2)。今回、伊佐 正 教授と高浦 加奈 博士(元・総合研究大学院大学 大学院生、現・玉川大学脳科学研究所 グローバルCOE研究員)の研究グループは、この際、中脳(上丘)は、単なるバイパスになっているばかりでなく、眼で見たモノの場所を無意識に“記憶”しておくことに役立っていることを明らかにしました。脳の損傷などの特殊な場合には、本来は記憶の機能を持たないと考えられていた脳の部位も、記憶の機能を代償することができることを示した初めての研究成果です。米国神経科学学会誌ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス(2011年3月16日号)に掲載されます。

これまで視覚野が損傷した場合には意識的に見えているわけではないので、眼で見た情報を覚えておくことはできないと考えられていました。研究グループは今回、視覚野に障害のあるサルを用いて、モニターで“点”を見せたあと、一定の待ち時間(2.4秒以下)をおいて、その点の位置を眼で追って当てさせる実験を行いました。すると、視野障害がある損傷視野でも、正常視野と同様に、記憶した場所に正しく眼を向けることができることを明らかにしました(図3)。また、その際の中脳(上丘)の電気活動を記録したところ、待ち時間の間ずっと活動し続けている神経細胞があることが分かりました(図4)。普段は見られない神経の反応です。視覚野が損傷した場合には、この中脳(上丘)の神経の働きによって、点の位置を無意識に記憶することができると考えられます。
伊佐教授は「中脳・上丘は、爬虫類 や両生類などの大脳皮質を持たない動物の原始的な脳では中心的な視覚中枢です。つまり視覚野の損傷によって、進化的に古い部位である中脳・上丘の機能が“先祖がえり”したとも考えられます。また、これまでは、意識的に見ていないモノは記憶ができないと考えられていましたが、今回の実験結果から、無意識でも記憶はできる可能性が示唆されます」と話しています。

本研究は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」研究領域(研究総括:津本 忠治 理化学研究所 脳科学総合研究センター シニアチームリーダー)における研究課題「神経回路網における損傷後の機能代償機構」(研究代表者:伊佐 正)の一環として行われました。

今回の発見
視覚野が障害を受けた場合、眼で見た情報は中脳(上丘)が中継点となり無意識に脳に伝わっているが、その際、中脳(上丘)の神経は、単なるバイパスになっているだけでなく、眼で見た情報を記憶しておく役割も担うように変化することが分かりました。

※リリースに表やグラフが含まれています。詳細は下記URLを閲覧してください。
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2011/03/post-158.html

利尿を抑えるホルモン"バソプレシン"の脳の中の新たな作用を発見(2011/1/21)
―神経細胞の破裂を防ぎ、その大きさの維持に重要な役割、 脳浮腫などの治療法開発に期待―

内容
利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモン“バソプレシン”は、脳から放出され腎臓に働いて、利尿を抑えることが知られています。今回、自然科学研究機構・生理学研究所の岡田泰伸所長と総合研究大学院大学の佐藤かお理大学院生らの研究チームは、このバソプレシンが、脳の中でも腎臓と同じ仕組みで作用し、バソプレシン神経細胞自身の大きさの維持に働いていることを明らかにしました。脳梗塞・脳外傷や低ナトリウム血症などに伴い脳が膨らんでしまう脳浮腫の病態の解明とその治療法開発に役立つことが期待される成果です。米国科学誌サイエンスの姉妹誌であるサイエンス・シグナリング誌(1月25日号)に掲載されます。

研究チームは、バソプレシンを放出する脳の視床下部にあるバソプレシン神経細胞に注目。バソプレシンは本来、バソプレシン神経細胞から血液中に放出され腎臓に作用し抗利尿作用を生みだしています。通常、こうした血液中へのバソプレシンの分泌は、脳の中のバソプレシン神経細胞の周囲の水分が多くなって体液が薄まると(利尿をすすめるために)減ってしまうのですが、今回研究チームは、それとは逆に、体液が薄まることによって脳の中へはバソプレシンの分泌が増えることを突き止めました。神経細胞の大きさは、体液が薄くなるとどんどん膨らんでいってしまい、最後には破裂して死んでしまいます。このときバソプレシンがあると、バソプレシン神経細胞では、細胞が破裂しないように、神経細胞の大きさを維持するよう働くことがわかりました。また、この作用には、これまで腎臓にしかないと思われていた種類のバソプレシン・センサータンパク質(受容体)による仕組みがかかわっていることも明らかにしました。

今回の成果は、これまで単独で研究することが難しかった脳視床下部のバソプレシン神経細胞を、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)で光らせることに成功したことから可能となった研究成果です(本研究の共同研究者である産業医大の上田陽一教授が開発)。

岡田所長は「脳の中にも腎臓と同じ仕組みがあり、それによってバソプレシンが働いていたのは驚くべき発見だ。脳梗塞・脳外傷や低ナトリウム血症などに伴い脳の細胞が膨らんでしまう脳浮腫の病態解明と治療法開発に役立つと期待される」と話しています。

本研究は文部科学省科学研究費補助金の補助を受けて行われました。

※本研究は、生理学研究所の計画共同研究として産業医大と共同で行われた共同研究の成果です。

今回の発見
1)脳(視床下部)のバソプレシン神経細胞は、脳の中の体液が薄くなるとバソプレシンを脳の中に放出することを発見。
2)バソプレシン神経細胞には、腎臓と同じタイプのバソプレシンを感じる仕組み(腎臓型(即ちV2型)バソプレシン・センサータンパク質(受容体))がありました。
3)バソプレシンがこのセンサータンパク質に作用すると、脳の中の体液が薄くなって神経が膨らもうとしても、その大きさをすばやく完全に維持するように働いて、神経細胞の破裂を防ぐことが分かりました。
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2011/01/post-146.html

消化管の動きを調整する分子センサーの働きを解明   ―過敏性腸症候群などの原因解明と治療に期待―(2010/12/8)
自然科学研究機構 生理学研究所の富永真琴 教授および三原 弘 研究員の研究グループは、消化管が動くときの“伸び”を感じて働く伸展刺激センサーTRPV2(トリップブイツー)の働きを明らかにしました。現代人に多くみられる機能性胃腸症、過敏性腸症候群などの消化管機能性疾患の原因解明及び治療薬開発に結びつく成果です。米国神経科学学会誌「ザ・ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に発表されます(2010年12月8日電子版)。

消化管機能性疾患には、みぞおちの痛みや、消化不良感を起こす機能性胃腸症や、下痢・便秘・腹痛を繰り返す過敏性腸症候群などが含まれ、例えば、日本人の4人に1人は、3ヶ月に一度は消化不良感を感じる程、頻度の高い疾患です。しかし、血液検査、内視鏡検査などでは異常がなく、消化管の動きや知覚過敏が原因の一つと考えられていますが、臨床的にもその病態の詳細は不明のままです。そもそも消化管は食べ物が入ると伸びたり縮んだりして消化吸収を促します。その際には、消化管にある神経(抑制性神経細胞)が重要な役割を果たしており、筋肉(消化管平滑筋)を伸びさせる一酸化窒素といった化学物質を放出することで消化管の動きを制御しています。今回、研究チームは、常に動き続ける消化管でその“伸び”を感じて働くTRPV2(トリップブイツー)という分子に注目。消化管の筋肉が伸びる際に働く腸の中の神経細胞が、伸展刺激センサーであるTRPV2を持っていること、さらに、TRPV2は、消化管の“伸び”を感じて、その神経細胞内へのカルシウムの流入を調整し、筋肉を伸びさせる一酸化窒素の放出を促して、消化管が一層伸びるのを助けていることを明らかにしました。これまで消化管の神経の一部が伸展刺激センサーを持っていることは知られていましたが、今回の研究で、TRPV2がその候補であることを示しました。実際、TRPV2の働きを抑える薬を作用させると、消化管は伸びることができなくなり、運動調節異常を示しました。
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2010/12/post-141.html

膀胱に尿が貯まることを感じる分子メカニズムを解明 —頻尿や過活動膀胱の薬剤開発に期待—(2009/8/5)
概要
膀胱に尿が貯まると、それが膀胱を膨らませます。その刺激が神経に伝わり「おしっこをしたい!」とわかります。こうした「膀胱が膨らむことを知る」機能が障害されると、尿が貯まっていないのにおしっこにいきたくなってしまう頻尿や過活動膀胱、または逆に、尿が貯まっているのにそれを感じることができないなどの症状がみられるようになります。今回、自然科学研究機構・生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)の富永真琴教授・曽我部隆彰助教、および、山梨大学医学部泌尿器科の武田正之教授・荒木勇雄准教授・望月勉助教との共同実験で、膀胱に尿がたまったときに、それを感じる分子メカニズムを解明しました。排尿障害の薬剤開発にむずびつく成果として期待されます。Journal of Biological Chemistry(米国生化学雑誌)8月号(8月7日発行)に報告されます。

今回研究グループが注目したのは、膀胱の内側の膀胱上皮と呼ばれる細胞にあるTRPV4センサー(トリップ・ブイフォー)。このセンサーを持つ膀胱上皮細胞をやわらかいシリコンの上に培養し、シリコンを引っ張ったところ、TRPV4センサーが活性化して細胞自身が”伸びる”ことを感じることがわかりました。より詳しく調べたところ、膀胱上皮細胞が伸びたときにはこのTRPV4センサーを通って細胞内にカルシウムが入り込み、これによってATPと呼ばれる物質を細胞表面から放出させることがわかりました。このATPは、膀胱の膨らみを神経に伝える役割を持っています。

曽我部助教は「膀胱におしっこがたまるのを感じる際に働く分子メカニズムの一端がはじめて明らかになりました。このTRPV4 センサーをターゲットにした薬剤開発によって、頻尿や膀胱過活動の改善が期待できます。」と話しています。

本成果は文部科学省科学研究費補助金の支援を受けて行われました。

今回の発見
膀胱の内側の膀胱上皮細胞にTRPV4 センサー(トリップ・ブイフォー)があり、膀胱に尿が溜まって膨らみ伸びることを感じていました。
膀胱上皮細胞が伸びると、カルシウムが入りこみ、ATP と呼ばれる物質を出すことによって神経に「尿がたまった」ことが伝わっていました。

TRPV4 センサーが、膀胱の内側、膀胱上皮細胞にあることが分かりました。このセンサーによって、膀胱の中に尿がたまったことを知ることができることが分かりました。

正常な膀胱上皮細胞(野生型)をシリコンの上で培養し、その細胞を引っ張ってみると、TRPV4 センサーが活性化して、細胞の中にカルシウムが入りこみ、その伸展を感じていることがわかりました(右上の赤色)。TRPV4 をなくした細胞(TRPV4 欠損)では、その働きはありませんでした。

膀胱が膨らんでTRPV4 センサーが活性化したときには、膀胱上皮細胞(野生型細胞)から、ATP が放出されていることがわかりました(中央写真・白く光っている部分)。このATP が膀胱の感覚神経に刺激をあたえることで、膀胱に尿がたまったことを中枢神経に伝えていました。

この研究の社会的意義
1.排尿障害の薬剤開発へ期待
排尿障害を訴える患者さんは高齢化社会がすすむにつれて急速に増加しています。これまで膀胱に尿が溜まることを知る分子メカニズムについては知られていませんでした。今回の発見は、TRPV4 センサーがその役割を担っていることを示した初めての研究成果です。 今後、このTRPV4 センサーに対する薬剤開発で、頻尿や過活動膀胱の改善が期待できます。
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2009/08/post-24.html

脳の中のお医者さん「ミクログリア細胞」の働きを解明 - 特殊な顕微鏡で脳の修復過程のライブ撮影に初めて成功 -(2009/4/1)
 脳の中には“ミクログリア細胞”と呼ばれる免疫細胞があり、脳卒中や脳血管障害で傷ついた脳を治したり不要な物を取り除いたりする「脳の中のお医者さん」の役割を果たしていると考えられています。しかし、実際に、ヒトや動物の脳の中でどのように神経を“検査・検診”し、「お医者さん」として働いているのかこれまで知られていませんでした。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の鍋倉 淳一 教授の研究グループは、新たに改良した特殊な顕微鏡(二光子レーザー顕微鏡)を用いることで脳内のライブ撮影に始めて成功し、この脳の中のお医者さん「ミクログリア細胞」の働きを世界ではじめて明らかにしました。4月1日発行の米国神経科学学会誌(ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、電子版)に掲載され、注目論文として紹介されます。

 キーワードは、日頃の“検査・検診”と“触診”。ミクログリア細胞は、正常な脳でも、脳の神経細胞のつなぎ目である“シナプス”の検査・検診を怠らないことが初めて明らかになりました。1時間に1回、正確に5分間、まるでシナプスに聴診器をあてるように先端をふくらませて異常がないか“さわって検査”。神経の活動が増すとその回数も増加。しかし、脳梗塞などで障害をうけた場合には、じっくり1時間以上“シナプス全体を包み込むように触って“精密検診“を行う様に検査していることもわかりました。また、しばしばミクログリア細胞による“精密検診”のあと、あたかも修復が困難であると判断したかのようにシナプスが消えてなくなることも分かりました。このように、脳神経が障害をうけ回復していく過程や、発達段階で不必要な神経回路がなくなったりする際に、ミクログリア細胞のこうしたダイナミックな“検査・検診”の働きが重要であると予想されます。

 鍋倉淳一教授は「脳梗塞などで障害を受けた神経回路に対するミクログリア細胞の検査・検診の方法はダイナミックに変化することがわかりました。このメカニズムを利用し、障害をうけた脳の中のミクログリア細胞を、薬物や生物活性因子で刺激することができれば、脳の修復を早めたり、脳の機能回復のリハビリテーションに効果的だったりするかもしれません。」と話しています。

 本成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究領域「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」(研究総括:津本 忠治)における研究課題「発達期および障害回復期における神経回路の再編成機構」のもと得られたものです。

 なお、鍋倉教授の研究室では、今回の研究をさらに発展させるため、生理研・大学院生(総研大所属)を求めています。

脳の中のお医者さん「ミクログリア細胞」の働きを解明 -特殊な顕微鏡で脳の修復過程のライブ撮影に初めて成功-(2009/4/1)
 自然科学研究機構 生理学研究所の鍋倉 淳一 教授のグループは、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究成果として、脳の中のお医者さんである「ミクログリア細胞」の働きを、特殊な顕微鏡(二光子レーザー顕微鏡)で観察することに成功しました。脳卒中や脳虚血で傷ついた脳の修復過程におけるミクログリア細胞の働きを明らかとしました。新たな治療法開発にもつながっていく成果です。

<プレスリリース内容>
 脳の中には“ミクログリア細胞”と呼ばれる免疫細胞があり、脳卒中や脳血管障害で傷ついた脳を治したり不要な物を取り除いたりする「脳の中のお医者さん」の役割を果たしていると考えられています。しかし、実際に、ヒトや動物の脳の中でどのように神経を“検査・検診”し、「お医者さん」として働いているのかこれまで知られていませんでした。今回、自然科学研究機構 生理学研究所の鍋倉 淳一 教授の研究グループは、新たに改良した特殊な顕微鏡(二光子レーザー顕微鏡)を用いることで脳内のライブ撮影に始めて成功し、この脳の中のお医者さん「ミクログリア細胞」の働きを世界ではじめて明らかにしました。4月1日発行の米国神経科学学会誌(ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス、電子版)に掲載され、注目論文として紹介されます。

 キーワードは、日頃の“検査・検診”と“触診”。ミクログリア細胞は、正常な脳でも、脳の神経細胞のつなぎ目である“シナプス”の検査・検診を怠らないことが初めて明らかになりました。1時間に1回、正確に5分間、まるでシナプスに聴診器をあてるように先端をふくらませて異常がないか“さわって検査”。神経の活動が増すとその回数も増加。しかし、脳梗塞などで障害をうけた場合には、じっくり1時間以上“シナプス全体を包み込むように触って“精密検診“を行う様に検査していることもわかりました。また、しばしばミクログリア細胞による“精密検診”のあと、あたかも修復が困難であると判断したかのようにシナプスが消えてなくなることも分かりました。このように、脳神経が障害をうけ回復していく過程や、発達段階で不必要な神経回路がなくなったりする際に、ミクログリア細胞のこうしたダイナミックな“検査・検診”の働きが重要であると予想されます。

 鍋倉 淳一 教授は「脳梗塞などで障害を受けた神経回路に対するミクログリア細胞の検査・検診の方法はダイナミックに変化することがわかりました。このメカニズムを利用し、障害をうけた脳の中のミクログリア細胞を、薬物や生物活性因子で刺激することができれば、脳の修復を早めたり、脳の機能回復のリハビリテーションに効果的だったりするかもしれません。」と話しています。

 本成果は、JST 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究領域「脳の機能発達と学習メカニズムの解明」(研究総括:津本 忠治)における研究課題「発達期および障害回復期における神経回路の再編成機構」のもと得られたものです。

<今回の発見>
 改良に改良を重ねた世界最先端の二光子レーザー顕微鏡(図1)を用いて「脳の中のお医者さん」であるミクログリア細胞の生きたままの働きをライブ撮影することに成功しました。障害をうけたときに、脳がいかに修復していくか、細胞レベルで明らかにしました。ミクログリア細胞は、神経細胞のつなぎ目であるシナプスに、正常でも1時間に5分間は“タッチ”して触診していることがわかりました(図2、図3)。とくに脳が障害をうけた場合には、長くタッチして精密検査を行っていました(図2、図3)。

<この研究の社会的意義>
(1)脳が傷害をうけたときの修復過程と、その時のミクログリア細胞の働きを、はじめてライブ画像化することができました。
 障害をうけた神経細胞が、ミクログリア細胞によってどのように「治療」されるのか、「脳のお医者さん」のはらたきは、これまで謎とされてきました。今回、改良を重ねた二光子レーザー顕微鏡で、脳の中のミクログリア細胞の働きのライブ撮影にはじめて成功しました。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20090401/index.html

右脳と左脳の構造の違いを発見 -記憶をつかさどる海馬に違い-(2009/1/10)
2008年11月18日

 ヒトの右脳と左脳の機能的な違いについては、例えば言葉は左脳優位、空間認知は右脳優位、と知られています。しかし、神経のつながり方が右脳と左脳でどのように違うのか、を明らかにした研究はありませんでした。今回、JST基礎研究事業の一環として、自然科学研究機構 生理学研究所の篠原 良章 研究員(現・理化学研究所)は、重本 隆一 教授のもと、記憶形成をつかさどる部位(海馬注1))では神経のシナプス注2)(神経と神経のつなぎ目)の形や大きさが右脳と左脳で異なることを明らかにしました。この成果は、右脳と左脳の働きの違いのメカニズム解明につながると期待できます。本研究は、理化学研究所との共同研究による成果で、11月17日(米国東部時間)の週に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」(電子版)に掲載されます。
 研究チームはこれまで、シナプスにあるグルタミン酸受容体注3)(神経の間の信号の受け手のたんぱく質)の量の左右差について研究してきました。今回、新しく、左脳と右脳の海馬でシナプスの形や大きさが違うことを初めて見いだしました。また、シナプスの形や大きさによって、グルタミン酸受容体の量と種類にも違いがあることが分かりました。こうしたグルタミン酸受容体の量と種類は、記憶を形成する上で非常に重要な役割を担っていると考えられています。「右脳と左脳のシナプスは同じ」という説もありますが、そうではないことが分かりました。
 重本教授は、「記憶の原理として注目される“長期増強(LTP)注4)”という現象は、シナプスのグルタミン酸受容体の量と種類に影響されるので、左脳より右脳で起こりやすいのかもしれません。この研究を足がかりにすれば、右脳と左脳の機能が実際に違う理由を科学的に説明できるようになるのではないか」と話しています。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20081118/index.html