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東京医科歯科大学

第20回癌ゲノムサイエンス研究会(2011/1/26)
平成23年2月3日開催
http://www.tmd.ac.jp/mri/events/event/events2010_04.pdf

生きた神経細胞内で麻酔ガスの分子を検出することに成功 ~神経信号伝達に対する麻酔ガスの作用機構解明へ新たな手法~(2010/12/15)
JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京農工大学 光ナノ科学融合研究リングの三沢 和彦 教授らは、超短パルスレーザー光の位相を自由に制御・測定する技術を活用し、生きたイカの神経細胞内に注入した麻酔ガスの分子を検出することに成功しました。

麻酔ガスは医療現場で頻繁に使われていますが、どうして麻酔が効くのかはいまだに解明されていません。麻酔ガスが生体内で神経信号伝達を抑制する作用に関心が持たれていますが、神経組織内で麻酔ガス分子そのものの存在位置を特定する観測手法がないため、麻酔の作用機構を直接的に解明する研究を行うことは困難です。

本研究グループは、「位相制御コヒーレントラマン顕微分光法」と呼ばれる手法を独自に開発し、分子固有の構造に由来する光散乱信号(ラマンスペクトル注1))を顕微鏡下で高感度かつ簡便に測定することを実現しました。さらに、この方法を用いて、巨大軸索と呼ばれるイカの神経突起内に注入した麻酔薬(セボフルラン)のラマンスペクトルを細胞質から分離して測定し、細胞中での麻酔ガス分子の位置を特定することができました。

今後、神経信号伝達現象と麻酔ガス分子の局在を同時に計測することで、長年の謎である麻酔薬の分子薬理メカニズム解明につながるものと期待されます。

本研究は、東京医科歯科大学の寺田 純雄 教授らと共同で行われました。

本研究成果は、米国科学雑誌「The Journal of Chemical Physics」のオンライン速報版で近日中に公開されます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20101215-2/index.html

「ポリグルタミン病の認知障害の分子メカニズムを解明」(2010/10/20)
(認知症の治療開発に期待)

JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 難治疾患研究所の岡澤 均 教授らは、ポリグルタミン病注1)における認知障害の基礎となるメカニズムを明らかにしました。

ハンチントン病などポリグルタミン病の一部には認知障害が起きることが知られていますが、その詳細な分子メカニズムについて明らかになっていませんでした。岡澤教授らは先に、複数のポリグルタミン病原因たんぱく質と結合する新規分子PQBP1注2)を発見しました。PQBP1は、DNAからRNAへの転写やRNAスプライシング注3)などの細胞核機能に関わることが知られています。ハンチントン病や脊髄小脳変性症1型などの原因たんぱく質がPQBP1と結合してその正常機能を阻害することが、発症につながる病態の1つと考えられます。さらに、PQBP1遺伝子に異常があると精神発達遅滞の原因となることが報告されており、学習や記憶におけるPQBP1の役割に注目が集まっています。

本研究グループは今回、PQBP1の遺伝子発現が低下したPQBP1変異ショウジョウバエを作成し、学習および記憶におけるPQBP1の分子機能を検討しました。その結果、PQBP1変異体ではシナプス分子であるNMDA受容体の構成分子NR1の発現が低下し、このために学習ができなくなっていることを明らかにしました。さらに、転写量を増やすある種の薬剤が、学習障害の症状改善につながることも示しました。この成果は今後、ポリグルタミン病の認知障害の治療開発につながるものと期待されます。

本研究は、東京医科歯科大学の田村 拓也 助教と共同で行われ、本研究成果は、2010年10月20日(米国東部時間)に米国科学雑誌「The Journal of Neuroscience」のオンライン速報版で公開されます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20101020/

病原体の運び屋である吸血ダニに対する生体防御の仕組みを解明(2010/7/27)
-悪玉細胞と思われていた好塩基球がダニ防御に活躍-JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科の烏山 一 教授らは、吸血ダニを生体が排除する仕組みを調べ、白血球の一種である好塩基球注1)が吸血ダニに対する生体防御に非常に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

吸血ダニ(マダニ)は、人間や動物に取り付いて血を吸うだけではなく、細菌・ウイルス・原虫などの病原微生物を私たち動物の体に注入して重篤な感染症を引き起こすため、臨床的にも畜産の上でも重要な寄生虫です。一度ダニ感染を経験した動物は、2度目以降のダニ感染に対して抵抗力を示して、ダニが媒介する病原体による感染症にもかかりにくくなります。ダニに対する抵抗力がどのようにできるかを知ることが感染予防対策上重要ですが、これまでその仕組みに関してはよく分かっていませんでした。

本研究グループは今回、末梢血にわずか0.5%しか存在しない好塩基球が、ダニへの抵抗力を獲得するのに必須の役割を果たしていることを突きとめました。具体的には、好塩基球のみを欠損する実験動物を開発し、それを応用して「一度ダニに感染すると動物の体にダニに対する抗体が作られ、再度ダニに感染した場合には、ダニ抗体で武装した好塩基球が血中から皮膚のダニ吸血部位に集合して一斉にダニを攻撃する」という仕組みを明らかにしました。

これまで好塩基球はアレルギーに関与する悪玉細胞と考えられていましたが、本研究により、好塩基球が寄生虫排除に活躍する善玉細胞であることが判明しました。今後、好塩基球によるダニ排除の分子メカニズムをさらに研究することで、ダニ感染に対する効果的ワクチンの開発などダニが媒介する重篤感染症の制御に向けた新たな戦略が可能になると期待されます。

本研究は、東京慈恵会医科大学 大学院医学研究科 熱帯医学講座、理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター 免疫器官形成研究グループ、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野の協力を得て行われ、本研究成果は、2010年7月26日(米国東部時間)に米国科学雑誌「The Journal of Clinical Investigation」のオンライン速報版で公開されます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100727/index.html

「小脳変性に関与する分子メカニズムを解明」(2010/6/9)
(神経変性疾患の治療開発につながることが期待)

JST 課題解決型基礎研究の一環として、東京医科歯科大学 難治疾患研究所の岡澤 均 教授らは、神経細胞保護的グリア細胞である「バーグマングリア注1)」の増殖に関与する新規分子「MAXER(マクセル)」を発見し、MAXERの減少が、小脳の主要な出力ニューロンであるプルキンエ細胞を保護する役割のバーグマングリアを介して、神経変性病態に関わる分子メカニズムを明らかにしました。

近年、神経細胞の変性にグリア細胞が関わることが注目されていますが、その詳細な分子メカニズムについて明らかになっていませんでした。

本研究グループは今回、脊髄小脳失調症注2)1型(SCA1)の小脳細胞で発現変化を示す分子の網羅的検索から、小脳細胞においてのみ遺伝子発現が低下し、ハンチントン病などの別の変性疾患では発現が変化しない新規分子MAXERを発見しました。解析の結果、MAXERは進化的に保存されている小胞体注3)膜分子であること、またMAXERが減少すると細胞周期がG1期に停滞すること、さらにMAXERが細胞質・核の間を行き来するサイクリンD1の抑制因子であるCDK5RAP3の局在制御を行い、これによって細胞周期を制御することが明らかになりました。同時に、SCA1におけるMAXERの減少がバーグマングリアの減少を招き、結果として神経細胞に対してグルタミン酸毒性が増加して神経細胞変性に関わることを示しました。

この成果は今後、バーグマングリア再活性化を介した神経変性疾患の治療開発につながるものと期待されます。

本研究は、東京医科歯科大学 大学院生(当時)の塩飽 裕紀 氏と共同で行われ、米国・ベイラー医科大学のゾービィ教授の協力を得ました。

本研究成果は、2010年6月8日(英国時間)に欧州分子生物学機構(EMBL)の科学誌「EMBO JOURNAL」のオンライン速報版で公開されます。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20100608/

「ハンチントン病の主要病態がDNA損傷修復障害による神経変性であることを解明」(2010/5/6)
- DNA修復機能回復によるハンチントン病の新たな治療法の開発 -

概要東京医科歯科大学・難治疾患研究所・神経病理学分野の岡澤 均教授のグループは、ドイツ・マックスデルブルック分子医学センター、国立精神神経センターなどの研究グループとの共同研究で、ハンチントン病の主要な病態がDNA損傷修復障害にあること、ならびにDNA修復タンパクKu70の補充によって顕著な治療効果が得られることをつきとめました。この研究は文部科学省・科学研究費補助金、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(CREST)などの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌The Journal of Cell Biology(ジャーナル オブ セルバイオロジー)に、2010年5月4日付けオンライン版で発表されました。
.ポイント・神経変性の代表的疾患の一つであるハンチントン病は世界的にも患者が多い難病ですが、有効な治療法がありません。
・今回の研究で、ハンチントン病の主要な病態がKu70を介した神経細胞のDNA損傷修復障害であることを解明しました。
・ハンチントン病の原因タンパク質である変異型ハンチンチンは、Ku70との結合を介してDNA修復酵素複合体によるDNA2重鎖切断の修復を阻害します。
・Ku70の機能回復がハンチントン病モデルマウスにおいて、過去の報告を上回る治療効果をもたらすことが明らかに成りました。この成果は、将来的な新規治療法の開発につながることが期待されます。

.研究の背景ハンチントン病は代表的神経変性疾患の一つです。白人での発生率は5~10/100,000で欧米ではアルツハイマー病とならんで注目される疾患です。認知症、不随意運動、鬱等の精神神経症状を示し、寝たきりになったのちに早期に死亡します。ハンチントン病は原因解明に分子遺伝学が初めて用いられた神経変性疾患でもあります。この結果、1993年にハーバード大学James Gusella教授を中心とするコンソーシャムが原因遺伝子ハンチンチンを発見しました。しかし、ハンチンチンタンパク質の機能、あるいは変異による神経細胞障害の詳細など、分子病態は未解明な部分が多く、またハンチントン病の患者さんの寿命を延ばすことができる有効な治療法も確立されていません。
.研究の概要今回の研究は、ハンチントン病の病態にDNA修復タンパクKu70が関与し、Ku70の機能回復をはかることでハンチントン病モデルマウスの寿命を従来の報告を上回る最大限に延長することができた、というものです。具体的には、1)変異ハンチントン病タンパクはKu70に結合する、2)結合を介してKu70のDNA修復機能を阻害する、3)DNA損傷とそのシグナルがトランスジェニックマウス,ノックインマウスおよびヒト患者神経細胞で増加している。4)ダブルトランスジェニックマウスを作成してKu70をハンチントン病マウスモデルR6/2に過剰発現させると、DNA損傷が軽減し寿命が顕著に延長するという結果が得られました。
DNA損傷修復異常は、ポリグルタミン病において2007年に私たちが発表した新たな病態ですが(Qi et al., Nature Cell Biology 2007:JSTプレスリリースhttp://www.jst.go.jp/pr/announce/20070326/index.html)、他の遺伝性神経変性疾患でDNA修復因子自体の遺伝子異常が原因である場合があること、あるいは放射線被爆によって神経変性に類似した症状が起こることが知られており、神経変性の多様なパソシグナルの中でも本質的な病態と考えられます。
.
http://www.tmd.ac.jp/press-release/100428/index.html

「自己免疫疾患を引き起こすT細胞の運命を決定する遺伝子を同定」(2010/4/13)
- 免疫難病の新規治療法へ道 -

概要
東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科・分子情報伝達学分野の高柳広教授と岡本一男客員助教のグループは、東北大学・大学院生命科学研究科・細胞認識応答分野、大阪大学・免疫学フロンティア研究センター、米国国立環境健康科学研究所などの研究グループとの共同研究で、自己免疫疾患の原因となる自己免疫型T細胞「Th17細胞」の分化が、転写制御因子IκBζによって決定されることをつきとめました。この研究は文部科学省・科学研究費補助金、科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(ERATO型研究)、ならびに日本学術振興会・グローバルCOEプログラムなどの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Nature(ネイチャー)に、2010年4月11日付けオンライン版で発表されました。

.ポイント
・関節リウマチや多発性硬化症に代表される自己免疫疾患は、私たちの身体の構成成分を誤認し攻撃してしまう「Th17細胞」と呼ばれる特殊なT細胞が原因で引き起こされます。今回、IκBζと呼ばれる転写制御因子が、この自己免疫型T細胞「Th17細胞」の運命決定遺伝子であることをつきとめました。
・IκBζ遺伝子を破壊したマウスは、実験的に多発性硬化症を誘発させても、全く発症しないことが分かりました。したがってIκBζは、自己免疫疾患治療の有望な創薬ターゲットになり得ると考えられます。
・Th17細胞は免疫難病の治療標的として注目されており、現在最も国際競争が激しい研究分野の一つですが、この研究成果によって、日本における免疫疾患研究が一層進展することが期待されます。

.研究の背景
免疫系は本来、体外の病原菌やウイルス等の異物を認識し排除するシステムですが、時には私たちの身体を構成している成分(自己抗原)を異物と誤認し、その結果自己の組織の炎症・損傷が引き起こされるケースがあります。こうした現象により生ずる病気を、総じて「自己免疫疾患」と呼び、我が国でも罹患率の高い関節リウマチや、運動麻痺・視力障害を来す中枢性脱髄疾患である多発性硬化症がそれに分類されます。これらを含め、自己免疫疾患のほとんどが厚生労働省・難治性疾患克服事業による「特定疾患」に認定されており、その原因究明および治療法の開発が急務とされています。
 免疫応答の司令塔として働くのは、リンパ球の一種であるT細胞です。近年その中でも自己抗原を認識し自己免疫疾患を誘発する細胞として、「Th17細胞」と呼ばれる特殊なT細胞が同定されました。Th17細胞は、インターロイキン17(IL-17)と呼ばれるサイトカインをはじめ、様々な特異的サイトカインやタンパク質を産生することで、他の免疫担当細胞を動員させたり、組織の炎症を引き起こす能力を持っています。また我々の以前の研究成果より、関節リウマチにおいて、Th17細胞は破骨細胞を異常に活性化させて骨を破壊するT細胞であることが分かりました。こうしたことから、以後この自己免疫型T細胞「Th17細胞」は自己免疫疾患の治療標的として注目され、Th17細胞をめぐる研究が世界中で盛んに行われるようになりました。

研究の概要
未刺激のT細胞がTh17細胞へと分化するには、自己抗原を認識し、IL-6とTGF-βと呼ばれるサイトカインの刺激を受けることが必要です。しかしながら、こうした刺激によって、細胞内でどういう分子メカニズムが働いて、Th17細胞への運命が決定されているのか、不明な点が多く残されていました (図1参照)。そこで、運命決定に関わる分子メカニズムを明らかにすれば、Th17細胞を標的とした治療法の基盤が築けると考えました。
.
http://www.tmd.ac.jp/press-release/100407/index.html

「カルシウム増感剤による拡張型心筋症の発症予防」 - 心筋症・心不全の発症を遅らせる薬剤開発への新たな視点 -(2010/3/26)
概要
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・分子病態分野の有村卓朗(ありむら たくろう)助教、木村彰方(きむら あきのり)教授らのグループは、東京農工大学、九州大学、フランス筋疾患研究所等との国内・国際共同研究によって、フォスフォジエステラーゼ阻害作用のないカルシウム増感剤(SCH00013、全薬工業)を拡張型心筋症モデルマウスに投与し、心不全の発症遅延、心筋細胞脱落の減少、心筋線維化の抑制、生存予後の改善を認めました。原因不明の難治疾患である拡張型心筋症の治療や発症予防に用いられる薬剤開発に新たな道をひらくものです。この研究は文部科学省科学研究費補助金、医薬基盤研究所受託研究費、厚生労働省科学研究費、フランス筋疾患財団研究費、日本学術振興会二国間交流事業共同研究費などの研究助成金によって実施されたものです。研究成果は、国際学術誌Journal of the American College of Cardiology(アメリカ心臓病学会誌)の2010年4月6日号に発表されます。

ポイント
・拡張型心筋症のモデル動物であるラミンA/C遺伝子改変マウスにカルシウム増感剤を投与すると、心不全発症の遅延、生存期間の延長、心筋線維化抑制、およびリモデリング関連遺伝子発現是正が観察されました。
・心筋症・心不全の発症予防法として、カルシウム増感作用に着目した薬剤開発が期待されます。

研究の背景
拡張型心筋症は明らかな誘因がなく心室拡大、心筋細胞脱落、心筋線維化を来たし、突然死や難治性心不全の原因となる疾患です。拡張型心筋症の患者さんの一部に家族歴があることから、その病因の一部は遺伝子変異であると考えられていました。このため世界的に原因遺伝子の探索が行われ、これまでに心臓の筋肉を構成するタンパク、とくに細胞膜(例えば、ディストロフィンなど)、Z帯(例えば、テレトニンなど)、収縮タンパク(例えば、アクチンやトロポニンTなど)、I帯タンパク(例えば、FHL2やCARPなど)、さらには核膜タンパク(例えば、ラミンA/Cなど)の遺伝子異常が原因となることが判明しています。つまり、拡張型心筋症の原因遺伝子は20種以上発見されていますが、そのいずれに異常が生じても拡張型心筋症になります。これらの遺伝子異常が拡張型心筋症を引き起こすメカニズムについては不明な点が多くありますが、一部の遺伝子異常は心筋収縮のカルシウム感受性を低下させることが報告されています。また、心不全状態でも心筋収縮のカルシウム感受性が低下しているとの報告がありますが、カルシウム感受性低下と心不全との直接の因果関係は明らかではありません。

拡張型心筋症の治療法としてはβブロッカーやACE阻害剤などが用いられており、薬剤治療が効を奏しない場合には心臓移植が行われています。また、心不全治療法としてフォスフォジエステラーゼIII(PDEIII)阻害剤が使用されることがありますが、短期的には心筋収縮力を増強するものの、長期的な生存予後の改善は認められていません。さらに、カルシウム増感剤による心不全治療も試みられていますが、それらの薬剤にはPDEIII阻害作用があるため、その効果はPDEIII阻害によるものと考えられています。

遺伝子変異による拡張型心筋症の多くは成人期以降に発症しますが、発症を予防する方法は確立していないため、発症予防法の開発が待たれます。また、ラミンA/C遺伝子を改変したマウス(ラミン変異ノックインマウス)は生後5-6カ月程度から心不全を発症し、心筋細胞の脱落や心筋の線維化を来たすとともに、12-13カ月までに死亡しますので、拡張型心筋症の動物モデルとして研究に使われています。

研究成果の概要
難治疾患研究所分子病態分野では、東京農工大学獣医学部、九州大学医学部、フランス筋疾患研究所などとの国際共同研究によって、拡張型心筋症モデル動物であるラミンA/C遺伝子改変マウスを用いて、フォスフォジエステラーゼ阻害作用のないカルシウム増感剤(SCH00013、全薬工業株式会社提供)による拡張型心筋症の発症予防効果を検討しました。その結果、発症前(2カ月齢)からカルシウム増感剤を投与することで、心不全の発症遅延と生存予後の改善を認めました。また、カルシウム増感剤を投与したラミンA/C改変マウスでは、心筋の線維化ならびに心筋リモデリング関連遺伝子の発現異常が是正されました。一方、ラミンA/C改変マウスでは発症前にはカルシウム感受性が低下していないことを見出しました。すなわち、カルシウム感受性が低下していない時期からカルシウム増感剤を投与することで拡張型心筋症・心不全の発症を抑制できることが明らかとなりました。これらのことから、カルシウム増感作用に着目することで、心不全の発症予防法の開発が可能になると考えられます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/100326/index.html

「メダカを用いて腸管から肝臓が発生する仕組みを解明」 -器官形成および疾患モデルとして期待されるメダカ -(2009/11/30)
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・発生再生生物学分野の仁科教授の研究グループは、英国バス大学、東京大学、大阪大学、山口大学、慶応大学グループとの共同研究で、日本が世界に誇るメダカをモデル生物に用いて、これまで詳細が不明であった肝臓発生に「レチノイン酸シグナル」が関与することをつきとめました。この研究は文部科学省科学ならびに厚生労働者の研究費補助金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、米国肝臓病学会誌Hepatology(ヘパトロジー)に、2009年12月3日付オンライン版で発表されました。
 
また、山口大学との共同研究で、メダカに非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を誘導し、ヒトの病態を模倣するモデルを作製することにも成功しました。この研究成果は、病態モデル生物の専門誌であるDisease Models & Mechanismsに発表されます。

ポイント・大規模スクリーニングによって肝臓形成や機能に異常のあるメダカ変異体を多数単離し、このうち肝臓が小さくかつヒレが無い変異体の一つをhiohgi(緋扇)と命名しました
・体内で産生されるレチノイン酸がWnt等のシグナル分子を制御することで、ヒレ(ヒトでは腕に相当)と類似のしくみで、肝臓の元となる幹細胞の発生を決定することを発見しました
・マウスでは明らかにできなかった分子機構を明らかにできたことから、哺乳類動物に加えてメダカは再生医学の基盤を形成する器官形成の有用なモデル生物であることが期待されます

研究成果の概要と意義
肝臓は、胆汁の分泌, 吸収栄養分の濾過と解毒, 糖の貯蔵と血糖の調節など多様な働きをする必須の器官です。またその再生能力の高さから生体肝移植もおこなわれています。しかしながら、その形成(発生や再生)の分子機構は未だ不明な点が多い現状です。私たち研究グループは、母体外で発生が進行するため顕微鏡による観察が容易であるメダカをモデル生物として、肝臓の形成機構の解明をおこなっています。肝臓の発生が異常なメダカ変異体を単離し解析することで、「体内で産生されるレチノイン酸が肝臓の発生を決定すること」をつきとめました。この発見により、必須な働きをする多機能器官である肝臓の形成の分子機構の一端が解明されました。同時に、器官形成を知るために多用されているマウスでは困難な解析が、メダカでは可能であることを示す成果であると考えられます。また我々は、非アルコール性の脂肪性肝炎(NASH)を発症するメダカの作製に成功し、「ヒト疾患のモデル生物」としてのメダカの有用性も明らかにしました
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20091130/index.html

「癌をおさえる仕組みが臓器障害を引き起こす」 -臓器を守る治療の新しい標的-(2009/9/29)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・病態代謝解析学分野の畑 裕(はた ゆたか)教授と池田光伸(いけだ みつのぶ)助教の研究グループは、これまで発がんを抑制する善玉分子と考えられていたRASSF6という蛋白が、同じように発がんを抑制するHippoシグナル伝達系という仕組みと協働して機能するメカニズムを明らかにしました。発がんを抑制するこのメカニズムは、過度な細胞死により臓器障害的に働くと考えられます。したがって、RASSF6とRASSF6の関連分子は、細胞死を伴うさまざまな疾患の新しい治療標的になることが期待されます。この研究は文部科学省科学研究費補助金、公益信託荒木記念医学・生化学研究振興基金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Science Signaling(サイエンス・シグナリング)に、2009年9月29日付オンライン版で発表されました。

ポイント
・RASSF6という蛋白が炎症や薬物によって引き起こされる細胞死に重要な役割を果たす仕組みを明らかにしました
・発癌を抑える仕組みが細胞死を起こし、臓器障害を引き起こす可能性を明らかにしました
・今回明らかにされた臓器障害的に働く仕組みは、今後、肝炎、腎炎などの治療薬開発の新しい標的になることが期待されます

研究成果の概要と意義
ヒトではRASSFと総称される一群の蛋白の発現が低下すると、肺がんなどの癌がおこります。RASSFは発がんを抑制する善玉分子と考えられています。一方でハエからヒトまで種を超えて保存されているHippoシグナル伝達系という仕組みも、同じように発がんを抑制することが知られています。ところが、ハエではRASSFがHippoシグナル伝達系を阻害することが観察されています。発がんを抑制するRASSFが、同じように発がんを抑制するHippoシグナル伝達系を阻害するのは、つじつまがあいません。今回、私達は、ヒトのRASSFのひとつRASSF6に着目し、RASSF6が一方的にHippoシグナル伝達系を阻害するのではなく、お互いに牽制しあって安定状態を保っていることを明らかにしました。この発見をもとに、私達は、細胞外から刺激が入るとRASSF6とHippoシグナル伝達系は互いの束縛から解放されて、それぞれの機能を発揮し、細胞死を起こしたり、細胞増殖を抑えたりするというモデルを提示しました。また、RASSF6が、炎症や毒物による細胞死に関わることも明らかにしました。したがって、細胞死によって臓器障害がおこる病気においては、むしろRASSF6の働きを抑えることが治療になると考えられます。また、RASSF6以外の複数のRASSFも同じような特性をもつと推定され、RASSFが多くの臓器に発現していることから、今後、さまざまの病気の治療標的になることが期待されます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090928_1/index.html

「細胞を浄化する新たなメカニズムを発見」 -癌、神経疾患などの新規治療法開発に期待-(2009/9/28)
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・病態細胞生物学分野の清水教授の研究グループは、これまでオートファジーが実行される際、Atg5, Atg7, LC3等の分子が必要不可欠であると考えられてきましたが、これらの分子に依存しない新規のオートファジー機構を発見しました。この新規オートファジー機構は癌や神経変性疾患など多くの疾患に関与していると考えられ、将来的に新規治療法開発への応用が期待できます。この研究は医薬基盤研究所の「保健医療分野における基礎研究推進事業」などの支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Nature(ネイチャー)の2009年10月1日付オンライン版にて発表されました。

ポイント
・オートファジーが実行される為には、従来Atg5, Atg7, LC3等の分子が必要不可欠であると考えられてきましたが、これらの分子に依存しない新規のオートファジー機構を発見しました
・赤血球が成熟する時にはミトコンドリアが除去されますが、この機構に新規オートファジーが関与していることを明らかにしました
・我々が発見した新規オートファジー機構は、癌や神経変性疾患など多くの疾患に関与している可能性があります

研究成果の概要と意義
オートファジーは細胞内小器官などの自己構成成分を分解するシステムで、細胞の健全性の維持に貢献しています。また、その機能異常は神経疾患や発癌などさまざまな疾患に関与することが報告されています。従来オートファジーの実行メカニズムは、酵母菌から哺乳動物まで保存されている複数の分子群Atg5, Atg7, LC3等によって完全に支配されていると考えられてきました。しかしながら、私たちの研究グループは、Atg5, Atg7, LC3などの分子に依存しない新たなオートファジー機構が存在することを発見致しました。この新規オートファジーは、ゴルジ装置やエンドソームを起源としており、Rab9等の分子によって調節されています。また、細胞にDNA傷害などのストレスが加わった時に強く誘導される他、赤血球が成熟する際に起るミトコンドリア除去にも関与しています。新規オートファジーは細胞ストレスによって強く誘導されることから、発癌、神経疾患、炎症疾患など幅広い疾患に関与していることが考えられ、これらの疾患の新規治療法開発への応用が期待できます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090928_2/index.html

「肥大型心筋症の新たな原因遺伝子を発見」 -心臓肥大の新たなメカニズムの解明で治療法の開発に道-(2009/7/10)
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・分子病態分野の木村彰方(きむら あきのり)教授、有村卓朗(ありむら たくろう)助教らのグループは、高知大学医学部、国立西札幌病院、久留米大学医療センター、メイヨークリニック、ベイラー医科大学等との国内・国際共同研究によって、心臓肥大、突然死、心不全を起こす肥大型心筋症の新たな原因遺伝子を発見しました。心臓の細胞において細胞質内と核内を行き来するCARPタンパクの局在異常が肥大型心筋症を引き起こすメカニズムを明らかにしたことから、原因不明の難治疾患である肥大型心筋症の診断や治療法の開発に新たな道をひらくものです。この研究は文部科学省科学研究費補助金や医薬基盤研究所受託研究費などの複数の研究助成金によって実施されたものです。研究成果は、アメリカ心臓病学会誌(Journal of American College Cardiology)2009年7月21日号(Vol.54 No.3)に発表されました。

ポイント
・ANKRD1はCARP(cardiac ankyrin repeat protein)タンパクの遺伝子です。CARPは心筋細胞内で細胞骨格であるタイチンと結合していますが、心不全などの心筋細胞にストレスがかかった状態では核に移動して、いくつかの遺伝子の発現を制御します
・原因不明の難治疾患である肥大型心筋症の患者さんにANKRD1変異を発見し、変異があるとCARPタンパクは細胞骨格であるタイチンタンパクN2-A領域との結合性が強くなり、また変異CARPタンパクは心臓細胞内の分布が異常になることを証明しました
・別の肥大型心筋症患者さんにタイチンN2-A変異を発見し、変異があるとCARPタンパクとの結合性が強くなることを証明しました
・CARP遺伝子検査による肥大型心筋症の診断法、CARPタンパク結合性の変化に着目した治療法の開発が可能になると考えられます

研究の背景
肥大型心筋症は高血圧などの明らかな誘因がなく心室筋の肥大を呈し、突然死、胸痛、心不全の原因となる疾患です。肥大型心筋症の患者さんの多くに家族歴があることから、その病因は遺伝子変異であると考えられていました。このため世界的に原因遺伝子の探索がおこなわれ、これまでに心臓の筋肉収縮を司る構造タンパク、すなわちサルコメアを構成する要素(例えば、ミオシン重鎖やトロポニンIなど)の遺伝子異常、もしくはZ帯を構成する要素(例えば、テレトニンなど)の遺伝子異常が原因となることが判明しています。つまり、肥大型心筋症の原因遺伝子は約20種発見されており、そのいずれに異常が生じても肥大型心筋症になります。これらの原因遺伝子のうち、難治疾患研究所分子病態分野による世界に先駆けた発見は、1997年のトロポニンI変異(Nature Genetics)、1999年のタイチン変異(BBRC)、2004年のテレトニン変異(JACC)、2007年のオブスキュリン変異(BBRC)などがありますが、これらのサルコメア構成要素やZ帯構成要素の異常が引き起こす機能変化の検討から、肥大型心筋症の病因変異が心筋収縮のカルシウム感受性の亢進もしくはストレッチ反応の亢進をもたらすことが明らかになってきました。しかしながら、このような種々の原因遺伝子を調べても異常が発見されるのは約半数に過ぎず、これら以外にも原因遺伝子があると考えられていました。

研究成果の概要
難治疾患研究所分子病態分野では、高知大学医学部、国立札幌西病院、久留米大学医療センターなどの国内臨床施設および米国Mayo Clinic循環器科、Bayler医科大学小児循環器科などとの国際共同研究によって、これまでに知られている原因遺伝子に変異が見つからない患者さんの集団を対象として心筋細胞での遺伝子発現の制御に関わるCARP遺伝子の変異を探索しました。その結果、3名の患者さんに3種の変異を見出しました。CARPはタイチンのN2-A領域に結合することが知られているため、N2-A領域についても変異を検索したところ、2名の患者さんに2種の変異を発見しました。これらの変異はいずれもが、CARPとタイチンN2-Aとの結合性を増強するものでした。CARPは胎児期の未熟な心筋細胞や、心不全時などの伸展された心筋細胞で発現が亢進する転写関連因子ですので、心筋細胞の成熟分化や心不全状態の心筋細胞の機能に重要な役割を果たしていると考えられます。そこで、正常または変異CARPをラットの心筋細胞に遺伝子導入してその分布を検討したところ、成熟心筋細胞では正常CARPは核から細胞質、ことにZ帯やI帯に移動するのに対して、変異CARPは核膜周辺に貯留していました。これらのことから、細胞質と核を行き来するタンパク(シャトリングタンパク)であるCARPの細胞内局在異常が肥大型心筋症の原因となると結論しました。肥大型心筋症はこれまでサルコメアやZ帯などの心筋細胞の構造タンパク異常によるとされていましたが、シャトリングタンパク異常でも同様の病態が生じることを示した発見であり、CARPタンパクの結合性に着目した新たな治療法の開発にも繋がると考えられます。

関連事項
これとは別に、Baylor大学小児循環器科他との国際共同研究によって、拡張型心筋症患者さんの解析から、肥大型心筋症患者に見出されたものとはまったく異なるCARP変異を3種類発見しました。拡張型心筋症は原因不明の心拡大と重症心不全を来たし、その20-35%は遺伝性であると考えられますが、病因変異が見出される患者さんは家族性拡張型心筋症に限っても約20%に過ぎませんので、肥大型心筋症よりもさらに原因遺伝子が多彩であると言えます。発見した拡張型心筋症に関連するCARP変異は、肥大型心筋症の場合とは異なり、いずれもが細胞内での分布異常は示しませんでしたが、タリンなどの細胞質タンパクとの結合性が減弱していました。また、変異CARPは心筋細胞を伸展した際の遺伝子発現パターンを変化させました。これらのことから、CARP変異は、それぞれ異なった機能異常によって、肥大型心筋症と拡張型心筋症というまったく異なる2つの原因不明の心筋疾患の病因となることが明らかとなりました。(JACC Vol 54 No 3に同時発表、筆頭著者Mousumi Moulik, 責任著者Jeffrey A. Towbin)
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090710/index.html

「幹細胞がストレスに抵抗し品質を保つ仕組みを解明」 -アンチエイジングや再生医療に光-(2009/6/5)
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・幹細胞医学分野の西村栄美教授らの研究グループは、金沢大学、株式会社コーセー、北海道大学などとの共同研究で、身近な老化現象である白髪がおこる仕組みを解明しました。黒髪のもとになる色素幹細胞がゲノム損傷ストレスにより分化成熟し自己複製しないため幹細胞が枯渇し白髪になることが明らかになりました。さらに、幹細胞において幹細胞性チェックポイントなるものが存在し、その品質によって幹細胞を分化させるかどうか幹細胞運命を制御することで幹細胞プールの質と量を制御していることが明らかになりました。再生医療における安全性向上やアンチエイジングに向けての新たな展開が期待されます。この研究は金沢大学在任中からの文部科学省科学研究費補助金・若手研究(S)や、その他複数の助成金の支援のもとでおこなわれたもので、その研究成果は、国際科学誌Cell(セル)に、2009年6月12日付で掲載発表されました。

ポイント
・加齢やストレスで白髪になる仕組みについては謎であったが、色素幹細胞が分化することで幹細胞が枯渇すると白髪をひきおこすことが判明
・色素幹細胞が一定以上のゲノム損傷により、“分化”という運命を辿ることが判明
・アンチエイジングや再生医療への応用が期待されます

研究成果の概要と意義
多細胞生物が老化する仕組みについては古くから諸説あるものの未だ謎に包まれています。白髪も典型的な老化現象の一つで、加齢やストレスの関与は知られてきましたが、その仕組みについては不明でした。西村教授らは、2002年に黒髪のもとになる色素幹細胞をはじめて発見し、2005年には色素幹細胞が枯渇すると白髪になることを見いだしていましたが、その仕組みについては明らかではありませんでした。また、加齢に伴って組織幹細胞にゲノム損傷が蓄積し、アポトーシスや細胞老化といった運命を辿るのではないかと推測されていましたが、実際に生体内でそのようなことが起こっているのかどうか不明でした。
 
今回、マウスにおいてゲノム損傷後の色素幹細胞の運命解析をおこなった結果、色素幹細胞に一定レベル以上のゲノム損傷応答が誘発されると、幹細胞の分化が誘導され自己複製しなくなることをつきとめました。驚くべきことに、白髪誘発量程度のゲノム損傷では、従来考えられてきたようなアポトーシスや細胞老化といった運命ではなく、むしろ色素幹細胞が未分化性を失って成熟した色素細胞へと分化することが分かりました。その結果として幹細胞が枯渇すると、成熟した色素細胞が供給できなくなるため白髪を発症することが明らかになりました。さらに、ヒトの早老症原因遺伝子であるATM遺伝子を欠損するマウスの解析から、ATMが、 「幹細胞性維持の監視機構」(ステムネス・チェックポイント)として機能して幹細胞の質を維持することで、幹細胞が分化して枯渇してしまわないように働くことが明らかになりました。この研究をさらに発展させることにより、再生医療における安全性向上やアンチエイジングに向けての新たな展開が期待できます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090605/index.html

「インターフェロンが造血幹細胞の運命決定を制御」 -副作用の少ない骨髄移植法・慢性白血病治療法の開発へ福音-(2009/5/29)
東京医科歯科大学・難治疾患研究所・先端分子医学研究部門・生体防御学分野の樗木俊聡(おおてき としあき)教授、秋田大学大学院医学系研究科・生体防御学の佐藤卓(さとう たく)助教の研究グループは、秋田大学ならびに東京医科歯科大学でおこなった研究成果として、I型インターフェロンが、すべての血液細胞の源である造血幹細胞の運命をコントロールすることを発見しました。この研究成果は、国際科学誌Nature Medicineの2009年5月31日付オンライン版で発表されました。

ポイント
・生体にウィルス抵抗性を付与することが知られていたI型インターフェロンの一過性の刺激が造血幹細胞の増殖を、持続的な刺激が造血幹細胞の減少を誘導することを新たに発見
・放射線を用いない骨髄移植法開発、がん幹細胞を標的とした慢性骨髄性白血病の治療法の開発へ直結する重要な知見

研究の背景
造血幹細胞は、赤血球や白血球を含むすべての血液細胞を作り出す源の細胞であり、骨髄ニッチと呼ばれる場所で、ゆるやかに自己増殖を繰り返しながら存在しています。一方、慢性骨髄性白血病では、造血幹細胞と性質のよく似た「がん幹細胞」が白血病細胞を作り出す源の細胞であることが知られています。従って、人為的に造血幹細胞の運命をコントロールすることが可能になれば、慢性骨髄性白血病治療さらには副作用の少ない骨髄移植法の開発に結びつく可能性が高く、非常に重要な研究課題でした。

研究成果の概要
I型インターフェロンは、ウィルス感染の際、宿主に抵抗性を付与する重要なサイトカインとして知られています。本研究では、これまで知られていない重要なI型インターフェロンの機能を明らかにしました。即ち、一過性のI型インターフェロンの刺激が造血幹細胞の増殖を、持続的なI型インターフェロンの刺激が造血幹細胞の減少を誘導することです。I型インターフェロンシグナルを抑制する転写因子IRF2を欠損するマウスでは、持続的なI型インターフェロンシグナルに起因する造血幹細胞の減少が観察されました。現在の抗がん剤治療では、増殖能力の高い白血病細胞のみが標的となります。したがって、本研究成果は、I型インターフェロンを投与することで、一過性にがん幹細胞の増殖を盛んにし、抗がん剤の効果を高める新治療法の有用性を示すものです。また、このようなI型インターフェロン(と抗がん剤の併用効果)の効果は、放射線照射を軽減・回避可能な骨髄移植法の開発に直結するものです。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090529/index.html

「脳内塩素イオンの新しい役割を発見」(2009/1/23)
東京医科歯科大学 脳統合機能研究センター 准教授 高森茂雄(たかもり・しげお)と同研究グループのステファン・シェンクは、脳内の興奮性神経伝達において塩素イオンが果たす重要な役割を発見しました。これまで、塩素イオンが脳内の抑制性神経伝達に果たす役割は良く知られていましたが、興奮性神経伝達における関与はまったくわかっていませんでした。
 
今回、研究グループは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の輸送をおこなうVGLUTが働くためには、細胞外の塩素イオン濃度が高く保たれている必要があることを見出しました。グルタミン酸神経伝達の破綻は、アルツハイマー病や統合失調症等、さまざまな脳神経疾患を引き起こすと言われています。本研究成果は、脳内塩素イオンを操作することにより、脳内グルタミン酸神経伝達の効率を制御できることを示唆しており、神経疾患治療戦略に向けての新たな展開が期待されます。
 
本研究成果は、Nature Neuroscience誌の2009年1月25日付(英国)オンライン版で発表されました。

ポイント
・脳内興奮性神経伝達において塩素イオンが果たす重要な役割を発見
・神経伝達物質であるグルタミン酸のシナプス小胞への取込の仕組みを解明
・神経疾患治療戦略に向けての新たな展開

研究の背景
物を見たり、音を聞いたり、物事を記憶するといった我々の脳の活動を支えているのは、神経細胞接合部で行われるシナプス伝達です。脳内のシナプス伝達は、主としてグルタミン酸によっておこなわれる興奮性神経伝達と、おもにGABA(ガンマアミノ酪酸)によっておこなわれる抑制性神経伝達に大別されます。従来から、抑制性神経伝達においては、脳内塩素イオンが重要な役割を果たすことが知られていましたが、塩素イオンが興奮性神経伝達に果たす役割はまったくわかっていませんでした。

研究成果の概要と意義
神経細胞が神経伝達物質を放出するためには、伝達物質がシナプス小胞と呼ばれる分泌小胞内に取込まれて濃縮される必要があります。哺乳類の脳内で最も多くの神経細胞が用いている興奮性神経伝達物質はグルタミン酸ですが、研究グループは、これまでにVGLUT(小胞型グルタミン酸トランスポーター)というタンパク質がその取込をおこなっていることを突き止めました。
 
今回の研究では、VGLUTを人工的に脂質膜に埋め込む実験系を開発し、小胞内に高濃度の塩素イオンがないとVGLUTによるグルタミン酸輸送がうまくいかないことを見出しました。神経細胞で新しく形成されたシナプス小胞の内側は、塩素イオンを多く含んだ細胞外液で満たされています。
 
したがって、今回の研究成果は、細胞外の塩素イオンが、正常な興奮性神経伝達を支えるために非常に重要であることを示しています。痴呆症、アルツハイマー病、ハンチントン症、統合失調症など多くの脳疾患の発症には、グルタミン酸神経伝達の破綻が原因の一つとして挙げられています。
 
今回の発見をもとに、脳内の塩素イオン濃度を制御する方法が新たに開発されれば、グルタミン酸神経伝達の効率を操作することが可能になり、将来的には脳神経疾患の治療にも役立つことが期待できます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20090123/index.html

“脳低温療法の選択的急速冷却システム” 独立行政法人科学技術振興機構 平成20年度(第一回)の 「独創的シーズ展開事業 委託開発」に採択のお知らせ(2008/10/20)
独立行政法人科学技術振興機構(JST)による平成20 年度(第一回)の「独創的シーズ展開事業 委託開発」の課題として、大阪医科大学名誉教授太田富雄博士および東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科 若松秀俊教授と当社による応募提案「血管内灌流による脳低温療法用選択的急速冷却システム」が厳選のもと採択されることが決まりましたので、お知らせいたします。
JST は、国民経済のうえでの重要な科学技術に関する大学等で生まれた研究および開発の成果(新技術)であって、とくに企業化が困難な開発課題を選定し、企業に委託して企業化開発を促進することを目的として、「独創的シーズ展開事業 委託開発」制度を設けております。平成20年度(第一回)の公募では、全国から14件の応募があり、当社の課題を含め6テーマが採択されました。
今回採択されました新技術は、冷却晶質溶液を直接脳血管内に灌流させ、制御理論に基づいて脳組織のみを迅速・選択的に冷却し、虚血や外傷から脳を保護する選択的脳冷却システムに関するものであります。従来の技術では、全身の体表面から脳を冷却するため、正確な脳温制御が難しく、医療従事者に多大な労力を強いられてきました。この新技術では、晶質溶液を脳血管より直接灌流させるので、治療効果時間枠内に選択的に脳冷却が可能であります。しかも、目標温度の設定だけで正確な脳温の自動制御ができ、脳以外の冷却を抑制できるため、有害事象が発生しにくいという優れた特徴があります。
またこの技術は、新発想の脳冷却システムであり、その新システムに最適化された灌流液が求められますので、当社は、永年にわたり培ってきました輸液製剤研究の成果を基に、この療法に使用されます新規灌流液の開発を担当いたします。
今後は、太田富雄博士の総括と若松秀俊教授のご指導のもと、5 年間の研究計画スケジュールに従って灌流装置および灌流液の有効性を各種実証試験を用いて検証し、臨床応用を目指します。
本研究により、脳低温療法を広く一般に普及させることが可能となり、脳卒中や脳外傷における死亡率の低下と回復後の後遺症の軽減が期待されます。なお、本領域は社会の高齢化と救急医療の急増に対処する広い市場性を持ち、灌流液市場の拡大に繋がることから、製品化への期待は大きいものがあります。
http://www.fuso-pharm.co.jp/news_topics/pdf/2008_10_20.pdf

「抗体を作る酵素が、骨を吸収する破骨細胞を作る酵素であることを発見」 -新しい骨粗鬆症治療薬の可能性-(2008/3/3)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学の高柳広教授らのグループは、免疫系で重要な役割を果たしているタンパク質をリン酸化する酵素(BtkとTec)が骨吸収を担う破骨細胞を作るために必須であることを見出し、骨代謝制御の鍵となる酵素を同定しました。BtkとTecの遺伝子を欠損したマウスでは、破骨細胞が無くなり大理石骨病になることがわかりました。BtkとTecの酵素阻害薬を投与すると、骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに非常に有効であることが明らかになり、これらの酵素を標的として、新しい骨粗鬆症や関節リウマチの治療薬の開発ができることを示しました。この研究成果は米科学誌Cellの3月7日号に掲載されました。

ポイント
・免疫細胞で重要な酵素BtkとTecが、破骨細胞を作るために必須の酵素であることを発見し、破骨細胞が形成されるメカニズムを解明しました
・高齢化社会に伴い問題となっているロコモーティブシンドローム(運動器症候群)のうち、骨粗鬆症や関節リウマチなど破骨細胞が原因となっている疾患に対して、BtkとTecの働きを抑える酵素阻害薬が有効であることを示し、新たな治療法に道を開きました
・BtkとTecはB細胞による抗体作りに必須な酵素であり、ヒトではBtkの遺伝子変異によって先天性の免疫不全症になります。本研究は、免疫不全と骨代謝の関係を明らかにし、骨と免疫の相互作用を研究する骨免疫学の新たな側面を開拓しました

研究の背景
高齢化社会が進展する中、生活の質に直結する骨や関節の機能を侵す骨粗鬆症・関節リウマチ・変形性関節症など、ロコモーティブシンドローム(運動器症候群)と呼ばれる疾患群の克服は医療上の大きな課題です。また、関節リウマチなどの疾患は免疫系の破綻による骨破壊疾患であるため、免疫と骨代謝の密接な関係を明らかにする骨免疫学の観点から骨代謝の制御メカニズムを解明し、人為的にコントロールする方法を開発する必要があります。
 
骨が破壊される多くの疾患では、骨を壊す実行役である破骨細胞の異常な活性化が見られます。このため、破骨細胞を作り出す酵素を突き止めて、その酵素の働きを抑えることは骨が破壊される運動器症候群の克服に有効であると考えられます。本研究では免疫細胞で重要なタンパク質リン酸化酵素BtkとTecが骨吸収を担う破骨細胞作りに必要であることを発見し、骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに酵素阻害薬を用いて治療実験をおこないました。

研究成果の概要
破骨細胞は骨髄に存在する前駆細胞が、破骨細胞を作り出す刺激を伝達するタンパクであるRANKLの指令を受けることで作られます。破骨細胞が作られるためにはRANKLの他に、免疫受容体からの指令も必要であることがわかっていましたが、RANKLとこの免疫受容体からの細胞内の信号が、どのように協調して破骨細胞を作り出すのかわかっていませんでした。本研究では、破骨細胞の中に発現している20000以上の遺伝子を調べた結果、タンパク質リン酸化酵素BtkおよびTecに注目しました。そして、BtkとTecの遺伝子の両方を欠損したマウスを作って、骨の組織を解析しました。その結果、BtkとTecがないと、破骨細胞が作られず、マウスが大理石骨病になることを発見しました。さらに、これらの酵素による破骨細胞作りの信号伝達メカニズムについて解析し、BtkとTecが、RANKLと免疫受容体の二つの刺激を統合して破骨細胞を作り出す鍵となる酵素として働いていることを明らかにしました。また、これらの酵素の働きを抑える阻害薬を骨粗鬆症や関節リウマチの動物モデルに投与したところ顕著に骨破壊が抑えられ、極めて有効な治療効果が見られました。この結果は、破骨細胞が原因となる骨破壊疾患の治療にBtkとTecの酵素阻害薬が効果的であることを示しており、ロコモーティブシンドロームの新たな治療法に道を開くこととなりました。
 
BtkとTecは免疫系細胞における重要性が示されています。特にBtkはヒトのブルトン型X連鎖無γグロブリン血症の原因遺伝子であり、Btk遺伝子に変異が入るとB細胞で抗体が作られず、免疫不全になります。今回の成果は、免疫と骨の密接な関係を明らかにする骨免疫学に免疫不全と骨代謝の関係という新たな知見をもたらし、骨免疫学の発展にも大きく貢献しました。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20080303/index.html

「関節リウマチ制圧に向けた新しい抗リウマチ薬の発見」 -従来薬と異なる作用メカニズムをもつ新種類の抗リウマチ薬-(2008/1/28)
東京医科歯科大学大学院膠原病・リウマチ内科学分野の上阪等准教授と宮坂信之教授の研究グループは、理化学研究所、精神神経センター、万有製薬との共同研究で、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬が新たな種類の抗リウマチ薬となりうることを明らかにしました。この研究は文部科学省科学研究費補助金の支援でおこなわれたもので、その研究成果は、米科学誌Journal of Immunology(免疫学雑誌)に、2008年2月1日付で発表されました。

ポイント
・関節リウマチ患者さんの関節破壊のメカニズムを研究した結果、サイクリン依存性キナーゼ阻害薬という、細胞増殖を抑制する薬剤が新しい治療薬として有望であることを発見し、その関節炎に対する効果を関節リウマチの動物モデルで証明しました
・イクリン依存性キナーゼ阻害薬は、抗癌剤としてのヒト臨床試験において既により大量の投与がなされて安全性が証明されています。この研究では、より少量の投与が劇的な効果をもつことを示しており、将来、関節リウマチ治療に用いられることが期待されます
・従来の抗リウマチ薬とはまったく違った作用メカニズムを持ち、免疫力を抑えることなく、関節リウマチ制圧に向けた新しい治療ができることが期待されます。

研究成果の概要と意義
関節リウマチはサイトカインによる炎症とその結果おこる滑膜細胞の増殖のふたつが関節破壊の原因と知られています。現在、抗サイトカイン療法が臨床応用されて大きな治療効果を上げていますが、完全に関節リウマチを制圧するには至っていません。本研究で強力な関節炎治療効果の認められたサイクリン依存性キナーゼ阻害薬は、おもに細胞増殖により関節滑膜が腫れることを防ぎながら、かつサイトカイン産生も抑えることで効果を発揮します。動物実験では、抗サイトカイン療法に認められるような免疫力の抑制も認められず、しかも関節炎によって起こる関節破壊を強力に抑制しました。したがって、この種の薬剤が将来、関節リウマチ制圧のために臨床応用されることが期待されます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20080128-1/index.html

「タンパク分解酵素カテプシンKが免疫を活性化することを発見」 -骨と免疫の両方を治療する新しい関節リウマチ治療薬の開発-(2008/1/28)
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学の高柳広教授らのグループは、破骨細胞に特異的と考えられてきたタンパク質分解酵素カテプシンKが、免疫を活性化する作用をもつことを発見しました。さらに新しいカテプシンK阻害薬を開発し、関節リウマチ・多発性硬化症などの自己免疫疾患に有効であることを動物実験で証明しました。この研究成果は米科学誌Science の2月1日号に掲載されました。

ポイント
・骨を分解する酵素と考えられてきたカテプシン K が、免疫担当細胞の樹状細胞で働き、免疫の活性化に重要な役割を担うことを発見しました
・新たな経口投与可能なカテプシンK特異的阻害薬を開発しました。高齢化社会で問題となるロコモーティブシンドローム=運動器症候群のうち、破骨細胞が関与する骨量減少性疾患である骨粗鬆症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、癌骨転移、歯周病、変形性関節症、Paget病などに効果を発揮すると予想されます。カテプシンKが免疫活性化作用をもつことが明らかになったため、このカテプシンK阻害剤は、自己免疫疾患にも効果があると考えられます
・特に、関節リウマチは免疫系が異常に活性化した結果、骨が破壊される疾患ですが、従来の薬剤は、免疫に作用する薬剤が主流でした。カテプシン K 阻害薬は、骨と免疫への両方の治療効果を持つため、非常に強い治療効果が期待できます

研究の背景
高齢化社会が進行する中、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性関節症などのロコモーティブシンドローム(運動器症候群)の治療法の開発が急務となっています。骨代謝は、骨を作る骨芽細胞と壊す破骨細胞のバランスで調節されており、多くの骨の量が減る疾患では破骨細胞の活性が過剰になることが原因になっています。このため、破骨細胞を抑制する薬剤は運動器症候群の治療に有効であると考えられています。
 
関節リウマチでは、免疫異常が破骨細胞による骨吸収を活性化して骨破壊を引き起こします。カテプシンKは破骨細胞が骨を分解する時の酵素の中で最も重要な酵素であるため、本研究では新しい経口投与が可能なカテプシンK阻害剤を開発し、関節リウマチモデルを用いて治療実験をおこないました。

研究成果の概要
化合物スクリーニングにより、日本ケミファ社と共同で、新たなカテプシンK阻害薬NC-2300を開発しました。この阻害剤は経口投与が可能な低分子化合物で、「ロコモーティブシンドローム」=運動器症候群のうち、破骨細胞が関与する骨量減少性疾患である骨粗鬆症、関節リウマチ、多発性骨髄腫、癌骨転移、歯周病、変形性関節症、Paget病などに効果をもつと考えられます。
 
治療実験において、新しいカテプシンK阻害剤NC-2300は予想通り、関節リウマチモデルの骨破壊に治療効果を示しましたが、予想外の結果として、関節リウマチモデルにおける炎症を抑制することが明らかとなりました。そして、カテプシンKが樹状細胞を活性化するToll様受容体(TLR)9 シグナルの信号伝達に関与することが明らかになりました。このため、さまざまな自己免疫疾患に対して、カテプシンK 阻害薬が効果を持つ可能性があります。ここでは、関節リウマチ以外に、多発性硬化症の動物モデルの治療に有効であることを動物実験で示しました。
 
特に、カテプシンK阻害剤は関節リウマチで侵される免疫と骨を同時に治療できる新しい治療薬となることが期待されます。本研究は、骨と免疫の相互作用や共通メカニズムを研究する境界領域である「骨免疫学」の成果といえます。
http://www.tmd.ac.jp/press-release/20080128-2/index.html