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4.航空工業界

成長を予感させる日本の航空機業界
日本の技術で作った国産機 YS-11
   戦後まもなくして、コンベアやバイカウント、フレンドシップなどの旅客機が引退の時期を迎えたころ、国産の中型輸送機の開発が通産省から示された。
 これを受けて新三菱重工(三菱重工業)、川崎航空機(川崎重工業)、富士重工業、新明和工業、日本飛行機、昭和飛行機などで構成する日本航空機製造株式会社が組織された。この日本航空機製造の下でYS-11が生産されたのである。国内のエアライン各社や運輸省航空局、航空自衛隊、海上自衛隊などで採用されたほか、海外でも7ヵ国15社で使用した。しかし海外への販売が思うように伸びず、YS-11の生産は182機で終了した。
YS-11 写真撮影・編集部

防衛関連で中型機を国産開発
 中型機の国産では、航空自衛隊のC-46退役にともなう国産輸送機C-1の設計・生産があり、最終組み立てを川崎重工業が行った。初飛行は1970年11月だ。
 さらに新明和工業が開発した大型飛行艇US-1(PS-1)は荒波(3m以内)でも着水が可能という性能を持つ航空機だった。
 日本は武器輸出ができないのでそれぞれ生産機数は少量にとどまる。また機体は作っても心臓部であるエンジンの国産化までは行われなかった。
C-1 写真撮影・編集部

ボーイング社やエアバス社の生産分担に加わる
 80年代以降になると、ボーイング社はボーイング767やボーイング777、V2500エンジンなどの国際共同開発を推進するようになった。日本の航空機メーカーもこれに参画し、機体・エンジンやシステムに関する技術力が欧米完成機メーカーから高く評価された。しかし当初の分担率は15%にすぎず実態はボーイング社の下請け状態だった。
 その後のボーイング社の生産分担では日本各社が主要部分を担当するようになった。エアバス社のA380では主翼の桁部分など多くを担当、航空機製造で着実に実績を残している。その結果、現在では生産額1兆円を超える産業に成長している。

製造技術が高く評価された日本の航空業界
 ボーイングの下請けや航空自衛隊のF-2開発などを通じて、日本の技術が高く評価されたことは間違いない。特に、複合材料に関する素材技術(樹脂、繊維技術など)および構造設計・製造技術(複雑形状の成型、高効率製造技術など)は世界でもトップレベルにある。
 小型機(F-2)では、主翼と胴体を複合材料で一体構造にするなど、その技術力は高い。
 航空機エンジン分野では、米英のメーカー3社がシェア70%をもっていること、販売マーケットを海外に持たないなど課題はある。
 しかし、後述のP−Xではターボファンエンジンの開発・生産を進めており、エンジンの国産化に弾みがつきそうだ。今後の飛行試験や実際の運用の中で性能に対する評価も下されるだろう。IHIは、J-47やJ-79、J-100など多くのジェットエンジンをライセンス生産した経験があり、その経験が国産ターボファンエンジンの開発につながっている。

世界に挑戦する航空産業各社
 日本の航空産業界は、これまで以上に成長しようとしている。ボーイング787では約35%を生産分担する。主翼、胴体前部、中央翼などが主な担当箇所。787は炭素繊維を多数使用するなど、日本の技術が不可欠になっているのが特徴である。
 2006年度の航空機生産額(日本)は1兆1388億円になった。ボーイングなど機体構成部品の生産が好調であることを裏付けている。ボーイング787の量産がさらに進めば、航空機産業はさらに成長していくだろう。

オールジャパンで取り組んだC-XとP-X
 航空自衛隊のC−1輸送機の老巧化、海上自衛隊が運用するP-3C対潜哨戒機の後継機の開発は川崎重工業株式会社が主契約者となって開発が進められた。2つのプロジェクトを同時に進め、その開発に携わった技術者はピーク時には約1500人に達したという。日本の航空産業に携わる技術者の多くが協力したことになる。
 C-XとP-Xは、主翼など機体の共通化を図ったため約250億円程度の開発費が節約できたともいわれる。
 また課題だったエンジンは、技研本部とIHIが共同開発したターボファンエンジンが採用された。P-Xに装備したターボファンエンジンXF7-10が、国産エンジンの評価を高めるキッカケになりそうだ。これで、日本の航空産業は機体とエンジンを開発できる技術を持ったことになる。
 当初は様々な不具合も生じるだろうが、製造技術発展のために両機が大きな貢献するだろう。
P−Xの初号機 写真提供 川崎重工業株式会社

リージョナルジェット市場に参入する会社もある
 日本の航空機業界は、各社が協力して成長してきた。そんな環境から脱して、1社独自で完成機を開発する動きある。
 小型ジェット旅客機「MRJ」の開発を進めている会社だ。2007年のパリ国際航空ショーに胴体前部の実物大模型を展示して営業活動を開始した。
 MRJは、炭素繊維など複合材を本格的に採用したり、低燃費、低騒音を目指す。東レと共同で炭素繊維の加工新技術を開発し、低コスト化を図っている。
 MRJ90(座席数86〜96席)と、MRJ70(同70〜80席)の2種類の計画がある。この規模をリージョナルジェットといい、現在は、ボンバルディア社とエンブラエル社がシェアを持っている。この分野は価格競争が激化すると考えられる。

C-Xの民間機転用を計画する川崎重工業
 川崎重工業は、C-1の後継機「C-X」を民間機に転用して航空貨物業界に売り込み、2012年の事業化を目指している。輸送機からの転用のため搭載力で優位になると考えられる。
 発注者である防衛省も航空機産業発展のため民間機転用を支援するようだ。実際に運用する航空機の転用だけに航空機市場で闘っていくことは十分にできるだろう。C-Xは、航空分野の販路形成に貢献するかもしれない。

航空業界に鮮烈なデビュー、ホンダ
 業界を驚かせたのは、ホンダのビジネスジェット分野参入だろう。ホンダ(ホンダエアクラフトカンパニー)は、初号機の初飛行を2003年12月に行っており、2010年の量産1号機引渡しをめざしている。
 2007年10月にホンダジェットの受注を開始したが受注状況は順調という。機体価格(365万ドル)はライバルに比較して高いが、燃費の良さ、低騒音、低排ガス、スピードに優れている点が評価を受けている。
ホンダジェット 写真提供 本田技研工業株式会社

本田技研工業株式会社
 自動車メーカー・ホンダの創業者・本田宗一郎氏には、航空機製造にかける強い思いがあったと聞く。その思いがホンダジェット誕生につながったのだろう。
 同社の凄さは、これまでの航空機産業の流れとは無関係に、いきなりハイレベルで完成度の極めて高い機体を、独自の技術力で作り出してしまったことだ。
 エンジンまでも自社開発した。自社開発のターボファンエンジン・HF118を搭載するが、エンジンまで自社生産する航空機メーカーは珍しい。このエンジンは、低騒音、排ガス規制に対応するだけでなく、低燃費も達成しているという。
 整備点検で不利とされた主翼上面にエンジンを配置するダイナミックさ、ユニークさもある。これが低騒音など高性能につながっているのかもしれない。成功を予感させる航空機の1つだ。
 理系進路の発行後に、同社から「この形状がキャビンスペースを3割り広くする効果ももたらしている」という訂正が寄せられた。
 エンジンを主翼の上面に配置することで、出力系取付部の構造物(補強)、燃料系、エンジン制御系のシステムを胴体内から出すことができ、キャビンスペースを広くできたのだろう。しかも胴体には複合材料が使われており、軽量化がはかられている。
 複合材料の取り扱いはレーシングカーのコクピット製作で、アルミ合金の工作技術はスポーツカーNSXで培ったとすれば、ホンダは航空機製造の技術をすでに蓄積していたとみることができる。

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